コロナ禍を過ごした保育現場

新しい生活のはじまり

2023年5月、これまで2類相当だった新型コロナウイルス(covit-19)が5類感染症に引き下げられました。

まだ1ヶ月足らずですが、少しずつ日常が元に戻り、良い意味で世間の緊張感が緩み始めたようです。保育現場では園行事が再開され始めていると聞きます。パンデミック備え付けられたアクリル板が撤去され、据え置きだった消毒液が珍しくなる日も間近でしょう。

3年という期間は、大人の我々にとってはほんの僅かですが、小さな子どもにとっては人生のほとんどといっても良いほどの長い年月です。小さな子どもにとっては「生活がもとに戻った」というより「新しい生活が始まる」という感覚かもしれません。

コロナ禍を過ごした保育学生

専門学校の学生は、集団生活が目に見えないものによって制限されることを経験しながら保育を学びました。

対人援助職を目指しながらも、距離を保ち表情の殆どを隠したままのコミュニケーションを強いられてきました。思えば、感染拡大により実習が完遂できなかった時期、突然のオンライン講義への変更もありました。

それでも、保育士科の学生は、いきいきと本当によく頑張ってきました!

マスクの奥ではいつも精一杯笑っています。長くリモート講義やレポート提出を経験してきたことで、思いや気付きを文章にして発信する力に長けています。自身の学生時代に比べ、社会の動きに敏感であり、情報を取りに行こうとする姿には頭が下がります。

そして、世間全体が不安でいっぱいだった時代に、小さな子どもを支える存在になりたいと保育者を目指して集ってくれたことに、本当に本当に感謝です。

コロナ禍での保育現場の苦労

保育業界では、コロナの感染拡大により、これまで保育者が常々意識してきた子どもの「心と体の健康が守られ」「豊かに育つ」ための日々に大きな制限が生じました。

例えば、食事です。栄養を摂る以外にも、マナーを覚える、コミュニケーションの場として和むなどの教育的要素は様々にあるはずですが、飛沫感染を防ぐためには「離れて」「静かに」「一人で」と、【黙食】を指導せざるを得ませんでした。

消毒が追いつかず、保育室の絵本の冊数や玩具の量が制限された、という話を聞いたこともあります。それまで解放していた子育て支援室や園庭は閉鎖され、地域の中でのつながりも途絶えました。他にも日常の保育業務に加え、方々への対応、衛生面への気配りや複雑化…考えること、変えること、増えた手間は数えきれないほどです。

とてもとても大変でした。でも、それはひとえに「子どもを守る」という目的のもと、心と手を尽くした結果です。

コロナ禍を乗り越えた保育現場

一方で、コロナ禍を経験し気づけたことも、少なからずあったのではないでしょうか。

密を避け、飛沫を交わさずに遊びに熱中できるよう解放された環境構成は、結果的に子どもの遊びを広げたように思います。

徹底した生活動線の消毒により、コロナ以外の感染症を抑え込んだ保育園は多いでしょう。コロナ禍をきっかけに保育士は経済基盤を支えるのに必要不可欠な職業であると認められ、「エッセンシャルワーカー」と呼ばれるなど、社会的な認知も上がりました。

どうしても制限が出る中で、これまでの習慣を見直し、業務が淘汰されたという事例も少なくありません。

そして、保育の質を落とさないという責任を担い保育の方法を協議し、連携し、試し、振り返りを重ねるという、保育者同士の連携が強化された手応えを感じた園は多くあると聞きます。

「コロナ禍」は、確かに大変な日々でした。ストレスを感じなかったと言ったら嘘になります。でも、あんなに苦労した私たちです。ただ「元に戻った」では勿体ないです。

子どもたちと手をつなげること、笑顔を交わせること、一緒に過ごせる喜び…一度失う経験をした我々は、その尊さを、より一層心を込めて、身をもって子どもへ、保護者へ、後輩たちへ伝えることができるでしょう。

何が本当に必要なのか、そのために一番効果的で無駄のない方法は何か?「ねらいを見失わない」という保育の根幹に立ち返り、「新しい生活」に踏み出す保育現場でありたいと心から思います。

(待ちに待った、希望いっぱいの「新しい生活」を過ごしているでしょうか。保育現場へ巣立った卒業生を想います。子どもと泣いて笑っている、素顔の素敵な先生として、ご活躍ください。)

この記事を書いた先生

  • 保育士科
  • 保育士科 夜間主コース

上條 友葉先生

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