終活を行うことによる気持ちの変化

年度 2016
学科 介護福祉士科

1.はじめに

昨今、雑誌の編集者により、人生の終わりをより良いものとするため、事前に準備を行うことを意味する「終活」という言葉が造られ、言葉や概念が一般化しつつある。
「終活」をすることにより、本人の死後に遺族に問題が起こりにくい、生前の本人も安心するなどのメリットは耳にするものの、実際にどのような効果があるのかについては詳細な検討がなされていない。
したがって本研究では、「終活」を行うことによる本人および家族の気持ちの変化を明らかにする。

2.仮説

若年者から高齢者における「終活」についての認知度や実施状況を把握した上で、実際に「終活」経験のない人に対して、「終活」のひとつである「エンディングノート」を作成してもらい、前後の気持ちの変化を明らかにする。「終活」をすることで本人、家族共に今後に対する不安の軽減といった気持ちの変化が見られるのではないか。

3.研究方法

1)アンケートによる「終活」の認知度と実施割合の調査
①対象:福祉を学ぶ学生(143 名)、介護施設で働いている職員(55 名)、介護施設利用者(36 名)、老人クラブの利用者(30 名)
②実施期間:2016 年 6 月下旬~9 月上旬
③手続き:「終活」を知っているか、行っているかについてのアンケートを実施

2)「終活」の実施
①対象:「終活」経験のないメンバーの身内(2 名)
K.R 様 48 歳 女性 家族と同居 健常者(メンバーの母親)
K.S 様 76 歳 男性 独居 健常者(メンバーの祖父)
②実施期間:2016 年 10 月上旬~10 月下旬
③手続き:終末期に備えて自身の希望を記載する「エンディングノート」を作成してもらい、アンケートにより、その前後の気持ちの変化を明らかにした。なお、「エンディングノート」は池田書店の「もしものときの安心メモリー帖」を使用した。

4.結果

1)アンケートによる「終活」の認知度と実施割合の調査
「終活という言葉を知っていますか」という質問に対して、「はい」と答えた若年者は 77%
(152 名)であり、高齢者は 53%(35 名)であった(図 1)。
「終活を行っていますか」という質問に対して、「はい」と答えた若年者は 5%(10 名)であり、高齢者は 27%(48 名)であった(図 2)。中には「終活」という言葉を知らなくても「終活」を行っている人がいた。
また、「終活」を行うことによるメリットについては「家族に自分の思いを伝えられる」、「気が楽になった」、「家族に迷惑をかけない」等が挙げられた。

2)「終活」の実施
2 名を対象に「エンディングノート」を作成してもらい、実施前後の気持ちの変化を調査した結果は表 1 の通りであった。

5.考察

アンケートにおいて、若年者は「終活」という言葉を知っている割合が高かったが、「終活」を行っている割合は非常に低かった。若年者は「死」に対しての実感が湧きにくいため、「終活」を行わないのだろう。
高齢者は「終活」という言葉を知っている割合は若年者よりも低かったにも関わらず、「終活」を行っている割合は若年者よりも高かった。それは若年者よりも「死」に対する不安や実感が高まり、自分のため、周りのために「終活」を行おうと思うからではないだろうか。
エンディングノートの実施前後で、76 歳の男性では心の整理が若干できたという意見が得られたが、2 名ともに大きな気持ちの変化は見られなかった。
このことは、今回の「エンディングノート」の作成は、研究への参加で受動的に行ったものであり、自発的に行ったものではなかったことが要因の一つと考えられる。「エンディングノート」での「終活」は、本人が必要性を感じ、自発的に行うことで、初めて不安の払拭や安心感の生起といった気持ちの変化が明確に生じるものであることが考えられる。さらに、76 歳の男性では多少の気持ちの変化が見られたのに対して、48 歳の女性の結果については、全く気持ちの変化は見られなかったことは、自発性に加えて、年齢による影響を示しているといえよう。一方、家族の気持ちについては、2 名の対象者ともに、「エンディングノート」を作成したことで、もしものときに「安心」であることや「本人の気持ちを尊重できる」といった肯定的な捉え方をしていることが明らかとなり、家族にとってのエンディングノートの有効性が示唆された。
今回は「終活」を「エンディングノート」に特化してその効果の検証を行ったが、より本人にとって今を安心して思い切り生きることができる他の方法があるのかもしれない。今後はその可能性についても検討していきたい。

6.まとめ

今回の研究では、アンケートにおいて、若年者は「終活」という言葉を知っていても「終活」を行っている人は少なかった。それに対して高齢者は「終活」という言葉を知らなくても「終活」を行っている人が多かった。
「エンディングノート」の作成では 2 名の対象者において大きな気持ちの変化は見られなかった。しかし、その家族においては「安心感」などが生じたことがわかった。「終活」は様々な種類がある為、一人ひとりに合った方法を選ぶことでより多くの変化、効果が見られると思われる。加えて、対象者の「終活」への自発性の面も考慮するべきだろう。

7.参考文献

「もしものときの安心メモリー帖」 佐々木悦子・監 池田書店

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