障害者に対する偏見や先入観の緩和へ ー ~スポーツ交流の可能性~ ー

年度 2017
学科 社会福祉士科

1.はじめに

 私たちは福祉を学ぶ前、障害者と関わる機会が日常的に無かったため、障害者に対して多少なりとも「怖い」「接し方が分からない」といった偏見や先入観を持っていた。
また、実習中に利用者と外出した際、地域の人に「障害者の面倒見るなんて大変そうね」「私なら、何されるか分かんないし、怖いから関わりたくないわ」と言われた経験があった。
そこで、世の中にはどれくらい障害者に対し、差別や偏見が存在するのか気になり研究を始めた。
※私たちが考える「日常的」とは・・・普段から障害者と関わりがあること(例:施設職員や家族等)

2.現状把握

 そこで、私たちは、世の中に差別や偏見がどれくらい存在するのか知りたく、内閣府が実施している「障害者に関する世論調査」を調べた所、以下のようなデータが見られた。  ※H24年度調査

(1)世の中には障害がある人に対して、障害を理由とする差別や偏見があると思うか聞いたところ、あると思うと答えた方が約9割(56.1%+33.0%)となっている。
(2)障害者と関わる機会として、行事や催しへ参加してみたいと思うか聞いたところ、参加してみたいと答えた方が約7割(7.6%+61.7%)となっている。
この結果から、障害者と交流する事に対して肯定的な意見を持っている方が多数いる一方で、差別や偏見が存在していると考える方も多いという事が挙げられる。

3.仮説

 内閣府のアンケート結果からも見られるように、「差別や偏見があると思う」という回答が約9割に上るのに対し、「行事や催し」があれば参加したいと考える方が多数いるという事は、『差別や偏見がある=障害者と関わりたくない』という事ではないのだと考えた。
また、「障害が原因で事件を起したのではないか」といった誤解を招いてしまうような報道をするメディアも存在するため、そういった表現が偏見や先入観を助長してしまう可能性があるのではないかと考えた。その様な一部メディアの偏った報道が無意識に障害者に対し、悪いイメージを与えてしまう危険性があるのではないだろうか。
 偏見や先入観が生じる理由として、私たちも入学する前はそうだったように、障害者と関わる機会が少ないからこそ、独自のイメージや情報などで判断してしまうのではないかと考える。
そこで私たちは、「障害者の方との関わりの場や交流の場があれば、誤った偏見や先入観が緩和されるのではないか」と考えた。

4.研究方法

 今回、スポーツを通して障害者と健常者の交流を図っている団体がないか調べていた所、学校の先生からご紹介をいただいた、特定非営利活動法人クッキープロジェクトの方たちと話し合いを重ね、私たちの卒業研究にご協力していただける事となった。
また、話し合いの中で、「デコッパ!卓球選手権」を開催している事を知り、健常者を対象に障害者に対する偏見・先入観についてのヒアリングを交流前と交流後に実施し、デコッパ卓球を通して障害者との関わりを持つことで、偏見や先入観に変化が現れるのか検証を行うこととした。
以下、デコッパ卓球開催までの流れである。

5.研究結果

 デコッパ卓球、交流前と交流後に「デコッパを通して障害者と交流を図ることによって、偏見や先入観に変化が現れると思いますか?」という質問を対象者4名に実施したところ以下のような結果となった。

 Aさん、Bさん、Cさんに関しては、直接会話する事はなくても、打ちやすいところにラリーを返すうちに自然と相手に対して気遣いが出来た。競技に没頭していて気づいたら障害の有無なんて考えていなかった。など、関わって初めて気づく事や相手を理解する事が出来るといった、肯定的な考えを持てた事が、交流前よりも良いイメージを持つことができた要因である。
 一方、Dさんに関しては、交流前から少し怖いという先入観を持っており、少し関わっただけでは変わらないと思うといった考えを持っていた。また、実際に交流してみて、障害者の方との関わり方や接し方が分からなく、競技中も上手くコミュニケーションが図れなかった為、交流前より怖いと感じてしまった事が、交流前よりも良いイメージを持つことが出来なかった要因である。

6.考察

 今回の研究を通して、障害者と健常者の交流は大切と考える方が多く、行事や催しの参加にニーズがあると思った。
なにも、偏見や先入観を持つことが悪いという訳ではなく、実際に交流してみて考え方が変わったという方がいたことからも、関わってみて初めて気づける事があるのではないかと感じる。 だからこそ、このような関わりの場が貴重であり、独自のイメージや情報のみで判断するのではなく、目で見て体感する事もできる交流の場が大切となるのではないだろうか。実際に、施設職員や参加者からは、多くの交流をしたいと考えているが、障害者の方と関わる機会や交流の場が少ないといった意見が多く聞かれ、デコッパ卓球のように障害の有無問わず多くの人が交流をする事ができる場が必要だと考える。
また、「このような交流の場は大切だと思いますか?」というアンケートを全チームに行った結果、 「思わない」というチームはいなかった。
私たちが目指すソーシャルワーカーの視点としても、より多くの交流の場を設け、障害者と健常者が継続して交流を図ることができる環境を整える事が求められるのではないかと考える。

7、まとめ

 今回、デコッパ卓球の中で対象者に対し、障害者に関するイメージをヒアリングしたところ、世の中には差別や偏見が存在していると考える方は多かった。
しかし、自分自身が差別や偏見を持っている訳ではなく、世間全体のイメージとして差別や偏見が存在しているのではないかと考える意見が多かった。
仮説でも述べたように、『差別や偏見がある=障害者と関わりたくない』という事ではないと考える方が大半であった。また、障害者の方と交流する機会があることで、「関わる前までは先入観やイメージで判断していたと気づけた。考えが変わった」という意見も聞くことができた。
このことから、研究対象者は多かったとは言えないものの、私たちが考えた「障害者の方との関わりの場や交流の場があれば、誤った偏見や先入観が緩和されるのではないか」という仮説は概ね、間違っていなかったと考えられる。しかし、中にはDさんのように、障害者の方と関わり方が分からなかったり、障害の有無問わず、初対面で積極的に関わる事が苦手な方もいるので、場面や状況に沿ったフォローや配慮が必要だったという反省点も挙げられる。また、今回参加させて頂く中で、交流プログラムを考える際、様々な課題が生じた。確かに全ての人が満足する企画を考えるのは正直、難しいのかもしれない。しかし、私たちが目指すソーシャルワーカーは常にクライエントに対しより良い選択を考える事が求められる。そういった面でも今回の研究は私たちにとって良い経験になったと感じた。この機会を与えてくださった、クッキープロジェクトの方や協力してくれた方々に感謝の気持ちを忘れずに、これからの人生に活かしていきたいと考える。
参考文献(障害者に関する世論調査)  http://survey.gov-online.go.jp/h24/h24-shougai/index.html

資料請求 オープンキャンパス LINE相談