知的障がい者が自分の望みを実現するために ー ~買い物等の意思決定に関する支援や学習について~ ー

年度 2017
学科 社会福祉士科

1.はじめに

 私たちが今回の研究テーマにしようとしたきっかけは、実習先で買いたい物があっても買い物に不安を抱え、買うことができずお金が貯まっていく方がいたことである。私たちは、障がいのある方々は特別支援学校でお金の使い方を習っていると聞いていたが、なぜそのような現状が生まれてしまうのか疑問に感じた。

2.現状把握

 私たちはまず、就労支援事業所に焦点をあて、支援の仕方について現状を把握しようと考えた。就労支援事業所に焦点をあてた理由は、グループメンバーの実習先が主に就労支援事業所であり、金銭のやりとりに関して利用者が不安をもっているのでは、と感じたメンバーが多くいた為である。
 就労支援事業所を含めた5施設に金銭面の支援を行っているかを調査したところ、1施設は支援を始めたばかりとのことだった。残りの4施設は行っていなかった。
(A施設、B施設、C施設、D施設、E施設)

 その結果、就労支援事業所では、お金の使い方を学ぶ機会をつくることが難しいということがわかった。これらの意見の背景には、障害者自立支援法から障害者総合支援法へと法律が改定されたことで、施設が担う役割に変化が生じたことも影響していると考えられる。
 そこで私たちは、意思決定の支援を行う機会のある生活支援を担う施設に対し「買い物をしたくても出来ない」「生活に必要なものを必要と感じない」という現状を改善することが出来るのではないかと考え、研究を進めた。

3.仮説

 私たちは生活支援を担う施設において、意思決定を行うことが利用者の望みを実現する機会につながるのではないかと考えた。

4.研究方法

 私たちは仮説を立証するために、成人期・児童期にそれぞれどのような支援を行っているのかについて訪問し、聞き取りを行った。
① 成人期の金銭面に関する支援の取り組みについての調査
F施設(グループホーム)、G施設(生活介護支援事業所)、H施設(障害者生活支援センター)の3つの障がい者支援施設から話を伺う。
② 特別支援学校での学習内容についての聞き取り
特別支援学校の元校長先生
1. 特別支援学校での学習内容について
2. 卒業後、就職する際に企業から求められる人材の能力について
3. 特別支援学校から家庭へ望む就労準備について
③ 児童期の意思決定の支援についての考え方に関するアンケート
私たちは、以下の項目をJ施設(放課後等デイサービス)とK施設(知的障害児入所施設・短期入所施設)に訪問し、アンケート調査をお願いした。

5.研究結果

① 成人期の金銭面に関する支援の取り組みについての調査
3つの障がい者施設から話を伺うと、以下のような現状や事例がある、という話が挙げられた。
●F施設(グループホーム)
「人員面から継続して導入することは難しい」
●G施設(生活介護支援事業所)
「重度障がいを持つ利用者が多くいるため、身体機能の維持が中心」
「自分で何か選択・行動するよりは支援員や機関にサポートしてもらい生活していく」
●H施設(障害者生活支援センター)
「保護者からの障害者年金の仕組みを知りたいなどの要望に対する勉強会はその都度行うが、金銭支援だけの継続的な勉強会の実施は難しい」
「児童期に家庭や施設で自分の身の回りに必要なものがすべて揃えられてしまうことで、 自ら考える機会が減り、成人期の想像力や意思決定の難しさにつながっている」
② 特別支援学校での学習内容についての聞き取り
●埼玉福祉・保育専門学校の学校長から、特別支援学校での学習内容について以下の内容を伺うことが出来た。
・小学部では、「遊び」を通して物の価値について学んでいる。
・中学部では、小学部で培った基礎をもとに、他人との関わり方や環境に対してアプローチを行う。これらの日常生活の学習を生活単元学習を通して行っている。
・生活単元学習の中に買い物、意思表示の訓練がカリキュラムの中にある。
例)遠足、修学旅行などでお金の管理、所持金を学年ごとに上げていく取り組みがある
・中・高等部では就職が視野に入っていくため、カリキュラムに新しく作業が組み込まれる。
例)木工、手工芸、革細工などの作成・販売
・自立活動(最低週2日)があり、小学部・中学部・高等部のそれぞれで8つの項目に対し評価基準とキャリア教育の狙いがある。

●特別支援学校が企業から就労するために、必要なことに関しての具体的な助言をもらっている。
・健康管理・生活のリズム・自分で発言する
・挨拶・時間のけじめ・お金の使い方
・就労準備性のピラミッドの土台部分である家庭に関して等

③ 児童期の意思決定の支援についての考え方に関するアンケート
 <意見の分かれたK施設にて>
問) 意思決定の支援を行うことが本人の意思決定に変化をもたらすと思いますか?
答) 本人が欲求・要求の伝え方がわかる。
    意思表出・選択の幅が広がる。
    自分の選択に責任をもてるようになってくる。本人の納得の上で変化が起こる。
    考える力が身につき「個」を尊重することで自信・意欲につながり、
    正しい判断の意思決定ができる。

6.考察

 私たちは研究を通して意思決定の支援をすることを難しいと捉えている現場が多いことが分かった。また、成人期に支援を受ける本人が成長し大人になったために、それまで培ってきた意識の改善に難しさがあるのではないかということも分かった。このことから児童期に、特別支援学校での学習内容も踏まえて家庭や施設で繰り返し取り組むことで、将来自分で意思決定するこ とが可能になるのではないかと考えられる。
 私たちが実施したアンケートの結果から、意思決定の支援を行うのは生活支援を担う施設の中では、放課後等デイサービス事業所が最も適しているのではないかと考えられる。その理由として、1つめに、放課後等デイサービス事業所の対象が心身の変化の大きい小学部から高等部までの子どもであり、発達過程や本人の特性などを理解した支援を一人ひとり個別に行うことになっている。2つめに、放課後等デイサービス事業所は規模が基本的に小規模で、職員の目が細かく行き届きやすい点が挙げられるのではないかと考えた。

7.まとめ

  今回の研究で私たちは、アンケートの実施にのみ終始してしまい、生活支援を担う施設での実施につなげることが出来なかった。しかし、アンケートの結果や特別支援学校の元校長先生からの話から、生活支援を担う施設ではなく、発達支援を担う施設である放課後等デイサービス事業所でなら、利用者の望みを実現する機会につなげることができるのではないか、ということが分かった。
以上のことから、生活支援を担う施設と発達支援を担う施設でそれぞれ支援を実施し、更に研究できればと思う。

8.参考資料

田柳宏・山崎寛・小池浩次・橋本晋一・柴原正明・炭谷渉(2013)『特別支援学級進路指導の手引』埼玉教育委員会.
菊地一文(2013)『実践キャリア教育の教科書』学研教育出版.
眞保智子(2017)『障害者雇用の実務と就労支援』(株)日本法令.
厚生労働省『放課後等デイサービスガイドライン』厚生労働省
http//:www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai.../0000082829.pdf,2017年11月24日参照.

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