就労支援施設における販売促進について

年度 2017
学科 社会福祉士科

1、 はじめに

 私たちは、実習に行った際、課題に感じたことが2つあった。1つ目は実習中就労施設における工賃の低さに疑問をもった。2つ目は就労支援施設で製造された物は美味しいのにも関わらず、地域で知られていないことに疑問を持ち課題にした。そこには広報活動があまり積極的ではないという理由があり、私たちは広報活動に焦点を当てた。

2、 現状把握

 就労継続支援B型事業所の月額の平均と、サンプルとして就労継続支援B型で協力して頂いた、H施設に勤務する利用者Tさんの現在の勤務時間(一日6時間、週5日)を最低賃金で計算した1ヶ月分の給料を比較した。

 B型は少しずつあがってはいるものの、実際に就労継続支援B型で働く利用者の勤務時間が、最低賃金で支払われた場合大きな差があることがわかった。
工賃を上げるための計画として国が実施している、「工賃倍増5か年計画」があるものの、全ての事業所で計画の作成がなされておらず、十分な工賃向上とはなりえていない。
そこで、食品を扱う就労支援B型のK施設・P施設・H施設に協力をお願いした。各事業所の職員に今までの売り上げが変化してきた背景と現在行っている広報活動について伺った。

 上記によりK・P施設は売り上げを上げたいという希望はあったが、広報活動を行って売り上げを上げるという研究と施設の思いが合致しなかったため実施までに至らなかった。K・P施設の現状把握から就労支援施設の人手不足や設備の問題も分かった。売り上げを上げる以前の施設側の体制も見過ごせない問題だと感じた。一方で、H施設は今後も売り上げを上げていきたいとの施設の思いが私たちグループの考えと合致したため、今回、H施設に実施のご協力をお願いした。

3、 仮説

 チラシを配るという広報活動によって、施設の商品が販売している地域に知られ売り上げが上がるのではないかと考えた。

4、 研究方法

① H施設の外部販売のチラシを、販売約一週間前に販売場所付近で配布
その地域の人々に駅前・販売場所付近で手渡し、ポスト投函を実施。

② チラシを配ることの効果を確かめるため、3ヵ月分の売り上げを比較した。

その他:利用者の思いを知らずに利用者の仕事に関与することを疑問に感じたため、私たちのチラシ配りをどのように感じたかというアンケートを行った。

5、 結果

 チラシを見て来店した人数は岩槻(10月)では確認出来なかったため、明確にするため表を作成した。志木は来客12名中2名・世田谷は来客9名中1名という結果であった。また、それぞれの地域で配布し、地域ごとにメンバーが感じたことがあった。

 利用者へのアンケートにより私たちの活動を好意的に感じていたことが明らかになった。こういった学生の活動が利用者の働く意欲を向上させるきっかけになるのではないかと考えた。また、H施設の職員から「今回の研究で、商品が売れるようになり仕事が毎日あることが大事だと思いました。それを維持することが回復の一歩であり、当たり前のように仕事をして帰るという生活リズムを崩さないことが必要だと感じました。」とお聞きし、私たちは売り上だけに固執するのではなく、利用者の仕事を生活の一部としてとらえていくことが必要だと感じた。

6、 考察、まとめ

 売り上げの表から読み取れるようにK店の9~10月の売り上げが上がったことがわかる。また、実施期間が短いため一概には言えないが、その結果からチラシ配りの効果は多少ではあるがあったと考える。しかしR店・D店を見ると売り上げの向上は見られなかったので、チラシ配りはこの2店では効率的ではないと考えた。このことから、売り上げを上げるためには、今後もやり方を変えたSNS等による検証が必要なのではないかと感じた。さらに、K店のチラシ配りで感じたように、販売する場所が地域にとって馴染みのある場所であることから売り上げに繋がったと思われる。一方、R店・D店はお店の認知度が低い事が結果として表れたため、まずはお店自体の認知度を上げる必要性があると感じられた。
 認知度を上げるためにグループ内で話し合った結果、3つの方法が出た。1つ目は、その地域ごとに合わせた広報活動を考えるとともに、今後もチラシ配りを根気強く続ける事。今回の研究の反省点として、特にD店・R店では時間の関係上広範囲に手渡しでチラシを配布する事ができなかった。そのため、直接反応を見られる手渡しでのチラシ配りがより効果的だと考えた。今後その方法をとるのであれば外部の資源であるボランティアを活用していければ良いという意見がでた。2つ目は、公式に発信されたHPや掲示板、パンフレットなどを使用する方法である。その理由は、SNSのように不特定多数の人が掲載する情報よりも、当事者自身から発信される正しい情報がふさわしいと考えたためである。3つ目は、K施設やP施設のように複雑な施設の事情があるが、職員があきらめずに行動を起こすことがあげられた。例えば、地域のイベントや外部販売で出店できるように、職員自ら商品を売り込んでいく事を考えた。また、それはK・P施設で見られた人手不足や設備問題の解消を目指す姿勢と共通するのではないだろうか。職員が行政に現場の課題を訴えていくことでこの問題が緩和していくことが必要である。職員が設備や人手不足の問題に対して諦めてしまっている事や、行政の歩み寄ろうという意思が伝わらないことを今回の研究で感じた。実際、補助金が足りていない事や法律また設備の問題に対しては施設側だけでは対応出来ず、この状況が続くと解決しないように思われる。お互いに課題に対して向き合う姿勢が必要だと話し合い、この役割は今後私たちが担っていくべきだと考えている。

厚生労働省HP 障害者の就労支援対策の状況
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html

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