箸と手指の発達の関連性について ー ~箸を使用し始める適切なタイミングを考える~ ー

年度 2017
学科 こども福祉科II部

1. はじめに

 実習先の園で主にスプーンとフォークを使用して食事をする子ども、トレーニング箸を使用して食事をする子どもの様子を観察したが、正しく箸を使用して食事をする子どもが少ないと感じた。一般的に小学校入学前に箸が使用できるようになることが望ましいとされているため、箸を使用し始める年齢の目安は2歳から5歳と知られているが手指の発達状態は子どもにより異なる。そのため、手指の発達が未熟なままで箸又はトレーニング箸を使用している子どもに正しい箸の持ち方が身に付くのであろうかと疑問に感じた。
 そこで、子ども一人ひとりの「手指の発達に合わせた箸を使用し始める時期」について調査することにした

2.現状把握

 京都府立大(平成25年)の研究によると、手指の微細運動機能は3~5歳に発達が認められる。この時期に箸の操作も上達すると考えられており、手指の発達には幼少期の遊びが関係していることがわかっている。平成26年度の卒業研究のアンケート結果からトレーニング箸を使用している家庭は65%あるという結果が出ているが、トレーニング箸は手指が未発達でも使える道具であるため通常の箸が使えるようになるには更に手指の発達が必要である。
 また、幼児期に箸を正しく使えるようにすることは、その後の正しい鉛筆の持ち方にも繋がる。しかし、近年箸が正しく使える人は年々減少していると言われている。京都府立大(平成25年)の研究によると30~50代で正しく箸を使用できているのは30%台であり「正しく箸を使う」という意識が低下していることから、保護者から子どもへ正しい箸の使い方を教えられていない家庭が多い。

3.仮説

1) 手指を使用した遊びを行うことで、箸を使用するための指先の発達を促すことができる。
2) 食への興味を深めることで、箸を使用する意欲が高まる。
3) 手指の発達状況に合わせて箸を使用し始めることで、その後の正しい箸の持ち方にも繋がる。

4.研究方法

●研究対象
 埼玉県坂戸市の保育園に通園している3歳~6歳38名、保護者及び保育者
 埼玉県さいたま市の児童養護施設職員
 埼玉福祉・保育専門学校職員
●実施期間
 平成29年10月2日~12月4日  毎日10分程度
●実施内容
1) 毎日の保育活動時間に以下の遊びを10分程度行い、手指の発達状況の変化を記録する。
・折り紙→巧緻性、集中力を養う
・紐通し→手指の巧緻性、集中力を養う
・魚釣り→手首、腕の筋肉を使用する
・コマ回し→巧緻性、集中力を養う
・あやとり→手指の巧緻性、集中力を養う
・ちぎり絵→手指の運動の協応動作能力を養う
2) 箸の持ち方についての絵本の読み聞かせを行い、子どもたちの興味・関心について観察する。
3) 保護者、保育者へのアンケート調査(各家庭での箸の使用状況)を行う。

5.研究結果

1) 手指を使用した遊びの実践
箸の持ち方に変化が見られた子どもはいなかったが、本を見ながら折り紙の難しい折り方に挑戦する子どもがいた。
2) 絵本を使用して食への興味・関心を持たせる
食への興味・関心に変化が見られた子どもはいなかった。
3)保護者、保育者へのアンケート調査(対象:0~6歳児の保護者35名)
Q1.箸又はトレーニング箸を使用して食事をしていますか。
はい-32人、いいえ-2人、 両方使用する-1人

6.考察

 フィールドワークを行った結果、手指を使用した遊びを行ったことで箸の使い方に変化が見られた子どもはいなかった。この結果から、手指の発達を促すための遊びを行う期間が短い、又は行う遊びが適切ではなかったという理由が考えられる。
 フィールドワークを行った保育園では、箸を使用し始めるタイミングは子どもの発達状態に合わせて保育士が判断していた。手指の発達が未熟な子どもが箸を使いたがっていても家庭で使用しないように保護者に伝えており、適切なタイミング(スプーンの鉛筆持ちができるようになったら)で箸を使用し始めることで、「小学校就学前に約9割の子どもが正しく箸を使用している」という実績に繋がっているようだ。また、アンケート調査の結果からトレーニング箸を使用している家庭は28%であり、トレーニング箸の使用が直接的に箸の正しい持ち方に繋がっているとは考えづらい。
 この保育園では箸を使用することは生活習慣の一部になっていたため、絵本の読み聞かせを行うことによる食への興味・関心の目立った変化は見られなかった。しかし、箸を使用しないで食事をしている子どもを対象に行うことで変化が見られるのではないかと考えられる。
 「箸の使用を褒められたことで子どもがトレーニング箸から通常の箸を使用するようになった」や「箸を使用することに飽きてしまうと箸で遊び始めてしまう」というアンケート結果から、子どもが継続してトレーニングを行うためには子どものやる気を引き出すサポートを大人が行うことが重要であると考えられる。

7.まとめ

 手指の発達が未熟なままでトレーニング箸を使用し始めると、「指が固定され食べることが嫌いになる」「トレーニング箸に慣れてしまい通常の箸の力加減がわからない」といったデメリットがある事が分かった。効率よく正しい箸の持ち方を身に付けるためには「鉛筆持ちができるようになってから」箸を使用し始めるのが適切なタイミングである。年上の兄弟がいる家庭では早い時期から箸に興味を持つ子どもが多いことから、手指の発達が未熟な状態でも子どもの食と箸に対する興味と意欲を満たすためのサポートツールとしてトレーニング箸を使用するとよいと感じた。
 また、研究を通して小学生の子どもを持つ保護者の9割以上が「子どもに箸を正しく使ってほしい」と考えており、箸への関心の高さを伺うことができた。しかし「○歳なのに箸が持てない」という不安や、子どもが早く箸を使用し始めることで得られる保護者の安心感のために間違ったタイミングで箸を使用している子どもは少なくない。子ども一人ひとりの発達状態に合わせた適切なタイミングを見分けて保護者と子どもへ必要な支援ができる保育者になりたいと考える。

8.参考文献

・こども福祉科Ⅱ部平成26年度卒業研究
箸の持ち方と手指の動きの関係性について(小林、井川、古田島、鎌田、卯月、磯部、杉岡)
・高橋ひとみ(平成16年)「箸の持ち方」「鉛筆の持ち方」と「姿勢」と「視力」の関連
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001046043
・京都府立大学(平成25年)「幼稚園における箸の持ち方に関する食育活動の実施と評価」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajscs/25/0/25_31/_pdf
・ベネッセ(年月不明)ベネッセ教育総合研究所「調査データクリップ!子どもと教育」(子育て~第3回~)最終アクセス日 平成29年11月23日
http://berd.benesse.jp/berd/data/dataclip/clip0012/index3.html
・日本経済新聞プラスワン(平成24年) その箸の持ち方大丈夫?正しい人は30代でも3割採集アクセス日平成29年11月23日
https://style.nikkei.com/article/DGXDZO46373710R20C12A9W03201/
・ベネッセ教育情報サイト(平成24年) 小学生を持つ保護者の9割以上が「箸を正しく使ってほしい」実態は? 最終アクセス日平成29年11月23日
http://benesse.jp/kosodate/201408/20140808-3.html

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