もしも言語障害が起きた時使いたくなるLINE スタンプの開発

年度 2015
学科 介護福祉士科

1.はじめに

コミュニケーションは、生活をする場において人間関係を築くための重要な役割を持っている。実際に、障害者施設での実習で言語障害のある利用者が、タブレットを使用していたのが見受けられた。現在、日本のLINEユーザー数が5400万人おり、1日あたりのスタンプ売り上げは約1万8000セット以上となっている。
障害のある方のLINEユーザー数は今後増加していくと思われる中、一般的なスタンプはあるが言語障害のある方にとってより便利性のあるスタンプは現在、ほとんどない。
そこで、もしも私たちに言語障害が起きた時、使いたくなるLINEスタンプを開発することによって、ストレスなく自分の意思を伝えることができ、介助者との意思伝達もスムーズに行えるのではないかと考えた。

2.現状把握

1.今あるスタンプの中から障害に関連したスタンプを探す
2.学生にアンケート
3.LINEスタンプ40個

3.仮説

LINEスタンプを使うことで思いや訴え、自分の意思をスムーズに伝えることができ、ストレスが少なくなると思われる。

4.研究方法

①学生にアンケートを実施した。
●対象者
埼玉福祉専門学校〔介護福祉士科・社会福祉士科・こども福祉科〕
東京福祉専門学校〔介護福祉士科・介護福祉士養成科〕
東京医薬専門学校〔言語聴覚士科〕
埼玉ベルエポック製菓調理専門学校〔パティシエ科・調理師科・カフェスイーツ科〕

上記在校生1000人程度を対象とした。(アンケート回答数 計729名)
●実施期間 平成27年6月24日~平成27年11月29日
●実施内容 アンケート(70項目)を作成し、送付。(図1)
70項目で必要だと思う番号【重要・まぁ必要・なくてもよい・いらない】に○をつけてもらう。
フリースペースに70項目以外で必要だと思われる項目を書いてもらう。

5. 研究結果

実際、私たちは実習先で言語に障害がある利用者の方からどのようなスタンプがあればよいか、聞き取り調査を行い、その調査を元に項目を出した。又、私たちも必要と思われる項目を出し、全70項目のアンケートを作成。しかし、LINEマーケットの申請を行う上で、40項目に絞る必要があったためアンケート結果から、性別・年齢別・専門別に分けてランキングを作成した。
40個にしぼる過程において、因子(性別・年代・介護・一般・言語聴覚士科)ごとにクロス集計を行った。結果、専門職、一般による大きな差異はなかったことが解ったしかし、性別による因子は以下のような異なる結果が得られた。
・感情系・挨拶系の重要性が高い
・男性全体のランキングでは、部位が11個に対し、女性全体ランキングは1個だった。(図2. 図3)
・女性全体のランキングでは「休みたい」が1位なのに対し男子全体のランキングではランクインしていない。
・「ごめんね」「ありがとう」が圧倒的に1位、2位を占めている。
・部位は11項目あったが、多くの人が痛みを感じやすい「頭」「お腹」の部位の重要性が高かった。
・ジェスチャーでは伝えづらい項目が上位のランクインとなった。
・男性の一般は部位が多いのに対し、女性の一般は部位が少ない。それとは別に、女性の一般は願望系が多いのに対し、男性の一般は願望系が少ない。(図4.図5)

これらの結果を元に、挨拶系・感情系・部位・願望系・訴え系・質問・返答系に分け、アンケート集計結果から票数が多い順に36個、又フリースペースからの意見が多かった4個の計40個に絞り、LINEスタンプの元となる絵を作成した。(図6)

6.考察

今回学生に対して実施したアンケートの結果から得られたことは、年代や専門職にといった因子による集計では、ランキング内での前後があるのみで、ほとんど差異はなかった。しかし、性別による因子に関しては挨拶系や感情系はあまり差異がなかったが、部位や願望系、訴え系はランキングに大きな差異がみられた。
この結果を見て、表情だけでは正確に伝わりづらい気持ちや感情の項目が多いと感じた。
また男女差による結果についてはなぜ起こるのかは今回のアンケートからは検証が出来なかった。このアンケート結果からランキングを作成し、70項目の中から40項目に絞りスタンプを作成することで、もしも言語障害になったらLINEを通して思いや訴え、自分の意思をストレスなく介助者へスムーズに意思の伝達が可能になるのではないかと考えられる

7.まとめ

アンケートを実施してみて結果が似ているものもあれば、全く違うものもあり、様々な学科の学生にアンケートを実施してよかったと思った。アンケートが70%という返答率があり、さまざまな結果が得られたと思う。
しかし、今回のアンケートからはなぜ、男女に差が出たのか考察に至れなかったため、今後さらなる研究が必要だと感じた。今回の研究ではアンケートを実施し、70項目から40項目に絞り、LINEスタンプを作成までしか行えていないため、今後、実際に施設などで実施していきたい。実施を行い、利用者の方に使用して頂いていく中でより良いLINEスタンプを開発していけたらいいと思う。そして、LINEスタンプを使用することで仮説通り思いや訴えをストレスなく、自分の意思をスムーズに伝えることができるか確認していきたい。

〈参考文献〉store.line.me/stickershop/showcase/top/ja (LINE スタンプ公式)
creator.line.me/ja/(LINE スタンプマーケット)

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