児童養護施設の子どもの結婚についての意識をはっきりしたものにするには

年度 2016
学科 こども福祉科

1. はじめに

私たちは実習や授業を通し、児童養護施設の子ども達の生活は一般的な家庭の子ども達の生活と異なるため、両親や兄弟などに関わる機会が少ないことを学んだ。また、児童養護施設の子ども達の課題をインターネットで調べているうちに児童養護施設出身者の離婚率が高いということを知った。それらを踏まえ、児童養護施設の子ども達は施設で生活している間や、自立した後も結婚についての意識はあいまいなものではないかと考えた。
これらのことから、児童養護施設で生活している高校生に結婚についての法律や制度、一般常識などを詳しく学んでもらうことで、結婚についての意識をはっきりとしたものへとすることができるのではないかと思い、この研究を行うことにした。

2. 現状把握

児童養護施設の出身者は一般の人と比べて離婚しやすいのではないかと考えた。私たちは児童養護施設出身者の離婚率を調べたが、先行調査を見出すことができなかった。しかし、最終学歴と離婚率には関連性があることが分かった。平成 26 年度の厚生労働省児童福祉局家庭福祉課の調べによると、児童養護施設の高校生の進学率は、大学は 11.4%、専修学校等は 11.2%である。旺文社教育情報センターの調べによると全国の大学・短大進学率は 53.9%、専門学校進学率は 17%である。また、日本家族学会による第 2 回全国家族調査をみると、離婚率は中学校卒の男性 9.1%、女性12.1%、高校中退では、男性 7.5%、女性 19.4%、短大・高専卒では男性 3.6%、女性 4.1%、大学卒では女性 3.5%、男性 2.0%、女性 3.5%と最終学歴が低いほど離婚率は高い傾向がある。2 つの調査から考えられることとして、児童養護施出身者は一般家庭で育った人に比べて学歴が低く、学歴が低い人の離婚率が高いことから、児童養護施設出身者は離婚率が高いと考えられるのではないか。

私たちは児童養護施設を卒園した 2 人の方と電話で話をし、結婚をする前と結婚をしてからの結婚観の違い、育ってきた環境で現在何か影響はあるかを聞いた。A さんは「結婚について学ぶ機会がなかったから、施設で暮らしている時に誰かに教えて貰えたら、今とても助かっていると思う」「いろいろあったけど、人のせいや環境のせいにはしたくない」と答えた。B さんは「施設を出てから現在まで毎日が忙しかったので結婚は考えていなかった」「社会のルールがわからないから壁にあたった」と答えた。2 人の話に共通していることは、施設にいる間に結婚に関して学ぶ機会がなかった、ある程度の年齢まで結婚という意識は全くなかった、ということが挙げられる。
また、3 つの児童養護施設で生活している高校生 42 人に結婚に関するアンケートを実施した。結果、将来結婚をしたいと思っている高校生は 79%であり、結婚をしたい理由は「幸せになりたいから」21%、「家庭がほしいから」27%、未記入 52%という回答であった。結婚をしたくないと思っている高校生は 21%であり、結婚をしたくない理由は「考えていない」45%、「面倒くさい」33%、未記入22%という回答であった。

3. 仮説

児童養護施設で生活している高校生に結婚の法律や制度、一般常識を詳しく教えることで、結婚についての意識をはっきりとしたものにしていくことができるのではないか。

4. 研究方法

(1) 目的・ねらい
アンケート実施の際、結婚に関する講義に興味があり参加したいという高校 2 年生の女子 Y さんを対象に実施していく。結婚に関する法律などを詳しく教えることで、結婚についての意識をはっきりしたものにしていく。
(2) 実施内容
結婚についての意識調査(お金、仕事、子育て、人付き合い)等 6 問に自由形式で答えてもらい、結婚に関してどれほど知っているか調査する。次に結婚に関することがらのうち特に興味があるテーマを選んでもらい、そのテーマについて学生が事前に調べておく。全 7 回に渡り結婚に関する法律などの情報を講義形式で教え、対話も交えながら結婚の知識を深めていく。学生の家庭の実態や出身者の経験談などにも触れながら話をしていく。Y さんには興味がある事や大事だと思った内容をノートに書き取ってもらい、フィールドワーク毎に感想を記入してもらう。

5. 研究結果

6. 考察

私たちはフィールドワークを計 7 回行い、Y さんの結婚への意識がどれ位変化しているか観察を行った。Y さんは結婚に必要なお金を平均額に近い金額で想像していたが、その内訳までは理解出来ていなかった。お金と仕事のフィールドワークを行っていく中で生活費や貯金等の細かい内訳も理解出来ていた。また、Y さんは育児に関わる制度を知ることで育児に励む為に休むという考えも生まれてきたようで、夫や自分の子どもの事にも意識が向くようになった。
一般の高校生と児童養護施設の高校生では結婚の意識は大きな違いはないことが分かったが、将来の事を考えると児童養護施設の子どもたちは施設にいる間に結婚について学ぶ必要性があると考えられる。

7. まとめ

フィールドワークを行ったことで Y さんは知識を得た後に「結婚をしたいと思った」と結婚の意識がはっきりとしたものになった。そして、このような講義を「結婚を学ぶなんてことが今までなかったからいいきっかけになった。」と答えている。
今回の結婚についてのフィールドワークは対象者が一人であったため、長い時間をかけて行うことが出来た。しかし結婚について全く興味がない高校生や、長い時間講義を受けるのが難しい子ども、法律など難しい内容を理解しづらい子どもに対して、どのように伝えていけば良いのかを考えることがこれからの課題といえる。

8. 参考文献

厚生労働白書「結婚に関する意識」http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/13/dl/1-02-2.pdf
「マーミー ステキなママになるための子育てメソッド」http://moomii.jp/ 旺文社 教育情報センター 学校基本調査速報 eic.obunsha.co.jp/resource/pdf/educational_info/2014/0829_02_k.pdf
一般社団法人部落解放・人権研究所「ひとり親家庭の子どもの家庭状況と学力」http://www.blhrri.org/old/kenkyu/project/hinkon_gakuryoku/hinkon_gakuryoku_02.html

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