保育士は子どもとその家庭にとって唯一無二な存在であることの証明 ー 子ども子育て支援の本質を捉えた保育士の限界を超える専門性の追求 ー

年度 2022
学科 保育士科 夜間主コース

キーワード

理想の保育・保育士の限界・保育士の専門性

1.はじめに

 私が、二年間保育について深く学んだことで、〈理想の保育〉や〈私たちが今後現場でしていくべき保育〉について期 待を持つと同時に、実際に保育園でアルバイトをしたことでそれを実践していくことへの大きな不安も抱えた。
しかし、私は保育士として働く上で、この二年間で学んだ〈理想の保育〉を実現し、子どもとその家庭を支える専門職でありたいと強く思う。本稿では、現在の保育体制や実際の事故や、求められる保育士像とその実際を通して、私の考える〈理想の保育〉と、それを実現していくために保育士にできることをまとめることとした。

2.検証

(1)求められる保育士像・理想の保育について
 時代の変化に伴い、日本人の考え方や嗜好の変化が著しい昨今、子どもの人生の土台を支える職業である保育士に対し、求められる〈保育士像〉が大きく変わってきている。以下は、私が考える〈理想の保育〉について大きく三つの要因に分けて、考えつく限りを書き出したものである。

 「①保育士の特性によるもの」とは、元来保育士に求められてきて、今後も求められ続ける事由をまとめたものである。特に保育所保育指針にも記載されている「子どもの最善の利益の尊重」については、保育士として最も重要な考え方であると同時に、保育士一人ひとりの倫理観や価値観、子どもやその家庭によって大きく変化するという難しさがあると考える。
 次に、「②時代の変化によるもの」とは、前述の通り日本人の考え方や嗜好が大きく変化していることから、保育士に求められる「理想の保育内容、保育環境」も変化していると言える。
 最後に、「③今後改善されていくべきもの」とは、上記のような時代、考え方の変化に伴い、さらに高くなった理想についてまとめたものである。現在の保育体制では、完全な実現が難しいと思うがより高い専門性をもって子どもを保育することの重要性を感じ、少しでも早い実現が望ましいと強く思う。

(2) 保育士が現場で感じる限界について
 (1)で述べた理想の保育の多くは未だ実現していないと私は考える。それには、下記のような多くの問題があるのではないだろうか。

これらの事由により、〈時間の余裕の無さ・心の余裕の無さ〉が生まれ、子ども一人ひとりに寄り添った支援の実現が難しくなっているのではないだろうか。

(3)事故から学ぶ保育の質
例1)2020 年 2 月、昼食中に男児(当時 1 歳 2 カ月)が食べ物を喉に詰まらせて死亡した事故
この事故の原因には、保育士の知識不足にあると考える。乳幼児の応急処置や、食事の際に留意するべき点をあらかじめ学んでいなかった保育者の落ち度を感じる。

例2)2017 年、3 歳だった女児がうんていに首を挟まれ死亡した事故
この事故の原因には、子どもが使用する遊具の危険性の見落とし、遊具ひとつに対し保育士が一人補助に入るなどの保育体制の不備を感じる。

例3)2018 年 2 月、園外保育中に倒れてきた墓石の下敷きになって園児が死亡した事故
この事故の原因には、保育者の危険予測、保育環境の下見及び整備の甘さや、子どもの行動の予測など多くの不備、見落としを感じる。

例4)園児が送迎バスに閉じ込められて死亡した事故
この事故の原因には、保育園として安全の確保のためのマニュアルの不備を感じるとともに、保育者の子どもの命や安全に関する意識の低さも感じる。

 私は、保育士は子どもの命を預かり、成長を支える仕事だと思う。しかし、上記のような事故を見聞きするたびに、保育者や施設側の、子どもの安全に対する意識の低さを強く感じる。また、それが低くなってしまう原因には、(2)にて述べた配置基準などによる、保育士一人に対する負担の多さがあるのではないかと考える。

3.理想の追求に伴って

 保育士は、子どもの命を守るという最低限の仕事を大切にこなした上で、未来を生きる子ども達がより広い視野と柔軟な思考を持つための土台形成に関わっている。保育士の専門性の向上には、子ども子育て支援の本質をよく理解したうえで、それに伴う勉強や研修への参加を惜しまず、日々子どもとその家庭に対し、個々に関わることが必要であると考える。また、保育士の働き方や保育体制の改正など、よりよい保育に向けた政治的な活動にも目を向け、積極的に動いていくことも重要であると考える。
 私は、この二年間で保育士として働くうえで、大切にしたい事を明確にすることができた。様々な嗜好、それに伴う様々な家族の形、医療の発達によって幼少期に発見可能となった様々な障害や病気など、子どもとその家庭には、それぞれ多種多様な悩みと支援のニーズがあると思う。私は今後、今までの固定概念や経験による憶測を無くし、それらに対しまっさらな気持ちで向き合うよう常に心掛けていたい。唯一無二の子どもとその家庭に対し、唯一無二の保育士として高い専門性と深い愛をもって支援していきたいと強く思う。

4.謝辞・文献一覧・参考資料

(1)毎日新聞 大阪・認可保育園で窒息死 誤嚥防止の配慮怠る市検証部会が報告書/大阪
https://mainichi.jp/articles/20210116/ddl/k27/040/260000c 閲覧日2022/12/18
(2)朝日新聞デジタル うんていに首挟まれ3歳児死亡地裁、保育所に賠償命令
https://www.asahi.com/articles/ASN1X66BSN1WPLXB00K.html 閲覧日2022/12/18
(3)読売新聞オンライン 墓石の下敷きで園児死亡、下見しなかった保育士…口止め依頼し書類書き換えか
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210629-OYT1T50098/ 閲覧日2022/12/18
(4)朝日新聞デジタル 職員は複数、対象は満一歳以上 福岡県が園児バス送迎で指針発表
https://www.asahi.com/articles/ASP9J72LTP9JTIPE00M.html 閲覧日2022/12/18

⚫︎ 本稿の製作にあたり、保育士科 上條友葉先生には、終始温かく熱心なご指導を頂きました。心から感謝いたします。
⚫︎ 保育士科夜間主コース2年生の皆様には、本稿の執筆にあたり多くのご助言を頂きました。本当にありがとうございました。

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