言語聴覚士という職業に、「将来性はあるのか?」と不安を感じている方も多いでしょう。需要や今後求められることを知ることで、言語聴覚士の必要性が理解できます。
そこで今回は、言語聴覚士の職業としての将来性や今後の需要、そしてどのような能力が求められていくのかをわかりやすく解説します。
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言語聴覚士に将来性はある?
言語聴覚士とは、言葉の話し方や聴こえ方、食べることなどの障害を持つ方に対して、専門的な支援を行う国家資格の専門職です。具体的には、発話や言語理解、聴覚、嚥下(えんげ)機能に課題を抱える患者に対し、訓練や指導、支援を行います。
こうした支援は、赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢層の方々に必要とされており、医療や福祉、教育など多様な分野で活躍しています。
将来性についても、高齢化社会の進行や発達障害に対する理解の広がりにより、今後ますます需要が高まることが予想されています。次の章では、具体的に将来性があるとされる理由について詳しくご紹介します。
言語聴覚士に将来性があるとされる理由
言語聴覚士は将来性があるといわれています。ここでは、どのような理由で将来性があるといわれているかを解説します。
子供から高齢者まで幅広いニーズがある
言語聴覚士の支援対象は非常に幅広く、乳幼児期の発達支援から、学齢期の言語発達支援、成人期の脳血管障害や聴覚障害への対応など多岐にわたります。
たとえば、発音や言葉の遅れを気にする保護者からの相談、小学校でのことばの教室、病気や事故で失語症になった方へのリハビリ、高齢者の食事の嚥下訓練など、対象年齢や状況を問わず必要とされるのが言語聴覚士の強みです。
あらゆるライフステージで支援が必要とされるため、長期的に見ても安定した需要が見込まれています。
高齢化の加速により将来的にも需要がある
日本は世界でも有数の高齢化社会であり、今後も高齢者人口は増え続けると予想されています。2025年には75歳以上の後期高齢者が、全国で約2200万人を超える見込みであり、2040年には65歳以上の人口が総人口の約35%に達するともいわれています。
高齢化の進行は、社会全体に大きな影響を与えるとともに、医療・介護分野における支援体制の強化が強く求められる時代を迎えています。高齢者の増加に伴い、脳卒中や認知症による言語障がいの患者数も増加すると予想されており、言語聴覚士の存在は今後ますます重要といえます。
発語や理解、食事の摂取といった日常生活に直結する機能の維持や回復を支える役割を担うため、言語聴覚士の需要は医療機関や福祉施設、在宅医療現場で高まっています。高齢者に対する安全な食事指導といった側面でも、言語聴覚士は欠かせない専門職といえます。
在宅医療や介護施設での嚥下訓練の需要が急増しているため、医師や看護師、栄養士、介護士などと連携しながら、地域医療を支える中核的な存在としての役割が拡大しています。
1997年に始まった国家資格で、まだまだ人手不足
言語聴覚士は1997年に国家資格となった比較的新しい職種です。そのため、ほかのリハビリ職種と比べて資格制度の歴史が浅く、まだ発展途上の段階にあります。その分、現場では人手不足が深刻な課題となっており、即戦力となる人材の確保が急務となっています。
2023年時点での有資格者数は約40,000人程度にとどまっており、理学療法士(約19万人)や作業療法士(約11万人)と比べると圧倒的に少数です。特に小児分野や聴覚障がい支援、摂食嚥下障がいへの対応を専門とする人材は全国的にも不足しており、地域によってはまったく配置されていない施設もあるほどです。
言語聴覚士の実習先や教育機関の数も他職種に比べて限られているため、育成環境の整備が今後の課題です。しかし、資格取得者が少ないという現状は、裏を返せば就職先が豊富で将来性のある職業だといえるでしょう。
今後さらに進む高齢化や医療・福祉分野の多様化に伴い、言語聴覚士の専門性が求められる現場は増え続けていくと考えられます。将来を見据えて専門性を高めると、リーダー的な立場や専門分野での活躍の機会も広がるでしょう。
様々な医療や福祉で必要とされている
言語聴覚士は病院やリハビリ施設だけでなく、特別支援学校、訪問看護ステーション、老人保健施設、児童発達支援センター、企業内のリハビリ部門、福祉相談センターなどの行政機関でも活躍の場があります。
近年では、在宅医療の拡充に伴い、在宅支援チームの一員として訪問リハビリを行うケースも増えています。言語聴覚士は、地域包括ケアの一環としての重要性も高まっています。また、教育機関や研究機関においては、発話・聴覚・言語に関する研究や指導者の育成に従事する言語聴覚士もおり、職域の広がりがみられます。
企業においては、話し方の研修や音声認識技術の開発に関わるケースもあり、従来の医療福祉の枠を超えた活躍も可能です。このように多様な職場で求められることにより、景気や地域に左右されにくく、ライフステージに応じた柔軟な働き方が実現しやすいという利点があります。
都市部・地方を問わずニーズがあるため、希望する地域での就職もしやすく、職場選びにおいてたくさんの選択肢がある点は、言語聴覚士の大きな魅力の一つです。
言語聴覚士に今後求められることは?
言語聴覚士には将来性があるといわれていますが、今後求められることもいくつかあります。言語聴覚士として、今後求められることについて2つ解説します。
病院だけでなく様々な専門分野への対応
近年では、医療の現場にとどまらず、教育分野や福祉施設、在宅医療など多様なフィールドでの活動が求められています。発達障害児への支援や高齢者の終末期ケアへの関与など、従来の枠を超えた対応力が求められます。
具体的には、就労支援施設や地域包括支援センター、保育園・幼稚園などでも、言語発達やコミュニケーション支援が必要とされる場面が増加しています。また、多文化共生が進むなかで、外国人への言語支援や地域住民とのコミュニケーション支援といった新たな役割も期待されています。
日本語を母語としない子どもたちへの支援や外国人高齢者の生活支援など、多国籍な背景を持つ人々への配慮も、今後ますます重要になるでしょう。
最新技術や、新しい知識を業務に活かす
今後、言語聴覚士には、最新技術の活用が求められます。リモート診療やAI音声解析、バーチャルリアリティ(VR)を活用したリハビリ支援など、最新のデジタル技術の導入により、言語聴覚士の仕事のスタイルはこれまで以上に多様化しています。これらの技術を正しく理解し、機器の操作スキルだけでなく、患者の状況に合わせて柔軟に対応する判断力も必要です。
たとえば、遠隔地に住む患者へのオンライン指導やAIによる音声解析を用いた発声トレーニングの向上など、テクノロジーを活用する機会が広がっています。従来では支援が難しかった地域にもアプローチできるようになったため、言語聴覚士の活躍はさらに拡大しています。
今後は、ITリテラシーや情報セキュリティに関する知識も求められるようになると考えられ、従来の専門知識に加えた幅広い学習がキャリアアップにつながる時代となるでしょう。
言語聴覚士の仕事に就く魅力
言語聴覚士として働くことにはいくつか魅力があります。ここでは、大きく分けて3つの魅力を解説します。
患者さんの変化や成長を身近で感じることができる
言語聴覚士の仕事は、患者一人ひとりとじっくり向き合い、長期的な視点で支援を行うことが特徴です。発音がクリアになった瞬間や聞き取りがスムーズになる変化、自分の名前をしっかりと言えるようになった感動の場面など、患者の前進していく過程を間近で見守ることができます。
言語や嚥下機能に課題を抱える方の支援は、生活の質を大きく左右するため、社会復帰や日常生活への適応が可能になった時の喜びは、とてもやりがいに感じます。子どもの成長を見守る保護者のような気持ちで寄り添いながら、支援の積み重ねが成果となって現れることに大きなやりがいを感じる方が多くいます。
チーム医療の一環として活躍できる
医師や看護師、理学療法士、作業療法士、栄養士など多職種と連携し、チームで患者を支援する「チーム医療」においても、言語聴覚士は重要な役割を担います。言語聴覚士は、主に発話や嚥下、聴覚といった専門分野での支援を行い、チーム全体での治療方針の調整や患者の生活機能の回復に貢献します。
たとえば、脳卒中後のリハビリにおいては、言語機能の改善だけでなく、訓練を通じて、安全に食事をとる環境づくりに関わります。また、失語症などがある場合には、家族や介助者へのコミュニケーション支援の指導も担当することが多く、患者の日常生活の質を高めるために支援を行います。
各分野の専門職と協力しながら、一人の患者の生活の質の向上を目指せる点は、専門職としての大きな魅力です。チームのなかで自分の専門性を発揮しながら、他職種と連携して総合的なケアを実現できるという点において、やりがいや達成感も大きく感じられるでしょう。
多様なスキルを習得することができる
言語聴覚士は、言語や聴覚、嚥下、発音、音声、心理、教育といった多岐にわたる知識とスキルを活かして仕事ができるため、自身の成長を実感しながら働けるのも魅力です。これらの知識やスキルは単独で活かされるだけでなく、患者の状態に応じて複合的に組み合わせる必要があります。言語聴覚士として働くことで、問題解決能力や観察力、判断力も自然と磨かれるでしょう。
また、企業により継続的な研修が用意されているため、最新の研究動向への関心を通じて、専門性を高める環境が整っています。したがって、単に仕事をこなすだけでなく、自らのキャリア形成においてもやりがいがあります。音声学や心理学、教育学といった周辺分野と連携しながら支援の質を高めていける点も、ほかの医療職とは異なる特長です。
言語聴覚士として経験を積んでいくと、対象とする年齢層や症例の幅が広いため、どのステージでも対応できる応用力が身につきます。乳児から高齢者まで、発達障がいや脳血管障害、難聴、嚥下障害など、多様な対象に関われることから、臨床力を幅広く養うことができる点も魅力です。
言語聴覚士の進路や将来を考えるヒント
言語聴覚士を目指すには、いくつかおすすめの選択肢があります。どのような選択肢があるかを確認しましょう。
専門学校のオープンキャンパスに参加する
進路に迷っている方は、まずは学校のオープンキャンパスに参加することをおすすめします。オープンキャンパスに参加すると、授業体験や在学生・先生との交流を通して、職業理解を深められます。学校選びにおいては、実習先や就職実績、国家試験合格率などの情報も併せて確認するとよいでしょう。
言語聴覚士の実際の声を聞いてみる
現場で働いている言語聴覚士のインタビュー記事やYouTube、SNSなどを通じて、リアルな声に触れてみることも進路選択のヒントになります。実際に働く様子や仕事のやりがい、大変な点などを知ることで、自分に向いているかどうかの判断材料になります。学校を選ぶ前に、ご自身が言語聴覚士としての適性があるかを確認するのもよいでしょう。
他の職種と比較してみる
言語聴覚士と似た分野で活躍する理学療法士(PT)、作業療法士(OT)などの職種と比較してみるのも一つの方法です。それぞれの資格に求められるスキルや対象となる分野、働く環境などを比べて、自分にあう職業をみつけるのが望ましいです。ご自身の適性に合う職業をみつけられると、長期的に働けることも可能です。
他の職種との違いは、こちらのページをご覧ください:理学療法士・作業療法士との違い
まとめ
言語聴覚士は、発話や聴覚、嚥下に問題を抱える人を支える重要な専門職です。対象年齢の広さや今後の高齢化社会に伴う需要の増加、医療や福祉、教育など多彩な活躍の場があることから、非常に将来性のある職業といえるでしょう。
言語聴覚士に興味がある方は、ぜひ埼玉福祉保育医療製菓調理専門学校の資料請求やオープンキャンパスに参加してみてください。