留学生支援 ~ひとりひとりを大切に~

年度 2016
学科 社会福祉士科

1.はじめに

近頃、アルバイト先の飲食店の常連客や勤務仲間に外国人がいることで外国人と関わる機会が増えたと感じている。また、私達自身が海外研修で日本とアメリカとの食文化や価値観、生活環境の違いに戸惑うことが多くあった。そこで、外国人が日本で生活するにあたり育ってきた環境の違いによって戸惑うことや困ることがあるのではないかと思い、調査を開始した。調査を進める過程で、現在日本が積極的に留学生を受け入れていること、埼玉福祉専門学校でも来年度以降の留学生の受け入れを検討していることを知った。今後も留学生の増加が予想されること、また私達自身も彼らと同じ学生であることから留学生を対象に研究を進めようと決めた。

2.現状把握

在日外国人の数を統計として見ると、2007 年の 206 万 9065 人に対し、2015 年には 217 万 2832と八年間の間に約 10 万人増加しているのが分かる。その中でも留学生の数は 2011 年に 18 万 8605人だったのが 22 万 6131 人と約4万人増加していることが分かった。(法務省調査より)
これらの情報を踏まえて、次のような情報収集を行った。

ここまでの調査の中で、留学生の持つ悩みは生活している環境やその人自身の性格により様々であることがわかった。留学生も日本人学生も抱える悩みに共通点は無く研究対象として絞り込む事が出来なかった。研究が行き詰る中、埼玉ベルエポック製菓調理専門学校に在籍する留学生 4 名に対してインタビューを行った。すると全員から「日本人との人間関係がうまくいかない」との話が出た。日本人との関わりについて詳しく話を伺うと、「日本人は表情と実際の感情が違ってわからない」「生活の違いから話が合わない」などが挙げられた。同時に「日本人の友達が欲しい」という意見も多く、それらに対し学校側に対応を伺うと、クラスの担任が行う個別対応がメインになっており、日本人との交流に対するフォローアップ体制は確立されていないことが分かった。4名は日本人との関わりにおいてストレスを感じていて、転科をしたり、陰口に悩んだり、特にクラス内での関係が負担となっていることが分かった。その中でもAさん(女性)は日本での人間関係に疲れたため、卒業後は帰国して少し休みたいとまで話していた。

3.問題提起

留学生の学校生活上のニーズに合わせた支援が不足している為に、留学生が抱える問題の解決が困難になっているのではないか。

4.仮説

学科ごとの特性を考慮した支援や、先生とのしっかりとした関係構築があれば、留学生は本来やりたかったことを達成し、満足感を得られるのではないか。

5.研究方法

①ベルエポック製菓調理専門学校パティシエ科/カフェ科の生徒各6名(ランダム選出)と担任の先生にアンケートを行い、身近な他者から見た留学生像を調査する。
②再び留学生と対談を行い、本人と他者とが感じる認識の違いを明らかにする。

6.研究結果

①パティシエ科
・授業外で留学生と話をすると答えた学生は 4 名だった。世間話や食事、授業についての質問が主、とのこと。しないという学生は会話をする機会がないと答えていた。
・留学生はクラスでは皆と変わらず過ごしていると全員が回答した。
・留学生に対して肯定的な意見が多く、一緒に学べるのは楽しいという意見もあった。

担任より
・留学生同士のコミュニティが濃くなってしまった為に、担任や日本人学生との関わりが薄くなってしまったのでは?
・日本人学生から見た時、留学生は友人になる対象としての優先度が低い。
・クラスの中で留学生同士仲良くなったので、本人達にも動く気がないように思える。
・最近は就活や友達が出来ないことに対する相談が多い(面談時)

カフェ科
・授業外で留学生と話をすると答えた学生は 2 名。話の内容は授業/バイト/進路について。しないと答えた理由としては話す内容が無いという回答が主だった。
・留学生はクラスでは静かで、大人しいと5名が回答した。
・入学時にクラスに留学生がいることを知っていた学生は 2 名のみであった。
・その他の項目では留学生に対する肯定的な意見が目立った。

担任より
・学科ごとに集まりやすい年齢や性別の傾向があり、留学生への支援もそれぞれの学科に即して行うべき。担任同士の対応共有も必要。
・カフェ科の留学生はどちらかといえばクラスに受け入れられているように見え、過ごしにくそうな様子は見られない。
・留学生同士で話す方が気が楽だからか、担任にはあまり頼ってこようとはしない。担任に話したところで学校が変わってくれるわけではないと思っているよう。

②「日本人がいいと思っていることと、留学生の感じ方は違う。『これなら分かるだろう』『これらい知ってるはず』といった憶測で話を進めるから、確認をしてほしいし、違うなら違うと言ってくれなければ分からない。色々な性格の人がいるのは分かるけれど、ちゃんと嫌いなら嫌いといってほしい。何かしただろうかと気を遣ってしまい疲れる。」
「自分がやりたいと思う事と、先生が言う事が違う事に戸惑う。でもうまく言葉に出来ないから、嫌になってしまう。納得出来ないのに先に進むから。」
「日本語学校で習う言葉と、実際に使う言葉がすごく違う。だから授業で使う生活の言葉が分からないし、調べようと思っても先に進んでしまって困る。日本人が思ってる以上に私は困っている事を知ってほしい。」

7.考察

この研究を通して、留学生の抱える悩みや問題は様々だが、根底には『人間関係の構築のしづらさ』があるという事が分かった。当初は東京福祉専門学校と連携をして留学生支援を行おうと考えていたが、実習期間の関係や学校間の距離、頻繁に連絡を取り合える環境が無かったことが難航する原因になったと考えられる。また、私達自身が留学生ならではの悩み、という部分に焦点を当ててしまったことで、先入観に捉われ、狭い見方をしてしまい、問題を絞りきる事が出来なかった。
ベルエポック製菓調理専門学校では、私達学生と留学生が頻繁に会える距離に在ったこと、また隣の学校であるという事から先生方とも信頼関係を築く事が可能になり、早期に理解と協力を得られたというのが大きなポイントだった。この事から私達は、留学生支援においては、留学生にとって最も身近な日本人であるクラスメートと担任の先生が重要なキーパーソンであると考える。

8.まとめ

私達はここまでの研究を通して、留学生が抱える困難は程度の違いはあるが私達もぶつかる壁なのではないかということに気が付いた。『友達がなかなか出来ない』『就職先が見付からない』『誰に相談していいのかが分からない』等といった悩みは誰もが一度は経験していると思う。留学生も日本人もライフイベントに伴う不安や楽しく生活したい等の思いは同じなのではないだろうか。
では、同じ壁にぶつかっていながら、その程度に大きな差が出てしまう理由として考えられることは何か。やはりそこには言語や文化、考え方の違いが影響しているのではないか、と考える。伝え方やルール、周囲の環境に上手く馴染めないことが遠慮やさらなる壁を生み出し、結果として「留学生だからこうだろう」「国が違うから分かってもらえないだろう」という思いから、互いに距離を置いてしまっている現状がある。その人が背負っている看板やイメージだけに目を向け、タイプ分けするのではなく、一人一人の性格や特性、考え方を捉えて、その人に適した支援を実践していく個別化の視点が留学生支援にも必要であると学んだ。
また、身近で外国人の姿を見かけた時に、「誰かが助けるだろう」「向こうが話しかけてくれるまで待とう」といった受け身の姿勢ではなく、「話を聞いてみよう」「手伝えることがあるかも」とこちらから積極的に関わる姿勢を見せる事が相互理解に繋がり、新しい発見や学びを得るきっかけとなり、そこから信頼関係が構築されていくのだと気付いた。
日本で生活する外国人が増える中、私達がソーシャルワーカーになった際にも外国人との関わりが不可欠になるだろう。今回の研究を通して学んだひとりひとりを見ていく視点、そして信頼関係の構築の大切さを忘れないようにしたいと思う。

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