介護福祉士と介護士を混同されていませんか?
メディアで職種を紹介される際も、混同して使用されているのをしばしば拝見します。
「介護は誰でもできる」と思っていませんか?
2024年4月から資格がないとできない業務ができたことはご存知ですか?
日本社会の動きから、介護職の立場の確立が必要になっています。時代背景と共に、ご紹介します。
―時代背景―
日本は、少子高齢化社会と言われています。介護のお仕事が重要視されている理由です。戦争を終え、医療が発達し、食べ物や生活が豊かになり人が長生きできるようになりました。とても安全な環境にあります。日本の平均寿命(平均寿命とは「0歳における平均余命」のこと-厚生労働省e-ヘルスネットより抜粋 )は男性が81歳女性が87歳(厚生労働省の「簡易生命表(令和5年))になり、豊かな国になりました。その反面、生活の質を求めることや、物価の高騰等それぞれの理由もあり、子どもを産む選択ができるようにもなりました。
人口は合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数の平均)が約2.06人から2.07人でないと、安定して人口維持が難しいと言われています。
では、現在は?
【1.20人】※厚生労働省 と発表されており、人口が維持できない数値となっています。
1975年に合計特殊出生率が1.91となり、少子化の始まりとなったとされています。
特に1989年に「1.57ショック」と呼ばれ、合計特殊出生率が1.57となり大きな話題になりました。1975年から2.0人になることはなく、現在まで少子化は進行しています。
平均寿命は伸びていても、人間いつかは最後を迎えるとなれば、産まれた人数から同じ数字ではなく、減っていきます。加えて、
子どもが産まれない社会=人口は増えない社会となってしまいます。
2005年に人口減少が確認され、2008年に人口減少が加速されたと言われています。
―介護職の重要性―
人間は誰しもが年齢を重ねます。年齢が若くなる人はいません。特に身体は、年齢を重ねるとともに、筋肉量が少なくなり、筋力や身体の機能が低下していきます。この現象を「サルコペニア」と言います。一般的に25歳から30歳頃から始まり、進行します。
子どもに関わらない人、何かの病気にならない人はいるかもしれませんが、年齢を重ねない人はいません。誰しもが年齢を重ねて、誰かと関わり支え合って生きています。しかし、支え合える、身体が元気な年齢層が少なくなっては、支え合えなくなってしまいます。
人口減少と核家族(夫婦のみの世帯/夫婦とその未婚の子ども/父親または母親とその未婚の子ども(父子世帯や母子世帯))・一人暮らし高齢者の増加から、家族の形が変わってきていることから、歳を重ねることを不安視している状況は否めません。
内閣府(平成27年版高齢社会白書)の調査では、
一人暮らしの高齢者の42.6%が介護を受けることに不安を感じ、13.6%が頼れる人がいなくなることに不安を感じている。という結果が出ています。
生活の経済状態については、「4人に3人は経済的な暮らし向きに心配を感じていない。」という結果が出ており、高齢者の心配は、経済ではなく、人との関わりなのではないかと感じる結果となっていました。
今まで、家族が行ってきたことが、家族が行えなくなっています。
「遠くの親戚より、近くの他人」の表現が、遠くにも親戚がいなく、近くの他人も頼れない社会になってきています。
内閣府の調査(令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果)では、高齢者の35.3%が挨拶程度のご近所付き合いという結果となりました。引っ越した際、ご近所挨拶をする機会が減っている昨今では、ご近所に頼るということも難しくなってきました。
そこで、大切な存在になってくるのが介護職です。
しかし、介護職の待遇などが問題視されています。
「誰でもできる仕事」と言われてきました。それは、社会背景も関係していると思います。「介護は家族がやるべき」と言った文化から急速的に家族ができなくなった現状が認識不足を払拭できない要因でもあるのではないのではないでしょうか?
今、介護は「家族もできない仕事」です。
むしろ家族だからできないことなのかもしれません。
だからこそ、介護職の専門性が求められています。
―介護士と介護福祉士―
ここからが、介護士と介護福祉士の違いについてです。
■介護士とは
介護士は、介護のお仕事をしている人、を表す単語です。介護職という表現もあります。
■介護福祉士とは
介護福祉士は、国家資格に合格し登録した人が使える単語です。
介護士の中に、介護福祉士がいます。
介護士の中には、無資格者も入ります。介護福祉士は、国家資格を取得し立場を確立していると言っても良いかもしれません。
具体的には、介護ケアプランの作成や、他の介護職員への指導・育成なども行います。
また、厚生労働省の調査によると、介護福祉士の平均給与は約33.8万円であるのに対し、介護士は約28.2万円とされています。
介護福祉士は名称独占です。
※名称独占とは:名称独占資格を持つ者だけが、その資格名を名乗ることができます。資格を持たない者がその名称を名乗ることは違法であり、罰金などの処罰を受ける可能性があります
業務自体は、介護福祉士でない人でも、介護福祉士と同様な仕事をすることはできます。同様な仕事をしているのに、給与に差が出ます。
もちろん、国家資格を取得しているからです。資格取得=専門性となるからです。
介護福祉士の資格が確立されている国は、少なく、ドイツ・スウェーデン・イギリス・オーストラリアは資格としてありますが、他の国は確立されていません。
しかし、独立行政法人労働政策研究・研修機構 「データブック国際労働比較2017」の調べによると世界主要国の老年人口は2030年には21カ国は高齢化社会以上を迎えると予測しています。
介護が必要な可能性が高くなり、専門職が求められるかと思います。
アジアでは、日本の介護福祉士に注目し育成のための、派遣を求められることもあります。
―介護福祉士と介護士の業務内容の違いー
「介護は誰でもできる仕事」と言われていることや「名称独占」などをご紹介しました。
しかし、2024年4月から無資格ではできない業務が出ました。
・身体介護(食事介助、入浴介助、排泄介助など、利用者の身体に直接触れる介助業務)
※介護福祉士などの有資格者の指導のもと、限定的に行うことが可能
・訪問介護
介護職は専門的なスキルが求められています。また、無資格者が施設で業務に就くためには、「認知症介護基礎研修」を受けることが義務化されました。新入職員は1年間の猶予があり、採用から1年以内に研修を受講することが必須となりました。しかし、「認知症介護基礎研修」を受講しても、身体介護と訪問介護ができるわけではありません。この業務は、資格取得者の業務となっています。
介護は、家族から社会へ移行しています。専門的なサービスです。
継続した生活、幸せ度を求められるサービスになります。
一つのサービスを10人が受けた時、結果・評価はそれぞれになります。
できた、できなかったと言った○×で評価ができるものではなく、だからこそ悩むことも多くあります。しかし、だからこそ楽しいこともたくさんあります。家族・友人の次に近い存在、もしくは家族・友人より近く長く関わる存在にもなる可能性もあります。
だからこそ、専門的知識と技術を持って、多様な方へ質の良いサービス提供をし、最高の社会貢献に尽力できたら良いなと思います。
加えて、介護職の社会的立場の確立が、日本人の将来への安心感・幸福度に関係していくのではないかと思えてならいのです。