高齢者施設における利用者の自由時間を充実させるために

年度 2016
学科 社会福祉士科

1.はじめに

私たちが高齢者施設で実習を行った際、夜間睡眠以外の時間に多くの利用者が寝ている姿を目にした。職員から「起こして」と言われ起こした際に、利用者から「何かすることがあるの?」と言われた。本来であれば活動可能な利用者が活動することがなく、つまらないからと言って寝てしまっていることに疑問を感じた。また、必要以上に睡眠をとることで招くリスクがあるのではないかと思い研究を進めた。

2.現状把握

私たちは、現状を把握するために学生と施設職員にアンケートを実施した。

I. 私たちが実習に行った施設以外でも自由時間に寝ている利用者がいるのか、実習を経験している在校生(社会福祉士科 68 名、介護福祉士科 95 名、合計 163 名)にアンケートを行った。
※利用者の食事やレクリエーション等の決められた活動のない時間を自由時間と定義した。

II. 施設の現状を知るために2箇所の高齢者施設
(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設)に職員アンケートを実施した。

Ⅲ. 利用者が自由時間についてどう思っているのか 10 名の利用者にインタビューを行った。
・特に興味を持ったプログラムがない ・自由時間に何をしたらいいのかわからない
・いつも同じことをやっている ・やりたいことはあるが出来ていない ・リハビリがしたい
・他利用者と話す・タオルを畳むなどしていれば暇だとは思わない

これらをふまえて、日中寝ていることのリスクについて調べたところ、医学的側面では、筋肉を 使わない寝たきりの姿勢では 1 週間で 10~15%の筋力低下が起こり、3~5 週間で約 50%に筋力が低下するといわれている。その為高齢者は短い期間寝たきりになるだけでも廃用症候群になりやすい。

3.問題提起

アンケートの結果から自由時間に体力温存のために寝ている利用者は起こさなくてよいという ことがわかり、日常生活に充実感を得られていない利用者に問題があることが分かった。そこで、施設・在宅生活を豊かにするための趣味などを継続または、新たな発見に繋がるような活動の提供が必要なのではないかと考えた。

4.仮説

職員が利用者個々のニーズの把握を行い、利用者が興味・関心のある活動を日中行うことにより、体力温存等に必要な時間以上に寝る必要がなくなり QOL の維持もしくは向上になるのではないか。

5.研究方法

はじめに、利用者 10 名にインタビューを行った。インタビュー結果

この利用者インタビューから、利用者の意思を尊重した今後も継続できる内容の企画を考えた。

施設と検討したうえで日中活動がしたいという利用者に対し、特別養護老人ホームは 2 企画(1・4)、介護老人保健施設は 3 企画(1・4・7)を実施した。

6.研究結果

私たちが考えた企画を施設へ持ち込み、職員・利用者から評価を頂いた。
文通・日記、おしゃべり会、パソコン、掃除は企画したが実施まで至らなかった。

7.考察

1. プロフィール帳に関しては、今後の活動提供の参考となる新しい発見があったものの、継続性の低い結果となった。その理由としては、1 人の利用者にインタビューするのは一度きりであり、全員にインタビューをし終えると、それきりになってしまうからである。
2. 英会話については勉強会という形で行ったが、初めて英語に触れる利用者がほとんどで、 短期記憶が難しく数分前に覚えたことを忘れてしまい、英会話のレベルアップまでには至らなかった。一方で英語の歌を新しく覚えることは楽しんでおり、職員からはゲーム感覚で行ってもらうのはどうかという意見もあった。
3. 編み物に関しては「昔やっていた」という理由から、ほぼ毎日行っている利用者が多かっ た。さらに、自由時間に手軽にできることから継続性が高い。

これらの実施を通して、回想法とも言える若いころから趣味としていたことや経験のあることを思い返す活動を行うことが、利用者にとっての楽しみとなり、QOL の維持・向上にも繋がると考えられえる。それに対して職員はそれぞれの利用者の昔に趣味としていたことや経験のあること、もしくは新しく身に付けたいと思っていることをアセスメントし、その現状に沿った活動の提供をすれば「利用者の自由時間を充実させたい」という思いが達成できると考えられる。

8.まとめ

高齢者施設で自由時間に寝ている利用者が多いことが分かったが、その利用者を起こしている職員もいれば、体力温存のために寝かせたままでいる職員もおり、「日中に寝る」ということに対する観点は職員によって様々であった。一方で、日中起きているが日常生活に充実感を得られていない利用者がおり、その利用者の自由時間を充実させたいと職員は思っている事が分かった。
今回私たちは、職員が利用者個々のニーズを把握し、利用者が興味・関心を持てる活動を提供するための、アセスメントを行い、利用者が楽しめる企画を実施した。
高齢者の施設でも対象者の違いによって自由時間の過ごし方、考え方、対応の仕方が大きく異なることが分かった。
今回の研究を通して、職員はプロフィール帳のようなアセスメント要素を含んだ活動の提供を行うと同時に、そのアセスメントを参考とした活動の企画と利用者が活動の継続をすることにより、利用者の自由時間の充実に繋がることが分かった。

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