言語聴覚士になるには?3つのルートと必要なスキルを紹介

言語聴覚士は、ことばや聞こえに障がいのある人を支える医療専門職です。子どもから高齢者まで幅広い世代を対象に活躍できる職業として、注目が高まっています。
そこで今回は、言語聴覚士になるための方法や学ぶ内容、必要なスキルなどを解説します。言語聴覚士を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

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目次

言語聴覚士になるには

言語聴覚士になるには、「言語聴覚士国家試験」に合格し、国家資格を取得する必要があります。国家試験は年に一度実施される試験であり、合格するためには専門的な知識と実践力が求められます。
国家試験を受けるためには、受験資格を得ることが前提条件です。受験資格を得るには、厚生労働省が定める一定の教育課程を修了する必要があります。したがって、どのようなルートで学び、どのような教育機関で知識と技術を身につけるかが重要です。
学ぶルートにより必要な期間や学費が異なるため、自分に合った進路を選ばなければいけません。受験資格を得るためのルートは主に3つあり、それぞれの特徴や適した人のタイプも異なります。
次の項目では、言語聴覚士を目指すための3つのルートについて、具体的に詳しく解説します。

受験資格を取得する3つのルート

言語聴覚士の国家試験を受験するためには、定められたカリキュラムを修了する必要があります。受験資格を得る方法には、いくつかのルートが存在しており、学歴や現在の状況に応じて最適な進路を選ぶことが可能です。ここでは、3つのルートを解説します。

【ルート1】高校卒業後に3~4年制の養成校に進学

高校を卒業した後、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定する3~4年制の言語聴覚士養成校に入学するルートです。養成校では、国家試験に必要なカリキュラムが整備されており、卒業と同時に国家試験の受験資格を得られます。
早期から専門知識を学べるため、効率的にスキルアップできます。このルートは、言語聴覚士を目指す高校生にもっとも一般的な進路です。養成校では、基礎医学や言語発達、音声・聴覚に関する専門科目を学び、解剖学や生理学といった医療の基礎から、言語や発声の仕組みに関する高度な知識まで、段階的に理解を深めます。
また、心理学やリハビリテーション医学など、幅広い分野にわたる知識が求められるため、講義の内容も多岐にわたります。加えて、学内での演習やグループワークなどを通じて、問題解決能力や実践力を養うカリキュラムが組まれており、学びの質が高いのが特長です。
学校にもよりますが、基本的には1年次からコミュニケーションスキルや倫理観に関する授業も行われ、医療職としての自覚と責任感を育成します。専門職としての姿勢やチーム医療における役割などを学ぶ機会が多く、人間性を養うことも重視しています。
2~3年次には学外での臨床実習も開始され、病院やリハビリ施設、特別支援学校など、さまざまな現場での実践経験があります。理論だけでなく実践的な対応力や現場で必要とされる柔軟な判断力、応用力が養われます。
養成校を卒業すると、国家試験の受験準備を万全に整えられ、卒業後はすぐに国家試験の受験が可能です。ストレートで資格取得を目指せることから、計画的に学習を進めたい人にとっては、魅力的な選択肢といえるでしょう。
早期にスタートラインに立てるという点でも、このルートのメリットは大きいです。

【ルート2】4年生大学を卒業後に2年制の養成校に進学

すでに4年制大学を卒業している場合、2年制の言語聴覚士養成校に進学することで国家試験の受験資格を得られます。このルートは、大学で一般教養や基礎的な専門知識を身につけたあと、言語聴覚士として必要な実践的知識を効率よく学べるのが特徴です。
多くの2年制養成校では、短期間で国家試験合格を目指せるように、集中的かつ実務に直結したカリキュラムが組まれています。医学的基礎知識やリハビリテーション技術、音声や言語、聴覚に関する知識に加えて、演習や臨床実習なども豊富に用意されており、短期間で実践力を身につけます。

【その他のルート】一定基準の科目を習得している場合

医療系の大学や専門学校などで、厚生労働省が定める一定基準の専門科目を履修していれば、国家試験の受験資格を得られるケースがあります。一般的な養成課程を経ることが難しい人にとって有効な選択肢です。
このルートは、言語・聴覚・リハビリテーションに関連する教育を受けてきた方や医療現場での実務経験がある方に適しています。履修科目の内容や時間数、実習経験などの条件を確認したうえで申請する必要があります。

言語聴覚士の養成校で学ぶこと

養成校では、国家試験の合格に必要な知識や技術を段階的に学ぶとともに、実際の現場で活躍するための実践的なスキルも身につけます。学習は大きく分けて「座学」と「実習・演習」の2本柱で構成されています。ここでは、養成学校で学ぶことについて具体的に解説します。

座学

解剖学や生理学、言語学、心理学などの基礎的な医療知識に加え、発声や摂食・嚥下などの障害に関する理論を学びます。これらの知識は、言語聴覚士として正しい支援を行うために必要です。
さらに、神経科学や発達心理学、教育心理学なども学ぶことで、対象者の状態を多角的に理解できる力が養われます。言語発達や音声障害、聴覚障がいの診断の方法、検査機器の扱い方や読み取り方なども取り扱います。講義だけでなく、実際の事例を通して考察する機会が多く、座学ながらも実践的な学びが展開されます。
障がいの種類ごとに異なるアプローチや支援計画についても習得し、将来の現場対応に役立つスキルを確実に身につけられます。

実習・演習

学内での模擬実習に加え、病院や福祉施設などの現場で臨床実習が行われます。模擬実習では、対象者との録音・録画を活用した発音チェック、聴覚評価のトレーニングなどが行われ、基礎的な技術の習得に取り組みます。
その後、実際の臨床現場に出て、言語訓練の指導、評価の補助、支援記録の作成など、日常的な業務に関わることで、実践力を高めます。現場では、指導者のもとで実習生としての立場を守りながらも、責任感や対応力を育みます。
対象者の年齢や障がいの程度、生活環境に応じた多様なケースに触れることで、柔軟な視点や判断力を身につけます。これらの実習を経験することで、卒業後すぐに現場で活躍できる即戦力としての資質が養われます。

言語聴覚士の試験内容

国家試験は筆記試験形式で実施されます。主な出題内容は、基礎医学、臨床医学、音声・言語・聴覚障害学、リハビリテーション学などの基礎科目から100問、および失語症学、発達障害学、聴覚障害学などの専門科目から100問の、合計200問で構成されています。
試験は全国で統一的に実施され、受験者は例年2500名弱です。すべてマークシート形式で出題され、出題内容は広範囲にわたります。そのため、学習範囲を網羅的に理解すること、そして過去問題を活用した対策が重要です。試験時間は午前2時間30分、午後2時30分の合計5時間であり、長時間にわたるため集中力が求められます。合格基準は200問中60%以上の正答の120点です。

言語聴覚士の資格取得の難易度

国家資格である言語聴覚士は、誰でも簡単に取得できるわけではありません。過去の合格率や試験の傾向を踏まえることで、現在の難易度を把握し、効果的な学習対策を立てられます。以下は、過去5年間の言語聴覚士の合格率の比較です。

資格取得の難易度

年度 受験者数 合格者数 合格率
2020年 約2,500人 約1,600人 約65%
2021年 約2,600人 約1,800人 約70%
2022年 約2,600人 約1,900人 約75%
2023年 約2,500人 約1,700人 約68%
2024年 約2,400人 約1,800人 約72%

毎年7割前後が合格しており、しっかりと勉強すれば十分に合格が狙える国家資格といえます。養成校でのカリキュラムや模試、直前対策などを計画的に取り組めば、着実に合格に近づくことが可能です。
出題傾向も毎年大きな変化があるわけではないため、過去問題を繰り返し解くことで出題形式に慣れ、得点力を高められるでしょう。合格を目指すうえで、早期の受験対策開始と弱点分野の克服を意識しなければいけません。

言語聴覚士の養成校の選び方

養成校選びは、資格取得の成否に大きく関わるため重要です。どのような観点で学校を比較し、選ぶべきかを理解しておくと、自分に合った学びの場を見つけやすくなります。ここでは、養成学校の選び方について4つ解説します。

指導体制や実習の充実さで選ぶ

言語聴覚士の養成校を選ぶ際には、講師陣の質と実習環境の整備が重要です。経験豊富な講師が在籍しているかどうかを確認し、実際にどのような授業を行っているか、公開講座やオープンキャンパスなどで確認しましょう。
病院や福祉施設、特別支援学校など、実習先が多様で実践的な学びを得られる環境かも重要です。実習が充実している学校では、現場に出た際に即戦力となるスキルを磨けるため、将来の就職活動にも大きく有利になります。

国家試験の合格率をチェックしよう

国家試験の合格率は、養成校の教育体制や学生サポートの質を測る重要な指標です。しかし、単純に数字が高ければよいというわけではありません。学校により、国家試験前に成績による足切り制度を導入し、受験者数を絞ることで合格率を高めているケースもあります。
一方、全員受験を許可している学校では合格率がやや低くなる傾向がありますが、教育における公平性や実力重視の姿勢が評価されるといえます。そのため、合格率をみる際は受験対象者の母数や合格率の背景も含めて判断しましょう。

就職率や就職支援の手厚さで選ぶ

就職実績も学校選びで見逃せないポイントです。就職率が高い学校は、医療・福祉業界とのつながりが強く、求人の紹介や企業・病院とのマッチングがスムーズである可能性が高いです。さらに、履歴書の添削や模擬面接など、学生一人ひとりの希望や適性に応じた就職支援が充実しているかどうかも確認しましょう。
就職説明会やインターンシップなど、在学中に現場に触れられる機会が豊富である学校ほど、将来の進路選択にも役立ちます。

通学年数や学費で選ぶ

言語聴覚士養成課程には3年制や4年制などがあり、通学年数によって学費総額や時間的な負担が変わります。特に、早く資格を取得して働きたい人にとっては3年制の専門学校が適している場合があります。
授業料のほかにも教科書代や実習費、国家試験対策費などの諸費用が発生するため、全体の費用をしっかりと確認しておくことが大切です。奨学金制度や学費分割制度、教育ローンの有無など、経済的な支援体制が整っているかも、学校選びの重要なポイントといえるでしょう。

言語聴覚士になるために必要なスキル

言語聴覚士として活躍するには、専門知識だけでなく、対象者との信頼関係を築くためのスキルも求められます。ここでは、実際の現場で特に重要となる5つのスキルについて解説します。

観察力・分析力:相手の状態を見抜く

対象者の言動や反応を細かく観察し、状況を的確に把握する力が求められます。微細な表情の変化や身体の動き、声の調子の違いなどを見逃さずに捉えることが重要です。
観察だけでなく、そこから適切な仮説を立てて判断につなげる「分析力」も必要です。対象者の抱える課題や背景を多角的に読み取る力は、評価や訓練方針を決める際に重要です。観察と分析を繰り返すと、より適切な支援計画を立てられるでしょう。

傾聴スキル:相手の気持ちを読み取りつつ聴く

言葉に出ない気持ちを感じ取りながら、丁寧に耳を傾ける姿勢が大切です。言語聴覚士の仕事は、単に話を聞くことではなく、相手の感情や意図を「聴き取る」ことが求められます。そのためには、相手の目を見て、うなずきやあいづちを交えながら、安心して話してもらえる環境をつくることが欠かせません。
相手の話すスピードや間の取り方にも注意を払い、共感や理解を示す言葉を返すことで、信頼関係を築けます。傾聴スキルは、評価場面だけでなく訓練時や家族への説明の際にも非常に重要な役割を果たします。

共感力:相手の立場になり考える

障害のある人の気持ちに寄り添い、信頼関係を築くことが重要です。言語聴覚士は、対象者が直面する不安や戸惑いに寄り添い、安心して支援を受けられるような関係づくりが求められます。そのためには、単に「かわいそう」と感じるのではなく、相手の立場になって「どのように感じているか」「どのような支援が必要か」を考える力が必要です。
共感することで対象者との心の距離が縮まり、より正確な評価や効果的な訓練計画の立案につながります。また、家族の気持ちを理解し、サポートする姿勢も大切です。専門職として冷静な判断を下す判断力も、共感力の一部として育てる必要があります。

コミュニケーションスキル:様々な人と協力をする

言語聴覚士は、多職種の医療・福祉スタッフと連携する場面が多いため、協調性や柔軟な対応力が必要です。言語聴覚士は単独で仕事をすることはほとんどなく、医師や看護師、作業療法士、理学療法士など、さまざまな専門職と連携しながら支援にあたります。
そのため、自分の考えを的確に伝えるだけでなく、相手の意図を正しく理解する力も求められます。また、職場により地域住民やボランティア団体などと関わる場面もあり、相手に合わせた柔軟なコミュニケーション能力が必要です。時には、チームのなかで調整役を担うこともあり、関係性を築く力が支援に大きく関わります。

学び続ける力:幅広い分野に対応する

医療・福祉・教育と関わりがあるため、常に最新の知識を学び続ける姿勢が求められます。言語聴覚士が対応する領域は、ことば・聴こえ・発音・摂食嚥下など多岐にわたりますが、これらは日々進化する技術革新の影響を強く受けています。
そのため、一度習得した知識や技術だけで現場に対応するのは難しく、学会や研修会への参加、最新文献の読解など、学び続ける努力が不可欠です。AI技術の導入やICTの活用といった新しい支援手法も登場しており、変化に柔軟に対応できる力がますます重要です。専門職として成長し続ける姿勢こそが、質の高い支援につながるのです。

言語聴覚士になるためにやっておくと良いこと

これから言語聴覚士を目指す高校生の方に向けて、今のうちからできる準備を紹介します。基礎力を高める方法や、日常生活で意識すべきポイントを押さえておくことで、進学後の学びがよりスムーズになります。どのようなことをやっておくべきかを確認してください。

ゆっくり丁寧に話す・しっかり聞くことを意識する

言語聴覚士の業務では、対象者との対話が非常に重要なため、自分の「話し方」と「聴き方」を意識することが大切です。話す際は、言葉を選び、伝えたい内容をわかりやすく伝える力が必要です。
子どもや高齢者、障害のある方には、相手に合わせてゆっくり丁寧に話す必要があります。相手の言葉や表情から気持ちを読み取る「聴く力」も鍛えておきましょう。
家族や友人との会話でも、相手の話を最後まで遮らずに聞く習慣を身につけることで、傾聴力が自然と高まります。

読み書きなど文章力を鍛えておく

言語聴覚士として働く現場では、訓練計画の作成や経過記録など、日常的に文書作成が求められます。そのため、読み書き能力や論理的な文章構成力があると、業務を円滑に進められます。高校生のうちから日記や感想文、レポートを書く練習をしておくと、表現力が養われます。
また、他者の文章を読み解く力も重要です。新聞や本を読むことで、語彙力や理解力を高めると、養成校での学習や国家試験の勉強にも役立ちます。小論文や志望動機を書く機会もあるため、早いうちから文章力を身につけておきましょう。

生物の勉強をしっかり学んでおく

言語聴覚士の専門分野では、解剖学や生理学といった生物系の基礎知識が重要です。人間の体の構造や機能の仕組みに関する理解は、対象者の症状を把握するうえで必要です。高校生の段階で、生物の授業にしっかり取り組んでおくと、養成校で学ぶ専門科目への理解がスムーズです。
生物に興味を持ち、関連する動画や本に触れることで、楽しみながら知識を深められます。生物の基礎を固めておくと、将来の学習への抵抗感が減り、学びのモチベーションにもつながります。

言語聴覚士になるには専門学校へ入学するのがおすすめ

言語聴覚士を目指す際に、どの進学先を選ぶかは大きな判断ポイントです。そのなかでも専門学校は、実践的な学習環境と高い合格率が魅力とされ、短期間で集中して学びたい人に適しています。ここでは、専門学校への入学を勧める理由について解説します。

国家試験の合格率が高い

専門学校では、試験に直結する実践的な指導が行われるため、効率的に知識や技術を習得できます。カリキュラムが国家試験に合わせて構成されている点が強みであり、試験対策講座や模擬試験などが体系的に組み込まれており、専門学校は合格力が高まる仕組みになっています。
また、専門学校は小規模なため、学生一人ひとりに対して個別のフォローが行き届き、サポートされやすいのが特徴です。そのため、国家試験で高い合格率を誇る専門学校が多数存在しています。

臨床実習や現場での訓練体験が豊富

専門学校では、医療現場に近い環境での実習が充実しており、即戦力としてのスキルが身につきます。学内での演習だけでなく、病院や施設での臨床実習が早い段階から組み込まれており、実践的な経験を積めます。
たとえば、評価や訓練の補助、現場スタッフとの連携など、実務に直結した経験を重ねられるため、卒業後の現場適応力が向上します。実習先とのネットワークを通じて就職活動でも有利に働くケースも多く、教育と就職が密接に結びついている点も大きな魅力です。

4年制大学よりも短期間で資格取得を目指せる

専門学校は3年制が多く、4年制大学と比べて1年早く国家試験に挑戦できる点が大きなメリットです。短期間で集中して学ぶスタイルのため、無駄のない効率的なカリキュラムが特徴です。早く働きたい人や経済的な理由で学費を抑えたい人にとっても、専門学校の短期集中型の学習は非常に魅力的です。
さらに、同じ目標を持った仲間と密度の高い時間を過ごすことで、モチベーションを維持しやすく、充実した学習生活を送りやすい環境といえます。

まとめ

今回は、言語聴覚士になるためのルートや学びの内容、必要なスキルについて解説しました。国家資格の取得には養成校での学びが必要ですが、しっかりと準備すれば十分に合格を目指せます。
なかでも、実践的な指導が受けられる専門学校への進学は特におすすめです。埼玉福祉保育医療製菓調理専門学校では、国家試験対策から就職支援まで、手厚いサポート体制が整っています。資料請求やオープンキャンパスの予約も受け付けているため、ぜひ一度チェックしてみてください。

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