幼児との関わりは高齢者の方にどのような効果があるのか

年度 2016
学科 介護福祉士科

1. はじめに

私たちは電車やバスの中、レストランなどで幼児を見て高齢者が笑顔になっている場面を目にすることがある。しかし 3 回の実習を通し、高齢者施設において幼児と利用者が関わる場面を殆ど見たことがなく、幼児との関わりが高齢者の方にどのような変化をもたらすのかを知りたいと思った。
林谷氏の文献では、「身体的接触を伴う保育的ボランティアが高齢者の生きがい対策に意義がある」ということや、「障害を持つ人も一緒にいるという環境は、障害を特別視するのではなく共に社会で生きることが普通なのだ」とされている。先行研究を調べる中で、幼児と関わったことで高齢者の表情が豊かになることや、行動に変化がでることがわかった。その為、幼児を意図的に利用者と関わる機会を設定することで、利用者の主体的・積極的な行動を誘発することが出来るのではないかと考え研究を行った。

2. 現状把握

国民生活白書より、親世代と既婚の子供世帯の同居率の推移では、1980 年に 52.5%だったものが、2004 年は 23.2%と減少してきている。一方で、厚生労働省から平成 27 年版(2015 年版)となる「国民生活基礎調査の概況」の一人暮らし又は夫婦のみ世帯は 1980 年 21.7%だったものが、2004 年では 36.2%と上昇している。
核家族化が進むなかで、高齢者と幼児との接点が少なく、一方で高齢者世帯・高齢者単独世帯が増えてきているということが、社会全体からみてもうかがえる。

3. 仮説

利用者が幼児と接することにより、表情や行動に主体的・積極的な変化が見られるのではないか。

4. 研究方法

託児室を併設している介護老人保健施設に研究協力を得て、以下のフィールドワークを実施した。

1.対象施設
高齢者施設(介護老人保健施設 S)

2.対象利用者
K さん(男性 82 歳)アルツハイマー型認知症
普段施設内では、1階のフロアに行くなど行動範囲が広く、自由に過ごされている。
他の利用者の居室に出入りしたり、トイレではないところで排尿してしまったりすることがある。

3.実施期間
平成 28 年 10 月 3 日~11 月 6 日までの中で実施(ショートステイ中の 30 日間)

4.実施内容
・対象利用者のアセスメント
・対象利用者と幼児の関わりを含めた個別援助計画の作成
・利用者と幼児の関わる場面をビデオ撮影
・利用者の表情をフェイススケールで評価

5.倫理的配慮 研究結果や収集したデーターは外部に漏れないようにし、研究施設や研究対象者が特定されないよう、施設名や研究対象者氏名はイニシャルにした。なお、研究対象者家族に事前に説明し、同意を得た。

5. 研究結果

幼児が K さんの誘導に関わった各場面について、K さんの表情を評価した結果が以下の通りである。

今回は排泄や入浴、食事時の誘導をほぼ決められた時間に幼児と関わる場面の導入を行っており、K さん自身の1日の流れに沿ったものではなかったため、行動の制限を感じさせてしまったり、K さんの気分にのらないタイミングであったりした可能性がある。午前中の朝食や昼食の後の排泄誘導時は比較的笑顔が見られたが、15時のおやつ後の排泄誘導時は普通の表情の時が多い。K さんは食事時の集中力が低下しているために介入が必要と判断しているとのことだったが、日ごろの運動量が多いためか、食事は全量以上の摂取をされていた。午後はおやつを2~3個を召し上がっていることが多く、運動量に対して物足りないようだった。そのため、15時の排泄時の表情については、幼児との関わりが要因ではなく空腹が満たされないために笑顔が少ない結果がでたのではないかとも考えられる。
一方で今回のフィールドワーク中に、施設のペースで行うのではなく K さんのペースに合わせた自由な時間に幼児の介入を行ったところ、笑顔を継続している時間が比較的長く平均で124秒であった。

6. 考察

今回の研究によって、利用者の生活をより良くすることを目的に幼児との関わりをより効果的に導入するためには、生活のペースを利用者に合わせることが良いのではないかという結果が出た。施設のペースに合わせた生活は管理がしやすく規則正しい生活になる反面、利用者の主体性を発揮できず、また時間や生活習慣を施設に合わせなければいけないところにストレスを感じさせてしまう可能性がある。自分のペースで生活をすることは利用者の主体性を引き出すきっかけとなり、またそのことが利用者の尊厳や自尊心を支えることに繋がると考えられる。

7. まとめ

今回の研究では、幼児との関わりの場面において K さんの表情や言動に特別な変化は殆ど確認出来なかった。対象者が K さん 1 人だったこと、1 ヶ月という短い期間での記録だったこと等を考えると一概に効果があると決めつけることは出来ない。
幼児と関わることでの高齢者のメリットは、役割の復権(生きがい)、存在価値、意欲の向上、刺激(メリハリ)などが考えられる。一方で幼児にとって高齢者と関わることで、しつけ(礼儀・作法)、知識教育、情緒(いたわる気持ちを学ぶ)など互いのメリットがあると考えられる。今後はより詳細な記録をとるためにも幼児と関わる高齢者の条件を広げ、性別・年齢・生活歴・疾患等さまざまな視点から研究を行うことが必要だと思われる。

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