保護者が求める子育て支援 ー 子育て経験のない新任保育士にできること ー

年度 2022
学科 保育士科 夜間主コース

キーワード

子育て支援・保護者・新人保育士

1.はじめに

 子育て支援は保育士として重要な役割であるとされている。
家族の在り方が多様化している現代において、社会的課題を求められているのも事実である。しかしながら、子育て経験のない新任保育士が育児支援を行うのは非常に難しい。子育て支援の講義においても事例を読み取り演習課題に取り組む際は、具体的な支援方法について悩む学生の姿が多くある。そこで保護者の悩みやニーズに視点を置き、新任保育士にもできる専門性を活かした子育て支援について考察することとした。これによって子育て支援に対する不安が減少されると共に、支援の方向性が見えてくるのではないだろうか。
本稿第一章では保護者のニーズを明らかにする為、保育士資格を持ち、3 人の育児を経験した女性にインタビューを行い、語られたことを整理した後報告するものとする。
第二章では調査の詳細と結果について説明し、第三章では文献から得られた知見をまとめ、考察を行うとともに本稿の結論を述べる。

2.インタビュー

(1)詳細
インタビューは以下の質問事項に基づき、対面式で行った。
 1. 子育てで1番辛かったことは何か
 2. 保育者から欲しかったそ声掛けや支援はどのようなものか
 3. 新任保育士や経験年数を重ねた保育士の働きかけにより、「子育て支援された」 と感じた場面
協力者にはインタビューの内容を卒業論文に記載することと、保育学生の学びに繋げる旨を伝えた。

(2)結果
本節では、上記質問事項を中心にインタビューの結果を報告する。以下、報告すべき要点をまとめ補足が必要な場合は()内に記すこととする。
① 子育てで1番辛かったことは何か
協力者は保育現場での勤務経験があるため専門的な知識や視点があり、保育を学んでいたことから子どもに対してのストレスが少なかったと語る。
協力者:理想と程遠く、思うように育たない。長男はおっとりしていて(他事と比べて行動の)テンポがずれていた。片付けが時間内に終わらないのも直らない。他の子どもと比べるのが苦しかった。それより姑の方がきつかった。3番目はいらないと言われていたけど授かった時は半年も口を聞いてくれなかった。
子どもの悪いところは私(協力者)のせいで、いいところは息子(協力者の夫)にそっくりと言っていた。

② 保育者から欲しかったそ声掛けや支援はどのようなものか。
協力者:何気ない話や日頃の立ち話が大事。毎日笑顔で迎えてコミュニケーションを取れるようにしてほしい。

③ 新任保育士や経験年数を重ねた保育士の働きかけにより「子育て支援された」と感じた場面
協力者:保育園の先生へ「次女が話す時に吃るから言葉の教室に通おうと思う」と相談した時に、「ペースに合わせて話を聞いて待ってあげなさい」と言われて、その通りにしたら吃りがなくなった。新任に支援されたと思ったことはない。
ただ、一生懸命な新任がいて、子どもはその先生の事が大好きだった。努力している姿勢は伝わった。

3.おわりに

 保護者とその子どもを支えるのが保育者としての役割である。しかしインタビューから新任保育士には子育て支援の限界があることがわかった。専門的な知識や技術が少ないことから、保護者の育児相談に乗り、解決に導くのは不可能に近い。
 しかしながら、保育に対する姿勢や思いそのものが保護者支援、子育て支援に繋がっていると考えることもできた。
毎日保育実践を積み重ねることや、日々のコミュニケーション、ツールの中で子どもの様子の伝達等は、経験の有無に関わらず保護者に支援の意欲を示す機会である。
すなわち、子育て経験のない新任保育士にも子育て支援はできるということである。
冒頭でも述べたように、ニーズに視点を置けば支援の方向性が見えてくるものだ。
保護者が保育者に求めているのは保育である。
本稿は新任保育士でも可能な支援方法について考察したが、策定する過程で子育て支援の制度的知識の理解を深める必要があると自分自身の課題を再認識した。
子どもの最善の利益に考慮し保育士としての専門性を向上させられるよう、今後は更に子育て支援の内容やプロセスについて実践的に理解し、専門知識や技術を身につけていきたいと思う。

4.謝辞

 本稿は埼玉福祉保育医療専門学校 保育士科 夜間主コース 選択ゼミの活動の中で行われたものです。策定するにあたり多くの方々にご協力頂きました。
本稿の策定を遂行するにあたり豊富な経験と知識の下、熱心なご指導と丁寧なご助言を頂き、保育士科上条友葉先生に深く感謝すると共に厚く御礼申し上げます。
 また、本稿の趣旨を理解し、快くインタビューに協力していただいた調査対象者の方に深く感謝いたします。 専門士課程 2 年間共に励まし合いながら過ごすことのできたゼミの皆様に深く感謝いたします。 本当にありがとうございました。

5.参考⽂献一覧

(1)二宮祐子 2018 年 子育て支援-15のストーリーで学ぶワークブック-萌文書林P.ixP13
(2)汐見稔幸 2017 年 イラストたっぷりやさしく読み解く保育所保育指針ハンドブック 学研教育みらい P160

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