口から食べることによる人間らしさの保持 ~唾液腺を刺激することによる食欲の増進~

年度 2015
学科 介護福祉士科

はじめに

私達が実習で会った利用者様の中には食欲がなく、食事拒否や自分から食べようとしない方がいた。そのような方に食事介助をしても、口に含んで飲み込まず、口から出してしまうことや口に溜め込んだままにしてしまうことがあった。
実習でそのようなことがあり、食事介助の時間にどうしたらよいのかと困惑してしまうことがあった。実習の後に学校の講義の中で唾液腺を刺激することで嚥下機能が向上すると学んだ。この方法により、食欲が増進するのではないかと考え、研究を行うことにした。

2.現状把握

唾液腺の効果として
● 口腔内の自浄作用
● 抗菌作用
● 嚥下機能の維持・向上
● 発音を滑らかにする
● 口腔内の保湿
以上の効果があるが、今まで私達が行った実習施設では唾液腺を刺激している施設は少なかった。

3.仮説

唾液腺に刺激を与えることにより唾液分泌量が増え、咀嚼・嚥下がしやすくなり、食事摂取量が増えるのではないか。

4.研究方法

1)施設
高齢者施設(特別養護老人ホーム)

2)期間
10 月中の土日月

3)研究手順
① 施設に目的や方法を説明し、同意を得る
② 対象となる利用者様の選択
■ 前日の食事量を確認する。
■ その中で食事量が少なく、コミュニケーションを取ることが可能な利用者様を対象とする。

③ コミュニケーションを図る
■ 利用者様に調査を実施することを説明し、同意を得る。
■ 円滑に調査を行う為、利用者様とコミュニケーションを図る。

④ 実 施
■ 対象とした利用者様に対し、実施内容の説明をする。
■ 実施内容は耳下腺を 4 本の指で押しながら回して刺激する。1 周 2 秒程度を 1 回とする。それを 5~10 回行う。

⑤ 観 察
■ 食事している間の利用者様の様子を観察する。
■ 食事が終わった後、今回実施したことについて普段との違いについて質問する。
■ 今回の食事量の確認。

4)倫理的配慮
・施設と利用者は匿名(施設名はアルファベットとし、利用者はイニシャルとする)
・研究対象の方に研究目的を説明し研究への参加は本人の意思を尊重する
・研究データや収集したデータの取り扱いは外部に漏れないように配慮する

5.研究結果

以下のグラフ(図1)は実施前、実施初日、実施二日目の食事量の変化を主食、おかず、汁物、の三つに分け、平均してまとめたものである。
結果としては
主食はあまり変化が見られなかった。
おかずは、摂取量の増加が顕著に見られた。二日間実施したかたはさらに食事摂取量の増加が見られた。
汁物は、おかずと違い急激な変化は見られなかったが緩やかに増加の傾向が見られた結果として、全体的に摂取量の増加が見られたものの変化としては微量であった。
実施後の利用者様の感想は摂取量が増えた方は「こりゃたまげた。」「ご飯がおいしい」「すんなり飲み込めた」「楽に食べられた」などの肯定的な意見がみられた。摂取量が減った方は「疲れたからいいや」「面倒くさいなぁ」「もういいよ」「これ以上やりたくない」などの否定的な意見がみられた。全体的にどの利用者様からも「唾がいつもより多く出た」という意見は見られたものの「食べやすさはあまり普段と変わらない」という意見がもっとも多く見られた。

6.考察

■ おかずの摂取量が特に増えたのは、唾液腺の刺激を行なった結果、唾液量が増加し咀嚼しやすくなり食欲増進につながったのではないか。
■ ご飯は、元々水分が多く含まれているため唾液腺の刺激による食事摂取量の増加が見られなかったのではないか。
■ 元々食が細い方や嚥下能力が低下しているが唾液分泌量が十分な方には唾液腺刺激による食欲増進の効果が見られなかったのではないか。しかし、口腔内が乾燥している方には唾液腺刺激による食欲増進の効果があったのではないか。
■ 唾液量が元々十分な方は、唾液腺の刺激を行うと唾液の分泌量が過剰になり、むせるなどの悪影響が出たのではないか。
■ 唾液腺刺激を行った際にほほの筋肉がほぐれ、食事摂取が増える副次的な効果があったのではないか。
以上のことが考えられた。

7.まとめ

私たちは人間らしさの保持のため経口摂取を目的とする研究を今回行った。その方法としては唾液腺の中でも最も大きい耳下腺を刺激し、唾液の分泌量を増加させ嚥下や咀嚼をしやすくすることにより、食欲が増進し食事摂取量が増えるのかどうかを検証した。
今回の検証では唾液腺の刺激を行ったことで、わずかながら食事摂取量の増加が見られた。しかし、どのような要因によって摂取量の増加があったのか詳しくはわからなかった。これからは今回の研究を元に、条件を限定するなどしてより有効的な実施対象者の特徴や食事品目などを調べて行きたい。

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