減少する遊具とその理由 ~遊具での危険を減らすために~

年度 2015
学科 保育士科 夜間主コース

1.はじめに

私たちは、保育園の実習や幼稚園の実習の際、子どもとの会話の中から家に帰ってから外で遊ぶより室内でゲーム遊びやテレビを見て過ごしている子が多いことを知り、時代とともに遊び場が変化していることに興味を持った。
そして、公園の遊具に着目したところ、私たちの子どもの頃に比べて遊具が減少していることに気づき、この研究を進めることにした。

2.仮説

・事故や危険な遊び方により、遊具が撤去され減少している。
・子どもたちの危険な使い方を見直すことで、事故を防ぐことができる。

3.現状把握

公園から遊具が消えつつあるという問題がある。公園は、遊園地のように監視されているわけではないので、子どもが実際に怪我をした遊具や、危険とみなされた遊具は、危険の予兆があってもメンテナンスまで気付かれず事故という悲しい結果を迎える。公園管理者にとっては非常に悩ましいものであり、いっそのこと撤去するという発想になり、公園から遊具が減少している。
遊具が減っていくことで、それぞれの遊具で鍛えられる運動能力や危険察知能力の低下が考えられる。

(下表参照)

2000 年以降、子どもが向かい合って乗る箱型ブランコや回転式遊具で転倒事故が多発し、全国で撤去の動きが加速した。国土交通省が作った安全指針の基準から箱型ブランコははずされている。また、回転ジャングルジム・遊動円木も好ましくない遊具として指定されている。

4.研究方法

・埼玉福祉専門学校 こども福祉科学生
・埼玉福祉専門学校 職員の方々アンケート調査を実施。

【アンケート内容】
①子どもの頃、よく遊んでいた野外での遊具をできるだけ書いてください。
②危険だと思う遊具や実際ケガをしたことがある遊具がありましたら、お書きください。

5.研究結果

アンケート調査①と②の結果、よく遊んだ危険な遊具として、ブランコ・箱型ブランコ・すべり台・シーソー・回転ジャングルジムが多くあがった。(回答数 75 人)
アンケートなどを元にそれぞれの遊具について、検証した。
(1) 遊具別の事故事例と遊ぶ際の注意事項

ブランコ
(事故事例)
・ブランコに乗っている際、前を通った友だちとぶつかる。(アンケートより)
・公園で鬼ごっこをしていて、鬼に追いつかれそうになった子が鬼に向かって無人のブランコを大きく揺らし、ブランコが口にあたり永久歯が欠ける。

(注意事項)
・前後を確認して乗る。
・両手でチェーンを握る。
・他の子はブランコの近くに寄らない。

箱型ブランコ
(事故事例)
・ブランコをこぎすぎて、箱型ブランコごと一緒に倒れた。(アンケートより)
・箱型ブランコに4人で乗っていて、1人が立ち上がったところ転落しブランコの下に挟まり、腕を挫傷する。
・ブランコ外から箱型ブランコを押していた子が、ブランコを押したはずみに前のめりに倒れ、戻ってきたブランコが頭にぶつかり死亡する。

(注意事項)
・国土交通省の安全指針の基準から外れている為、設置されていない。

すべり台
(事故事例)
・すべり台の下に到着した際、勢いあまって地面に転んだ。(アンケートより)
・すべり台をすべる時に、後ろ向きにすべってコンクリートに頭を強打し頭部を骨折する。
・手すりのつっぱり部分に服が引っかかった状態のまますべりおり、首が締め付けられて死亡する。

(注意事項)
・登る時手すりにつかまって登る。
・1人ずつ座ってすべる。

シーソー
(事故事例)
・思い切りのって遊んでいると、勢いよく吹っ飛び、あごを縫うケガをした。(アンケートより)
・1人が先に降りたため、乗っていた側が落下し持ち手部分に口を強打し、前歯が抜ける。
・シーソーの板と地面の間に足を挟み、足首を骨折する。

(注意事項)
・相手の動きを確かめ、自分の動きを伝えるようにする。

回転ジャングルジム
(事故事例)
・高速で回転させ遊んでいたところ、手を離してしまい落下。地面に全身を強打し負傷する。
・回転を止めようとしたところ、遊具に手首が挟まり負傷する。

(注意事項)
・国土交通省の安全指針で好ましくない遊具に指定されている。

(2)公園遊具についての考察
過去のデータを調べたところ、箱型ブランコや回転遊具で転倒事故が多発し、全国で撤去の動きが加速したことが分かった。 そこで私たちは、アンケートを行い、身近なところでの遊具の危険性について調べてみた。その結果、やはり危険な場面や実際ケガをしている事例が多く寄せられた。一方で遊具を残して欲しいという希望も寄せられた。
ただ危険だから撤去するというのではなく、いかに安全を保つか工夫しつつ、遊具を残して行くことの必要性が確認できた。

6.まとめ

各遊具には様々な事故や危険があり、公園から遊具が減少している。また遊具が減少することで、遊具により様々な運動能力が得られる機会が減り、子どもの遊ぶ環境に大きく影響している。
遊具での事故が起こる原因として、子どもは好奇心が旺盛だが体格・体力が伴わず危険を避ける判断力も不足していることから大人の想像を超えた行動に走り、大きな事故を引き起こしている。遊具での危険な遊び方を見直すことで事故を防ぐことができる。また、周りの大人が危険な行動面での指導や、安全な遊び方を教えていきながら子どもの好奇心と運動能力を育てていくことで事故の減少、そして遊具の減少の改善へと繋がる。

7.参考文献

・遊具に起因する子どもの事故発生状況<東京消防庁> http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/201203/yugu.html
・児童公園からかつての遊具が激減
http://news.livedoor.com/article/detail/9226884/

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