ケアラーへの支援

年度 2016
学科 社会福祉士科

1.はじめに

私たちは実習で地域包括支援センターや居宅介護支援事業所で介護者家族からお話を伺う機会があり、そこで介護者家族が様々な不安を抱えていることが分かった。そこで介護者家族に視点を置き研究を進めることとした。

2.現状把握

インターネットや地域包括支援センターへのインタビューを通して介護者家族を支援する団体 を探したところ、大宮近辺に 8 箇所の介護者サロンがあった。介護者サロンとは、現在介護を行っている方や介護を卒業した方、介護に興味のある方などを対象に開かれており、日々の悩みや想いを気軽に語り合える場である。
介護者サロンを調べた中で、埼玉福祉専門学校の教室を使用し開かれている介護者サロン「だん・だん」をみつけた。そこで、だん・だんに参加しお話を伺った。サロンを運営しているスタッフも元々介護経験者であったり、現在も介護を行っている方がほとんどである。 サロンの参加者の一人であるkさんは、認知症の奥様の介護を 25 年間やり遂げ、二年前に奥様を亡くされた。その後は、奥様の介護をしていた時の経験を資料にまとめ、認知症の進行や奥様との生活を介護者サロンで話されていた。 k さんのように、介護後もサロンに足を運ぶことで気持ちの整理をつけている方もいた。
しかし、だん・だんの年間訪問者数は約300人程度で、そのうち介護を終えた方は全体の1割程度だった。介護をしていた時期に頻繁にだん・だんへ足を運んでいた方が、介護が終わった後は来なくなってしまった。しばらくしてその方がだん・だんへ顔を出しにきた際に、「亡くなってからも大変だった。」「誰も認めてくれなくて、私の気持ちを分かってくれない。」「もっと何かしてあげられたのではないか。」と介護が終わった後の悩みや苦しみを打ち明けた。また、介護を終えた後も、だん・だんで話を聞いてもらいたいと思ってはいたが、まだ介護をしている方がいる中で私が終わった話をするのは申し訳ないという思いから来ることが出来なかった方もいた。
だん・だんのスタッフは「介護中の方はもちろん、終えた方にも来てほしい。」という思いがあ り、そのことを介護を終えた方に伝えた。そしてだん・だんのチラシの内容を「現在介護中の方、介護に関心のある方」という文章に「介護が終わった方」も新しく加えた。しかし、介護を終えた後も参加して良いという認識が低く、まだまだ参加者が少ないのが現状である。
大宮近辺の介護者サロンにもお話を伺ったところ、どのサロンも「介護中の方」を大きく謳っているもので、開催日や時間なども介護を行っている方が参加しやすいように設定されていた。また、介護を終えた方は対象としていないサロンもみられた。このことからも介護を終えた方への注目度が低いことが分かる。
現在介護中の方にはサロンやケアマネージャーがついている場合が多く、介護者家族へのサポートの重要性も注目されてきているが、介護を終えた方を主とした支援は少ないよう感じた。介護中の方への支援が増えている中で、現状として介護を終えた方への支援は薄いのではないかと思い、介護を終えた方の支援に着目し、研究を進めていくこととした。

3.問題提起

私たちが介護者サロンだん・だんに参加した際の参加者数は以下の通りである。

介護を卒業した後も不安や喪失感が残り悩んでいる方もいるが、サロンへ足を運ぶ方は少ない。また介護を終えた方をサポートする介護者サロンなどがあってもそのような活動があることを知らず、参加者が少ない。
参加したいと思っていても行きづらい。

4.仮説

サロンを知ってもらうことで参加者を増やすことができるのではないか。
また、参加したいと思っているがなかなか踏み出せないという方が、私たちがイベントを企画し、それをきっかけとしてその後来やすくなるのではないか。
介護を終えた方でも参加できることを知ってもらうことで、介護を終えた方の参加者が増えるのではないか。

5.研究方法

介護者サロンだん・だんに場所を提供していただき、学生である私たちが主体となりイベントを企画し、実施した。
イベントは 8 月 11 日から 11 月 25 日の期間で5回開催した。
イベント内容は、ハンドマッサージを取り入れた。ハンドマッサージを行う目的としては、相手に触れることでスキンシップが取れ距離が縮まり、また 1 対 1 の空間になることで、落ち着いて詳しい話が出来るのではないかと考えた。
広報活動としては、イベント前に毎回チラシを作成し、地域の自治会や地域包括支援センター、他の介護者サロン、近隣の商店街にチラシを置いてもらい、街頭でもチラシを配布した。

6.研究結果

ハンドマッサージを行うことで、リラックスして話しやすい空間になりより詳しい話を伺うことが出来た。
「1対1で話しやすい」「いつもは家事や介護をする側だから、やってもらえて嬉しい」という声が聞かれた。
今回、参加した11人の中で6人の方が私たちが作成したチラシを地域でみて足を運んでくれた。イベントを行った結果、介護を終えた方のみで支援を考えていくのではなく、介護中の方も同じように支援していくことが必要だと実感した。

7.考察

今回の研究では、介護を終えた方に視点を置き進めてきたが、研究を進めていく中で現在介護を行っている方への支援も重要であると分かった。
サロンに参加し、話を伺う中で現在介護を行っている方から介護に関する悩みや不安が多く語られた。介護中の方も介護を終えた方にとっても、現在抱えている思いや不安を気軽に話せる場としてサロンは必要とされる場所だった。
今回の研究を通し、介護者家族の支援では「現在介護中の方」「介護を終えた方」を区別し考えていくのではなく、総合的に支援していくことが重要であると感じた。
今回イベントを行い、チラシを配布したことにより地域の方の目に触れ、だん・だんの活動を知ってもらえたことは大きな成果だったと思う。

8.まとめ

介護者家族がサロンに参加できない背景には、それぞれ介護者家族によって異なっている。
サロンまで足を運ぶ時間が取れない、はたまたサロンの存在自体知らないといった様々な理由が挙げられる。このことから、介護者家族のニーズに沿った支援が今後求められてくると思う。
しかし、そういったサロンがあることを知っている、またそうしたチラシを持っているだけでも気持ちが楽になる・安心できるといった意見も聞くことができた。
今はサロンへ足を運ぶことが難しくても、いつでも手を差し伸べてくれ、話を聞いてくれる場所があることが分かっているだけでも心の支えになっていることが分かった。
介護を終えた方がサロンへ参加し、現在介護を行っている方と話をすることで、今後の介護の参考になる。また、介護を終えた方も自分の抱えている悩みや想いを打ち明けることで気持ちが楽になることが分かった。
今回の研究では、介護者サロンだん・だんを初め、様々な機関にご協力いただきお話を伺うことで、改めて介護者家族への支援や介護者サロンの重要性を感じる。

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