入眠時における子守唄の効果

年度 2015
学科 保育士科 夜間主コース

1、 はじめに

保育園実習で午睡時に子守唄として、音楽を流している園へ行った。保育者に理由を聞くと、「家庭での睡眠時間をあまりとることができていないためか、園での活動中に元気が出ない子どもがいる。そのため、保育園では午睡の時間に睡眠をしっかりととることができたら…という考えから音楽を流している」と言っていた。そこで子守唄は入眠時にどのような効果があるか、流すことで入眠に変化はあるかに着目して研究を進めた。また、効果があるのは、どのような曲調・テンポの 音楽なのかについても併せた研究をした。

2、現状把握

現在、保育園に通う子どもの中に園での活動中に元気が出ない子どもが見られる。その原因のひとつとして、昔に比べ、就寝時間が遅くなったことが考えられる。日本小児保健協会の調査(平成22年)によると、3歳児の子の約3割が22時以降に就寝しており、夜型の生活リズムが慢性的な睡眠不足を生み出していると言える。

3、 仮説

① 保育園の入眠時に子守唄を流すことによって、子どもの入眠時間に変化が出る。(曲調やリズム、テンポの違いなど)
② ゆっくり、なめらかなテンポの子守唄を流すと入眠への時間が早い。

4、 研究方法

① アンケート調査
対象:全国私立保育園連盟の職員 23名日時:10月上旬~10月中旬
(アンケート内容)
・入眠時に音楽を流しているか
・音楽を流している理由・流していない理由
・保育をする上で入眠時に音楽は必要か
・音楽を流す以外のことで入眠時に気をつけている環境作りは何か

② 年少クラスを対象にした子守唄を使った実験対象:K幼児園19名・K保育園19名
日時:10月19日~10月24日(6日間):オルゴール調
10月26日~10月31日(6日間):童謡(ぞうさん・ちょうちょ)
→(実験内容)
・アンケートで保育者に聞いた曲(子守唄)を普段、音楽を流していない園で数日に分けて午睡時(13時~)に流し、子どもの入眠時間に変化はあるか実験。

5、 研究結果

① アンケート調査の結果

はい と答えた理由
・入眠時に気持ちを落ち着かせるため
・入眠のタイミングなどの定着づけのため
・午睡時という場面の区切り、メリハリを付ける
・安心して入眠を行えるようにするため 等

いいえ と答えた理由
・睡眠の妨げになりかねないため
・子ども自身で入眠のペースをつかんでもらうため
・音楽以外の導入を行っているため
・給食後、自然と布団で眠りにつく習慣がついているため 等

音楽を流す以外のことで入眠時に気をつけている環境づくり
・子どもの様子に合わせて布団の位置を変える。
・室内温度の調整
・室内の明るさ(子どもの表情が見える明るさ)
・眠れない子どものそばに保育者が寄り添う 等

② 年少クラスの子どもを対象にした子守唄を使った実験結果

6、考察

・子ども達に入眠のきっかけを伝えるために、音楽を流している。
・一方で音楽を流す習慣のない保育園は子どものリズムに合わせた生活をしているため日常との変化はあまり現れなかった。
・音楽を流すことは子どもの入眠時に直接的な影響は無く、間接的に音楽を含めた睡眠環境が影響する。(室内の明るさ、温度調整、眠りやすい環境作り)

7、まとめ

睡眠も体質も生活環境などで個人差はあるが、質の良い睡眠が取れていることで、起きている時間の過ごし方も質の良いものになる。逆に言えば、起きている時間の過ごし方(家庭での過ごし方、保護者との過ごし方)によっても、睡眠の状態は左右される。十分に眠れていないことは、疲れているのと同じ状態であるとも言える。
子どもに必要な安定した睡眠を保障するために、落ち着いた環境を作る。入眠前は、目覚めと眠りの間を行ったり来たりしながら、一人言を言ったり、一日を思い出したりと“自分”に浸り大切なことを生産する時間でもある。そのことを守るためにも、布団などで“自分だけ”の時間を確保してあげることが大切。
午睡の時間以外にも、そのときの感情や興奮・疲れを静めるための“休息”できる場所も保育室の中に用意しておく事も良い。
入眠時、人の体は体内温度が下がり、皮膚温度が高くなるため体が熱くなる。室内の温度が高い、着るものが厚いとこの機能がうまく働かないこともあるので、午睡前に空気の入れ替えをし、室内の温度を調節することが大切。
これらの研究結果を活かし、実際の現場でも音楽を含めた睡眠時の環境作りに気を付けて保育を行っていこうと感じた。

8、参考文献

・日本小児保健協会ホームページ

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