「医療的ケア」とは、家族や看護師が日常的に行っている「経管栄養」や「たんの吸引」などの医療行為のことで、本来は医師・看護師・家族だけが行うこととされております。しかし、このような医療的な生活援助行為を医師による治療行為と区別されて、介護や教育(特別支援学校)などの現場での必要性が高まっている経緯があります。
介護保険法等一部改正法により、平成27年度以降は介護福祉士がその業務として医療的ケアを行うことが可能となりました。そのため、本校のような介護福祉士養成施設においても、医療的ケアに関する教育を行うことが必要となってきました。
12月20日(木)、介護福祉士科2年生を対象とした「医療的ケア」の実習が行われました。
医療的ケア実施のために不可欠な知識や姿勢として、「人間の尊厳と自立の理解」「利用者とのコミュニケーション」、及び「衛生管理」です。
行為に前には、まず利用者に状況とこれからの行うことについてご理解をいただきます。その上で、器具等の衛生面に細心の注意を払います。
実習は、まず「たんの吸引」から行いました。たんの吸引は、口腔や鼻腔内にカテーテルを挿入して行う行為と、気管切開部分に気管カニューレを挿入する行為があります、いずれも、吸引器で吸い出します。
自身の力でたんを吐きだすことが困難な場合、たんが喉に詰まり、呼吸ができないことにもなりかねません。そのため、たんの吸引は生命維持のためにも重要な行為となります。
続いて、経管栄養として胃にカテーテルを入れ、そこから栄養成分を直接注入する「胃ろう」の実習です。
食べ物を飲み込むなどの嚥下機能に問題があり、誤嚥やそれによる肺炎などの危険性が高い人にとって、このような経管栄養は、栄養分の摂取に不可欠で、やはり生命維持のために重要な行為となります。
医療的ケア行為の前後には、言葉がけとともに健康の観察が不可欠です。学生たちも、人形相手の実習ではありますが、丁寧に声掛けを行っておりました。これらの医療的ケアに際しては、それぞれ利用者さんの主治医からの指示書に基づいて実施されます。
なお、この授業の指導者は、看護師資格を有し、医療従事者としての勤務経験のある職員が行っております。
学生たちも、その介護福祉士としての幅を広げるためにも、ぜひ「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受け、利用者の安定的な活動の支援ができるようになってください。
平成17年度より、肢体不自由をはじめとした特別支援学校において、看護師を配置し、担当教員として研修を受けた教員による医療的ケア(たんの吸引、経管栄養、導尿)が行われており、それによって教育を受ける権利の確保がなされている実績があります。
介護現場においても、利用者さん尊厳を維持するとともに、精神的にも安定的な生活を送り、安心安全に毎日過ごせることがもっと重要となります。そのためにも、医療的ケアを欠かすことができません。
本校では、これからの介護のあり方を常に追究し、より専門性の高い介護福祉士の養成を行っております。