食器の色による表情の変化(認知症がある人の場合)

年度 2015
学科 介護福祉士科

1.はじめに

人が生きて行く上で必要な意欲が3つあります。食欲、睡眠欲、性欲の3つです。その中で私たちは、実習中に施設の食器を見て白系の食器が多いことに気づきました。白いご飯茶碗では表情が出にくいのではないかと考えました。
食器の色を変えることで表情の変化が見られ、意欲に繋がって行けるのではないかと考え研究テーマにしました。

2.現状把握

現在施設では白く模様のない食器が使用されていることが多い。色がもたらす効果として、赤、橙などの暖色系の色は活気や高揚感を与える色として知られている。中でも、橙色は胃腸を刺激し 食欲を促す効果がある。その為飲食店では食器やインテリアの色に橙色がよく用いられていること が多いと色彩心理学の観点で証明されている。気分よく食事をしている利用者が食事中に笑顔で会 話をし、食事に対して楽しみを持って頂ける様子が見られている為、気分の変化は表情に現れるこ とが多い。飲食店で暖色系の色で気分の変化を狙い、色を用いることからそれが食事の楽しみや食 欲に繋がっているということが分かっている。当初の研究では、主食の器の色に変化を加え食欲の 増減に関する研究を行った。実施では、暖色及び寒色の2種類の食器を使用し使いやすさに配慮し プラスチック製の模様のないものを使用した。その為、食事が安っぽくみえ見栄えが悪く見えてし まい色より食事の見た目が悪いという職員の指摘を受けたため、色覚の効果が得られないと判断し、それらの結果を元に再度検討した結果表情の変化に変更をした。

3.仮説

食器の色を変えることで利用者の方の表情の変化につながるのか。また、認知症の方も色覚の効果が表情で現れる。

4.研究方法

・対象施設
介護老人福祉施設S施設
介護老人福祉施設SKG施設
・対象者
I様 91歳 女性 要介護4
H様 94歳 女性 要介護4
M様 85歳 女性 要介護2
T様 87歳 女性 要介護3
H様 78歳 女性 要介護2
N様 77歳 女性 要介護2
K様 87歳 女性 要介護4

・認知症の種類
アツハイマー型、脳血管型、年相応

・手順 手法
‐ 事前説明、食器の色を変える(3食)

・手法
インタビュー、観察項目
朝、昼夕に職員観察していただく
夕食時のみ私たちも一緒に観察を行う

インタビュー内容
職員に行う内容
様子
1、食事中の普段の様子 2、食器を変えた時の様子 3、利用者の変化 食器
4、職員から見た食器の色はどうか 5、使用した食器はどうか
6、今までに食器を変えたことがあるか利用者に行う内容
1、普段の食器は何色ですか(色の認識として) 2、今回使用した食器はどうでしたか
3、普段と今回の食器の色の違いはどう感じましたか
4、その食器の色で美味しそうに見えましたか 5、実際に食事をして美味しく感じましたか
6、もし機会があれば今後もその色の食器を使用したいですか評価方法
評価の方法は、1、2、3、と分けて行う。
1は、表情の変化なし 2は、表情の変化あり 3は、表情の変化が大きい

5.研究結果

食器の色を変更したところ表情の変化は見られなかった。

6.考察

施設の食器では白いものが多く、色付きの食器が実習中少なく感じた為、色や模様の入った陶器 の食器を使用し実施を行った。食器の色は赤色、橙色の色に変えて実施をしたところ表情の変化は みられなかった。茶碗の変化だけでは色覚の効果が得られなかったと考えた。色には興味を持った。特に赤色の茶碗には好感をもってもらい、美味しく食べていたが表情には大きくつながらなかった。また、個人の好きな色によって違いが出ると考えた。
食事中の表情は真顔になることが多く見られた。原因は、食事に集中しているためだと考えた。

7.まとめと今後の課題

茶碗の色で表情の変化は見られなかったが、他の利用者との話題になり食事中の気分転換となった。茶碗が重いと感じる利用者が多く、材質にも着目する必要がある。色での表情の変化は、その方の好みによって変わる。また、色覚の効果も重要だが、認知症になると色覚の効果よりも好みの色の方が重要となってくる。食器だけではなく、テーブルやインテリアなどに色の変化を用いることで今回とは異なる結果が出る可能性があると思われる。今後の課題として茶碗だけではなく、又異なるものに着目し色の変化を加えることによる表情の変化等も研究する必要がある。

8.参考文献

色彩心理学(色の効果と心身への影響)カラーセラピーランド
http://www.i-iro.com/psychology

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