保育士不足による保育士への影響について

年度 2017
学科 保育士科 夜間主コース

1.はじめに

 近年、待機児童解消が国の課題となっているが、待機児童対策に伴い保育士不足も問題となっている。私達は保育実習を通して、保育士の目が行き届いていない時に十分な保育ができていないと感じた。本研究では、現場の保育士がどんな時に人手が不足していると感じ、どのように工夫しているのか、また保育士不足解消のために国や市町村で行っていることを調べ、どんな制度があったら良いのかなどを考察し、今後の現場で役立てていきたい。

2.現状把握

 厚生労働省のデータでは、ほとんどの都道府県で保育士の求人倍率が1.0倍を超えており、全国的に保育士不足であることが分かる。保育士不足の最大の理由として、「早期離職率が高く定着率が悪い」ことがあげられ、その具体的な理由として、命を預かる責任の重大さ、残業や早番など拘束時間の長さ、賃金が希望と合わない、休暇を取りにくいなどがあげられる。また、保育士資格保有者の半数近くが保育所以外に就職していることなどから、保育士の現場がいかに大変で、復職したいと考える保育士が少ないということが分かる。厚生労働省は、待機児童の解消を目指す「待機児童解消加速化プラン」の確実な実施のため、保育士確保に向けての「保育士確保プラン」を策定、保育士試験の年2回実施の推進、保育士に対する処遇改善や就職・再就職支援などを実施している。また、従来の保育士確保施策についても人材育成・就業継続支援・再就職支援・働く職場の環境改善を「4本の柱」とし、引き続き確実に実施するとともに、保育士確保に関する関係機関などの連携強化や施策に関する普及啓発を積極的に行うなど、更なる推進を図り、必要数の保育士確保にむけ取り組んでいる。

3.仮説

 保育園で働く社員の割合として正社員よりもパートタイムの方が多いのではないか。
また正社員とパートタイムの人数の割合によって、特定の保育者の業務が増え、負担に繋がっているのではないか。

4.研究対象

(1) 研究対象
保育園で働く保育士を対象とする。
(2) 研究方法
保育園へのアンケート及びインタビュー

5.研究結果

① アンケートに回答していただいた保育士の雇用形態について
8割が正社員で2割がパートタイムである。
② アンケートに回答していただいた保育園の正社員とパートタイムの割合について
8割の園は、パートタイムが大半を占めていた。
2割の園は、正社員が多い結果になった。
※この結果から分かることは、現在の保育の労働環境はパートタイムによって支えられていることが上げられる。
③ 正社員とパートタイムで業務内容に違いがあるかについて
②の質問でパートタイムが多い園では、業務内容がほぼ同じという結果になった。
②の質問で正社員が多い園では、業務内容が異なっており書類系の業務内容
(月案・週案・出席簿など)を正社員が行っているという結果になった。
また、正社員は基本的に毎日出勤し、土曜日も利用者に応じて出勤するという違いが見られた。
④ 国の「児童福祉施設最低基準」によって定められている保育士の配置において
現場の保育士の配置人数は足りているかについて
・アンケートにご協力いただいた2割の園が「はい」と答えた。
※小規模の園では0歳児は子ども3名に対して保育士1名で、1歳児は子ども4名 に対して保育士1名で、2歳児は子ども6名に対して保育士1名の配置になって おり、常に4人の職員がいるという結果になった。 また、他の園では、0と1歳児は保育士3名で、2と3歳児は保育士2名の配置 になっているという結果になった。
・アンケートにご協力いただいた8割の園が「いいえ」と答えた。
※補助の保育士が各クラス(若しくは学年)に1人は欲しいという結果になった。 現時点で工夫している点として、パートタイムや未就園児担当の保育士が保育園の行事や保育補助に入っているということが上げられる。 また、動きの激しい子や月齢が低く身支度等、手のかかる子が多いときに保育士 が不足していると感じ、職員間で声を掛け合って事故や怪我が起こらないように 気を付けながら、主活動においても保育士と子どもの人数のバランスを考慮した上で選んでいるという結果になった。

6.考察

 保育園に勤務している保育士へのアンケート及びインタビューを行った結果、現在の保育の労働環境はパートタイムによって支えられており、業務内容も正社員とほとんど変わらないことが分かった。また、手のかかる子どもが多い場面での保育士不足の影響がある中で、職員間の連携やコミュニケーションを密にすることで、一人ひとりの子どもの安全に気を付けながら、業務していることが示唆される。
 パートタイムで働く保育士が正社員と同等の業務内容を求められている現状があり、パートタイム勤務の保育士は家庭を持つ母親が多い為、日中は保育士の人数が足りているが遅い時間帯になると、正社員の負担が大きくなることが上げられる。また、パートタイムの保育士の業務が増え、負担に繋がっている部分はあるが職員間の連携によって一人ひとりの負担を軽減しながら保育を行っていることが考えられる。

7.まとめ

 今回の研究を通して、正社員とパートタイム、業務内容がほとんど変わらないにもかかわらず、正社員になろうとする人がなぜ少ないのか疑問に感じた。そこから拘束時間にしばられてしまう正社員に対して子どもを持つ保育士は避けてしまうのではないか。また、パートタイムが多いことで正社員の負担が増えて早期離職率に繋がることで、環境が変わるなど子どもへの影響も考えられる。
 保育士不足が問題になっており「保育士確保プラン」によって処遇改善や再就職支援など実施して保育士確保に推進しているが、保育士としての質が問題になるのではないかと考える。
 現在、都心部にかけて保育士が足りていない現状がある中で、4・5年後には需要と供給が逆転するといわれており、ただ単に保育士を確保するのではなく、それぞれの園の特色に合わせた保育士を確保し、園の特色を作り出していくことが大事だと考える。
 保育士の質を向上させることで、子どもに対しても満足のいく保育が行えると思う。

8.<引用文献・参考文献>

厚生労働省 保育分野における人材不足の現状

厚生労働省 保育士確保

厚生労働省 保育士確保プラン

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