レクリエーションの参加を通じて生活不活発病の予防に繋げる

年度 2015
学科 介護福祉士科

1.はじめに

生活不活発病とは、言葉の通り生活が不活発になることによって起きる病気である。大きく分けて精神・心肺・運動器の三つの機能低下があげられ、症状として筋力や内臓機能の低下、周囲への無関心などがあげられる。若い人でも入院生活が長引き、運動しないことが続くと身体の機能が低下する事があるが、高齢者や障害のある人では特にそれらが起こりやすくなる。
実習に行った際、筋力は保たれているが周囲に関心がなく、活動量の少ない利用者が見受けられた。そこで私達は、精神に着目し楽しくレクリエーションに参加してもらえるような内容と声かけを行い、余暇時間での充実感を得ることが出来れば、生活不活発病の予防に繋がるのではないかと考えた。昔遊びをすることによって昔を思い出し、楽しんでいただけるのではないかと考え、お手玉を使用したレクリエーションを実施することとする。

2.現状把握

特別養護老人ホームには、発病後慢性期に入所される方が多く、拘縮や生活不活発病の兆候が見られる方も少なくない。離床することが最大の予防に繋がると言われ、利用者の離床時間・活動量の増加を目標に取り組んだという改善の研究がされている。
私たちが実習に行った際、レクリエーションが行われていても、集団行動が苦手な利用者や、筋力低下により意欲が低下しているために、参加されない利用者が見受けられた。研究メンバーの実習先に、このような利用者はどのくらいいるのか調査をとった所、どの施設も1割はいる事が分かった。
このような現状を受け、利用者の意欲を引き出すことができれば、生活不活発病の予防に繋がるのではないかと考え研究することとした。

3.仮説

利用者に楽しんでもらえるように、お手玉と音楽を使用したレクリエーションをする事により、利用者の意欲に変化がみられ生活不活発病を予防することに繋がるのではないかと考えた。

4.研究方法

<対象者>特別養護老人ホームに入所されている利用者 5名
<実施期間>平成 27 年 10 月 13 日~11 月 19 日(月曜日・火曜日 午後 2 時頃)
<実施場所>フロア
<研究の手順>
① 研究メンバーの全実習先に対象となる利用者はどのくらいいるのか調査する。
② 研究対象施設に行き、利用者の ADL の状態・余暇時間の過ごし方を把握する。
(利用者・職員にアンケートをとる)
③ レクリエーションに参加してもらい利用者の発言や反応の変化を記録する(職員にアンケートをとる)。
<実施の手順>
① 利用者とコミュニケーションを図り信頼関係を築く
② 「私達と一緒にお手玉をしませんか?」と声かけをする
③ 利用者にお手玉を渡す
④ 研究メンバーがお手本を見せる
⑤ 音楽「さんぽ」を流す
⑥ 利用者と一緒にお手玉をする
※各ユニット1名ずつ休憩を入れながら 15 分間行う

倫理的配慮
①対象者が特定されないように施設・名称・氏名は匿名にする。
②対象者に研究目的を説明し、研究への参加は本人の意思によることを基本とする。
③研究結果や収集したデータの取り扱いは、外部に漏れないようにする。

5.研究結果

特別養護老人ホーム H 施設 対象者5名にアンケートを行なった所、以下の結果となった。

1.レクリエーションに参加していますか?
『はい』0名 『いいえ』5 名
2.なぜレクリエーションに参加しないのですか?
『集団行動が好きではない』『手が痺れてできない』(80 代 女性 要介護 3)
『思うように動けないから』(90 代 女性 要介護 3)
『やりたくない』『できない』(90 代 女性 要介護 2)
『手が痺れてできない』(90 代 女性 要介護 3)
『足が上がらないから』『思うようにできない』(90 代 女性 要介護 4)
3.一日の中で他の利用者や職員と話す機会はありますか?
『はい』2名 『ほとんどない』3名
4.日中眠いと感じる事はありますか?
『はい』3名 『いいえ』2名
1.一日どこで過ごす事が多いですか?
『フロア』5名 『居室』0名

アンケートの結果、レクリエーションに参加しない理由は「やりたくない」という意見よりも「上手く身体を動かす事ができないから」と回答された方が多かった。

六日間実施を行い、変化が見られたか以下の表にまとめた。

個人差はあるものの初日に比べ自らお手玉を持ち実施してくださる利用者が出てきた。
実施の最中、研究メンバーが「上手ですね」などといったプラスの発言をすると、笑顔になり意欲も上がったように感じられた。

音楽は「さんぽ」を選曲したが、曲を知らない利用者が見受けられ、音楽の音で会話が聞こえなくなってしまう事もあり、途中で中断することになってしまった。
利用者の中で、お手玉の歌(日露戦争の軍歌)を歌いながら実施されている方が2名程いた。 職員からは「期間が長かったらもっと変化がみられたかもしれないね」という意見を頂いた。

6.考察

利用者の様子、発言などから個人差はあるものの大きな変化は見られなかった。
昔お手玉で遊んだという利用者は5名中4名おり、お手玉を見せると「昔よくやった」と笑顔になるも、お手玉を手渡すと「今はもうできない」と拒否される方が多かった。積極的に実施されなかった理由は昔出来ていたことがスムーズに出来なくなってしまった事からではないかと考えた。
また、フロアの椅子で実施を行ったが「落としちゃう」「落ちたら汚れちゃうから畳でやりたい」という発言が聞かれ、環境を整えることも必要だと考えた。
音楽については、選曲が利用者の知らない曲だったため効果が得られなかったと思われる。
曲を流していない時にお手玉の歌(日露戦争の軍歌)を歌いながら実施している利用者が見られた。そのため対象者の年代で流行った手まり歌、その方の好きな曲を選曲する必要性を感じた。

7.まとめ

今回の研究から、生活不活発病の予防に繋がったという結果は得られなかったがお手玉をすることによって昔を思い出し、楽しんで頂けたように感じられた。
反省点としては、曲の選択を利用者に聞かずメンバーが勝手に決めてしまったので、これらを考慮し曲を決めていれば更に良い結果が得られたものと推測される。
今後の課題としてもう少し長い期間で実施を行い、利用者の体調や気分なども配慮し行うことで、また異なる結果がでる可能性があると思われる。

8.参考文献

水田直子 中原新 「限りない可能性を目指して」~生活不活発病の改善~

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