この記事にたどり着いたみなさまは、 <調理師 給料 年収>こんなキーワードで検索をかけたのではないでしょうか?
これから調理師になりたいとお考えの方は、調理師の給料、年収はどのくらいなのか?とても気になるところだと思います。結論から言うと、調理師の年収は勤務先や地域、経験、事業所の規模などによって非常に大きく変わってきます。調理師といっても仕事内容は多種多様ですが、今回は、調理師と聞いて皆さんが想像する<調理業務に従事する調理師>の年収についてお伝えしたいと思います。
INDEX
■調理師が含まれる<飲食物調理従事者>の平均年収が約359万円?!もしかして低い?!
■年齢別の調理師の給料・年収について
■調理師の年収を上げる方法について
****************この記事を書いた人****************
調理師 栁澤茜先生
【経歴】東京、埼玉のフレンチレストラン、フランスのレストランを経て埼玉福祉保育医療製菓調理専門学校へ入職し、実習授業を担当。
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調理師が含まれる<飲食物調理従事者>の平均年収が約359万円?!
もしかして低い?!
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、調理師が含まれる<飲食物調理従事者>の平均年収が約359万円、平均月給が約27万円となっています。日本の平均年収が約432万円なので、平均より低いという印象です。しかしながらこの数字には調理師免許を持たない料理人なども含まれるため、必ずしも調理師の実態を反映しているわけではありません。
従業員数で見ると、従業員数が10~99人の事業所では約348万円、従業員数が1000人以上の事業所では約384万円と、会社規模が大きい方が年収が高くなる傾向にあります。
男女別では、男性が約395万円なのに対し、女性は約267万円と、女性よりも男性の方が年収が高いことが分かります。これは、女性は結婚、出産、育児などで調理職から離れる場合が多く、ライフイベントが関係していると考えられます。
地域別では、国内では東京が一番高く、地方よりも大都市圏や観光地、日本よりも海外で働く方が年収が高くなる傾向にあります。世界的な和食ブームもあり、海外では日本人調理師の需要が高く海外の求人サイトを見ると年収500万円以上の求人も多くあります。
勤務先別では、高級ホテル、高級レストラン、高級料亭などは客単価も高いことから給料も高水準となっており、令和6年度の埼玉福祉保育医療製菓調理専門学校の求人の中では、新卒で初任給30万円というホテルもあります。
年齢別の調理師の給料・年収について
日本の一般的な企業では年功序列の雇用形態が根強く残っており、勤続年数が長く、年齢が高くなるほど給料が上昇していきます。初任給で言えば高卒よりも専門学校卒や短大、大卒の方が給料は高くなります。しかし、調理師が現場で求められるのは年齢や学歴ではなく、技術や実務経験であり、技術やスキルに対して対価が支払われます。年齢が上がっても技術やスキルがなければ給料は上がりません。反対に技術やスキルがあれば性別も年齢も問われないので、若くして出世している方も多くいらっしゃいます。
調理師の年収を上げる方法について
前述した通り、調理師は技術や実務経験によって年収が変わってきます。年収を上げる方法は個人の努力とやり方次第でいくらでもありますが、その中のいくつかをピックアップしてみました。
1,キャリアを積む
調理師のキャリアは、1つの職場で長く働き続けるということよりもどれだけ調理経験があるかが重要視されます。日本では転職回数が多いとマイナス評価につながることもありますが、調理師業界では将来を見据えて複数の店舗を転々としながらステップアップし年収を上げていくということも一般的です。私も学校に入職する以前は、レストラン→オーベルジュ→ビストロ→レストラン→集団調理と、様々な形態を経験してきました。フランスで勤務していたこともあり、フランス料理の本場で働いてきた経験が転職では大きなアピールポイントとなりました。複数の職場での経験は料理長の考え方や調理の手法の違いを学ぶことができ、自身の料理の幅を広げ、どんな状況でも対応できる柔軟性や適応力も培うことができます。
調理師のような職人的な仕事は下積みが長いと言われますが、人間の成長でいう子ども時代が大切なように、下積みは非常に大切な時期であります。下積み時代にコツコツと丁寧に土台を構築できたか、どれだけ多くの経験をしてきたかがその後の自身のキャリアや年収にも影響してきます。経験を積んでいく中で他社から引き抜かれることも珍しくなく、引き抜きがあるとこれまでよりも良い待遇で働くことができるので、年収アップにつながります。
2,資格を取得する
調理師免許は調理師専門学校のような厚生労働大臣が指定する調理師養成施設卒業後に住所地の都道府県知事に免許申請すると取得することが出来ます。調理業務は調理師免許がなくても従事することはできますが、調理師免許が必須であったり、ふぐ調理師など特定の資格を取得することによって、資格手当が給料に上乗せされたりする職場もあります。
調理師にとって一番身近な資格として、調理師の上位資格の専門調理師・調理技能士という国家資格があります。受験資格は、
・実務経験年数8年以上のうち、調理師の免許を有していた期間が3年以上
・厚生労働大臣の指定する調理師養成施設において1年以上調理に関する学科を修めた卒業者は実務経験年数6年以上のうち調理師の免許を有していた期間 3年以上
となっており、合格すると「専門調理師・調理技能士」2つの称号が与えられます。それに加えて、調理師専門学校の教員資格も取得でき調理業務だけでなく教育者としても活躍の場を広げることができます。
調理師免許を持っている人は令和5年度総計で約390万人となっており、国家資格の中では比較的容易に取得できます。それに比べて、専門調理師は約4万人となっており、調理師に比べると圧倒的に人数が少ない事がわかります。調理師が料理を作れることは当たり前であり、資格を持っていなくても料理が上手な人はたくさんいます。その中で周りと差をつけ年収を上げる為には、食に関する資格に限らず、語学やPCに強いなど、+αのスキルを身につけることによって自身の市場価値を高めることが必須になってくるでしょう。
3,独立する
これまでの調理師としての経験を最大限に活かせるのは独立ではないかと思います。
調理師の中には、いつか自分のお店を持ちたいと考えている方が多いのではないでしょうか。店舗開業にはリスクも伴いますが、軌道に乗れば年収1000万以上も夢ではありません。実際に独立して年収1000万円以上を実現しているオーナーシェフも多くいらっしゃいます。また、雇われていた時と違い収入の際限がなくなる為、有名オーナーシェフになると年収が億を超えることもあります。
他にも調理師が独立をする方法として、出張料理人、料理教室、料理研究家など、店舗を持たずに独立する方法もあり、最近ではYouTubeで高収入を得ている方もいます。変化が激しい多様性の時代でも、時代に即した働き方ができるのは調理師の大きな魅力だと思います。私が働き始めた20年前は35歳前後で独立する方が一般的でしたが、今では20代中ごろで独立する方も増えています。現代は働き方が多様化し、キャリアが浅くてもマネジメントスキルがあれば比較的容易に独立出来る時代になりました。また、独立するための情報量も多いので、少額投資でも独立しやすい時代になったと感じます。
このように、調理師の給料や年収は千差万別といえます。多様な働き方ができ、出産、育児、介護、など、自身のライフスタイルに合わせて働くことも可能です。また、70歳を超えてもまだまだ現役という方も多くいらっしゃるように長く続けられる仕事です。埼玉福祉保育医療製菓調理専門学校では、定年退職後も調理実習講師としてご活躍されている先生も多く、皆さんいつも元気で楽しそうに授業をしてくださっています。給料はもちろん多い方が嬉しいですが、調理師はそれ以上に多くのやりがいを感じられるからこそ、長く続けている方が多いのだと思います。
以前コラムにも書きましたが、私は料理が好きで調理師になりました。料理を作って、みなさんにも喜んでいただけて、さらに給料ももらえて最高の仕事だなといつも思います。
料理が好きな方、料理を仕事にしたいと思っている方、ぜひ一緒に調理師への第一歩を踏み出してみませんか。