避難所における福祉の役割 ~私達に出来ること~

学科 社会福祉士科

1.はじめに

私達は初めに独居高齢者の地域での関わりについて調べていた中で、夜間パトロールに参加した際に地域の方々から「災害時に助けがほしい」という話を伺った。そして、災害時の関わりについて調べていた際、高齢者や障害者が災害時に支援を受けられる福祉避難所を知った。そこで、私達福祉を学ぶ学生が福祉避難所を運営し、災害時の支援ができないか考え研究テーマとした。

2.現状把握

平成 28 年 8 月、9 月の計 3 回、大宮区役所に福祉避難所について話を伺いに行き、防災担当の H さんから一次避難所で受け入れが間に合っている場合、二次避難所や福祉避難所は開所されないことがある事、運営は自治体等に正式に委託しているため、運営自体に学生が入る余地はないとの説明を受けた。しかし一方で、実際の避難所には福祉的配慮の必要の有無に関わらず一緒に過ごしている事、そこで避難してきた人を支援する人材が求められていることを知った。
また、福祉を学んでいる私達でさえ福祉避難所を知らなかったので実際の福祉避難所の認知度はどのくらいなのか疑問に思い、埼玉福祉専門学校の学生と講師の計 298 名を対象に福祉避難所の認知度に関するアンケートを行った。福祉を学び、携わっている方でも「福祉避難所の存在を知らない」と回答し、全体の 85%(298 名中 253 名)に及んだ。この結果から、福祉避難所だけでなく避難所に種類があることや概要についても知られておらず、それぞれの避難所がどういった役割を担っていてどのように活用されているのか知られていない現状が見えた。
また、平成 28 年 10 月 15 日に行われた大宮区の避難所運営防災訓練に参加させて頂き、地域の方々と共に HUG という避難所運営ゲームを体験した。体験している中で、地域の方々は高齢者や障害者等に関する福祉の知識がなかったために効率良く行動することが出来ずに参加者が混乱する場面があった。
平成 28 年 11 月 6 日には熊本地震の際、現地にボランティアへ行った保健師の K さんにインタビューを行い、実際の避難所生活やボランティアの現状についての話を伺った。ボランティアの中には非現実的な状況に気持ちが高ぶってしまい、本来の支援の目的から外れてしまう方がいたとのことだった。実際の避難所で学生が出来ることを尋ねたところ、まずは自分で何が出来るのかを考えること、勝手に行動してはいけないが指示を待っているだけでもいけないということ、自分が出来る事を表明することで「そんなこともお願い出来るのか」と避難者に安心してもらえるから表明してほしい、との回答を得た。

3.問題提起

大宮区避難所運営訓練への参加や大宮区役所の H さん、保健師 K さんへのインタビューから 3 つの問題が挙げられる。
① 地域の方々の福祉に関する知識が乏しく、運営する側になる際に要配慮者に対して適切に対応出来ない場合がある。
② 福祉従事者は職場の支援により避難所に行くことが出来ず、福祉施設以外の避難所に避難してきた要配慮者の人数に対して福祉従事者が足りていないため、適切に対応出来る人材が避難所において不足する。
③ 高齢者や障害者等の要配慮者に関する知識がなくても対応できるようなマニュアル等もなく、当事者同士での支援も知識不足により十分に行えない。

4.仮説

要配慮者に対して支援が出来る福祉従事者や福祉に関する知識がある方が居ない状況で、福祉の知識を補えればボランティアや当事者同士での支援を行うことが出来、避難所で要配慮者が安心して過ごすことが出来ると考えた。
そのため、福祉に関する知識がない方が見ても分かりやすく行動に移しやすいように、避難所の種類や要配慮者の特徴をまとめたガイドブックがあれば、福祉従事者や福祉に関する知識がある方が居ない状況でも要配慮者に対応出来る。そのガイドブックをボランティアや避難者に理解してもらい、自身で考え行動出来るようになれば非日常的な状況でも落ち着いて避難所が運営が出来ると考えられる。

5.研究方法

平成 28 年 11 月 8 日に埼玉福祉専門学校社会福祉士科 3 年生の職業人教育の授業内で社会福祉士科 3 年生と講師の計 28 名を対象に、大宮区の避難所運営訓練で使用していた HUG(避難所運営ゲーム)を用いたグループワークを実施。要配慮者のいる避難所を想定し、場面ごとの動きを考えてもらう。
要配慮者の特徴や避難所の種類をまとめたガイドブック「ボランティアガイドブック」を作成し、4 つのグループに分け、2 つのグループにはガイドブックを渡し、もう一方の 2 つのグループにはガイドブックを渡さずに行い、グループワーク実施後ガイドブックに関するアンケートを行う。ボ ランティアガイドブックの内容としては、①ボランティアをするにあたってのポイントと注意事項、②要配慮者について、③高齢者の特徴と対応方法、④身体障害者の特徴と対応方法、⑤発達障害者の特徴と対応方法、⑥精神障害者の特徴と対応方法、⑦乳幼児の特徴と対応方法、⑧避難所の特徴、を組み込んだものとする。
また、ガイドブックが実際の避難所でボランティアや避難者が使えるものであるかを大宮区役所の防災担当 H さん、熊本地震のボランティアに参加した K さん、さいたま市社会福祉協議会大宮区事務所の N さんに評価していただく。
グループワークでの様子、アンケート、評価からガイドブックによって知識が補え、支援に役立つのか検証する。

HUG とは、避難所運営ゲームの略称で、避難所運営をみんなで考えるためのひとつのアプローチとして静岡県が開発したもの。避難者の年齢や性別、国籍やそれぞれの抱える事情が書かれたカードを、避難所の体育館や教室に見立てた平面図にどれだけ適切に配置できるか、また避難所で起こる様々な出来事にどう対応していくかを疑似体験するゲーム。

6.研究結果

ガイドブックを使用して HUG を行ったグループのアンケートでは、14 名中 8 名が「ガイドブックを活用した」と回答したが、「ガイドブックが役立った」と回答した方は 4 名となった。ガイドブックを使用したグループからは、時間に余裕がなくガイドブックを見る余裕がなかった、ふりがな・イラスト・複数の言語・点字・音声等様々な工夫がされていると良い、持ち運びやすいコンパクトサイズのものが良いといった意見があった。
それに対してガイドブックを使用せずに HUG を行ったグループのアンケートでは、「ガイドブックがなくて不便に感じたか」「ガイドブックが必要だと感じたか」「福祉の知識がない人がガイドブックを見て活用できるか」の全ての項目で 14 名中 14 名が「はい」と回答した。ガイドブックを使用していないグループからは、ガイドブックがあった方が要配慮者の特性が理解できる、高齢者や障害者の居場所の確保が難しいといった意見が挙げられた。
このアンケートの結果から、気軽に持ち歩けるサイズの図や絵を用いたハンドブックへと改良し、ハンドブックが実際の避難所でボランティアや避難者が使えるものであるかを大宮区役所の防災 担当 H さん、熊本地震のボランティアに参加した K さん、さいたま市社会福祉協議会大宮区事務所の N さんに評価していただいた。結果が次のようになる。

① 大宮区役所の防災担当 H さん
・何を目的として何のためにこのハンドブックを作成したのか、前置きが必要。
・各要配慮者を注意する必要がある理由と要配慮者の立場に立った視点があると良い。
・避難所の定義等は各市町村によって異なるため、災害対策基本法を基にすると良い。
・要配慮者の特徴を理解し、適切な対応方法が記載されているため活用出来ると思う。
・時系列に沿ったフローチャートにしてみてはどうか。
② 熊本地震のボランティアに参加した K さん
・持ち物チェックリストを入れたらどうか。
・要配慮者の説明を明確にしたほうが良い。
・配慮が必要な場合やボランティア活動で困ったことがあれば、現地で専門家に相談して指示に従うことという文言があると良い。
・避難所の種類をどのような機能や配慮がある場所なのか具体的に示してはどうか。
③ さいたま市社会福祉協議会大宮区事務所 N さん
平成 28 年 12 月 2 日現在、評価は頂けていません。

7.考察

この研究の結果から、避難所における人手不足や要配慮者に対する知識がないという問題が視覚によるツールによって解消されるものであると分かった。また、ハンドブックの作成を通して伝え方次第で知識がない場合なら尚更伝わり方が変わってしまうことも研究結果から見えた。
私達は「避難所運営」や「ボランティア」という言葉に捉われすぎていたため、研究内容が二転三転してしまい、「災害時に自分たちが出来る事」という本来の目的から外れてしまったと考えられる。「避難所運営」や「ボランティア」に捉われるのではなく、避難者同士、当事者に目を向けて当事者同士で支援し合うためにはどうしたら良いのか、またそのために私達が出来る事を考える必要があった。避難者同士が支援し合えるように要配慮者に関するハンドブックを作成し、避難者同士が支援し合うことによって人手不足も緩和されていくのだと考えた。

8.まとめ

今回の研究を通して、私達も避難所の種類やどのようにして避難所が開所されるのかをインタビュー等を通して知ることが出来た。実際の避難所は想像とは全く異なっていて、考えていたよりも幅広い支援が求められていることも分かった。
インタビューや評価を頂いた方々からは、内容の改善を推奨する声が多くあったものの、「こういったマニュアル等は災害時に役立つと思う」「災害時だけでなく小さな教科書のように普段の勉 強のツールにもなる」という意見を頂いた。福祉に関する知識のない方々に要配慮者の特徴や対応 方法を知ってもらい、要配慮者と関わる際の1 つのツールとして役立って欲しいと考えているため、現在作成しているものを評価を基に改良し、実際の現場で役立たせることが出来ればと考えている。

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