保育環境が子どもへ与える影響 ー 見つけ 気づき 考える子どもと環境構成・保育者の関わり ー

年度 2022
学科 保育士科 夜間主コース

キーワード

保育環境・環境構成・保育者の関わり

1.はじめに

 学校に入学してからのこの 2 年間で様々な保育現場での実習、また学校の授業を通して、子どもの育ちに環境が大きく影響していることを感じた。多くの環境から影響を受け、育っていく子どもに何が起きるのか。これまでの経験により私が特に興味を持ったのが環境の 1 部である環境構成の工夫と人的環境となる保育者の子どもとの関わりや保育をする姿であった。このレポートでは、今までの実習日誌を参考に保育園での環境構成の工夫と保育士と子どもの関わりに着目しより学びを深めることにした。

2.検証展開調べた事柄のまとめ

 心も身体も段階を踏みながら少しずつ成長していく子どもたち。まだ生まれて数ヶ月、数年で集団生活をし始めている保育園に通う子どももいる。多くの子どもとそこで働く少ない保育士、そのような人員の中で一人一人の子どもに寄り添いながら保育するにはどのような工夫が必要かを考察する。

第 1 章―発達に合った保育環境―
事例 1)
実習先の保育園に行き最初の日に目に入ってきたのはおままごとコーナーに置いてあるおもちゃだ。
0.1 歳児クラスではよく目にする食べ物の形をしたプラスチックのおもちゃが 1 つもおままごとコーナーに置かれていない。置かれてあるのはさまざまな色のプラスチックチェーンや花紙を丸めたものなどだった。
1 歳児は見立て遊びが盛んとなる時期であることから保育士は「おままごとコーナーでのおもちゃを見直し、このようなプラスチックチェーンや花紙はおもちゃを大切にしてほしいという思いから子どもと一緒に作りそれを遊びへと取り入れた」と聞いた。
2 歳児クラスでは屋内アスレチック遊具の下に布団を敷きそこで子どもが言葉で友達とやりとりを楽しみながらごっこ遊びをしていた。
幼児クラスではおままごと道具も本格的に生活で使うような道具が用意されており、それに加えてお化粧道具や鏡、1 つの畳部屋がおままごとコーナーとなっておりごっこ遊びが楽しめる空間が作られていた。

考察 1)
私はこのような工夫と考えられた環境下遊ぶ子どもの様子からとても遊びに集中できている子どもが多いこと、おもちゃに興味を持つ子どもが多いことを感じた。よく、「室内を走り回る」「おもちゃを投げる」などで保育士が「はしったらダメ」「投げちゃダメ」という場面をみるが、このように発達に合ったおもちゃや空間の提供ができるよう日々保育環境を見直すことが保育士として子どもの成長を支援することに繋がるのではないかと考えられる。

事例 2)
幼児組の子どもたちは登園後黒板ボードに書かれた活動の中からやりたい活動を選択して自身の顔写真と名前の書かれた磁石を選択した活動がわかるようそれを黒板ボードに貼っていた。
ボードには活動に参加できる人数も書かれており、特に年長児は「○○グループには後何人だよ」などと友達同士で伝え合う姿も見られた。保育士は、事前に活動とその活動につく先生を打ち合わせし 10:00 になると各スペースに分かれ活動を開始していた。
・0.1 歳児クラスではこれを担任が話し合いグループ分けをしていた。
・2 歳児クラスではおやつ後の時間外で遊びたいか室内遊びで遊びたいかの二択を子ども一人一人に言葉掛けし保育士が子どもの選択を促していた

考察 2)
乳児期から徐々にこの取り組みへの参加を促し幼児期になった子どもたちは遊びを自ら選択し主体的に遊ぶことのできる環境ができていた。又、子ども自身が遊びを選択することができる為「また明日やろう」「次はこれがしたいから○○をつくろう」と遊びの連続性がうまれたり、見通しが持てるようになったり、気の合う友達が増え友達とのコミュニ ュケーションが増えることで新たな成長が見られることも感じられた。4.5 歳児になると遊びだけでなく当番活動も選択制で始まりやりたい当番活動の欄に磁石を置き時間になると子どもたちは乳児クラスの寝かしつけや掃除、起床の言葉掛け、幼児クラスでの給食の盛り付けなど自ら選択した当番活動を行っていた。
このような取り組みから子どもは自主的に活動を選択し、「これをやる」主張したことで責任感を持つようにもなる。
 実習先でこの活動を最初見た時には「自由すぎる」それだけが私の感じたことだったが活動する子どもの様子をみて人の話を聞くこと伝えること我慢することも身についていっていることを感じた。
「選択肢を与え、主体的に活動に参加できる環境」「各ゾーンにより空間を使い分け、自分でできる、選択できる、取り出しやすい、使いやすい」「中断させない、動線が重ならない、人数が集中しすぎない、見通しが立ちやすい」集中できる工夫のある保育環境の実現の為の工夫がある、と感じた。

第 2 章ー保育士の関わりー
 第 1 章では実習先での事例を元に発達に合った環境構成の工夫そこから子どもに与えることのできる影響について述べてきた。第 2 章では保育士の関わりの工夫とその影響について実際の事例から考察する。

事例 3)
A 児(2 歳児)は午睡後なかなか眠りから覚めることができず眠気と起きてという周囲からの言葉により葛藤していた。A 児に対し、実習園では 14:50 頃からおやつの準備をし始め起床した児から順次トイレに行き、おやつを食べ始めていた。A 児はなかなかベッドから起き上がることはなかったが、保育士は A 児の様子を見守りたまに「A ちゃんのおやつ残してあるからね」などと声を掛けていた。A 児は起きるよなどと声を掛けられると「いやなの」と布団にくるまったりしていたが、しばらく周囲の様子をみた後「○○先生とおやつを食べたい」と欲求を保育士に伝えその気持ちを受け止めてもらえると安心した顔で布団からでておやつを食べた。「起床までに時間はかかるものの、このように自らやってみようと思える気持ちを大切にしている」という話を保育士から聞いた。

考察 3)
2 歳児では自立心が芽生え始め「自分で」という意思が現れる。そして意思や欲求を言葉で伝え始める時期である。しかし、能力が追いついていない部分もあり戸惑いがあったり、上手く思いが通じないことなどで癇癪を起こしたりとトラブルも多い時期であるが、「やってみようと思える気持ちを大切にしている」という言葉の通り、このクラスでは一人一人の起床リズムに配慮し環境を整え遊びの空間、排泄・おむつ交換のできる空間、食事の空間、睡眠の空間を作り保育士も連携をとりながらその空間一つ一つを丁寧にみることで「子ども達から発達の段階で出てくる欲求を否定しないで済む為の工夫」「自立・自律を促す、子ども達が主体性を発揮し、自分で挑戦する為の環境構成、保育環境食べる場所、寝る場所、遊ぶ場所の確立」を実現していた。事例で言葉掛けをしていた言葉掛けをしている保育士は1人であったが、A 児とのやりとり、又 A 児の普段の様子も理解し共にこども自らやりたいと思える気持ちを大切にできるよう、すべての保育士が配慮していた。

3.考察・今後の課題

 保育現場での出来事、保育士の助言を元に、環境から子どもに与える影響について考察することができた。
おもちゃを通して子どもに伝えたい思いや願い、空間を作ることの意図、一つ一つの言葉掛けがよく考えられ伝えられていること、保育士同士が連携をとることの重要性、子ども同士のやりとりを見守ることの大切さを学ぶことができた。
「どんな時でも子ども一人一人の気持ちに寄り添い丁寧に保育をしていきたい」「子どもの発達の段階で出てくる欲求を十分に受け止めることのできる保育士でありたい」と考えるが子どもの人数に対し十分な保育士人数が揃っているとは感じられない保育現場でそれをどのように実践するのか。
そこで、今回述べてきたような環境への工夫をしていくことでそれを実践できるようにし、子どもが子どもらしくいられる場所、たくさんの体験をしながら成長できる場所を提供できるよう今後も学ぶことへの意欲を持ち続けていきたいと考える。

9.参考⽂献

(1) 浦和ひなどり保育園ホームページ閲覧日: 2023 年 1 月 5 日
(2) 浦和ひなどり保育園職員の先生方
(3) 保育実習Ⅲ 実習日誌(2022 年 10 月 24 日〜11 月 2 日)

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