児童養護施設の子どもたちから見た進学とは 〜子どもたちの進学に向けての取り組み〜

年度 2015
学科 こども福祉科

現状把握

施設の子ども達は原則 18 歳で児童養護施設を退所し、自立生活を始めなければいけない。また、平成 25 年度の厚生労働省の調査によると児童養護施設を退所した子どもたちの進学率は 22.6%と一般家庭の子どもたちの進学率である 76.9%を大きく下回っており、進学を選択した場合でも「学費」や「生活費」などを稼ぐためにアルバイトと学業を両立させなければならず、その負担や孤立感から半数近くが退学を余儀なくされているという厳しい現実がある。
フィールドワークで行ったアンケートでも 10 人中 3 人が就職、4 人が未定と進学に意欲的ではなく、進学を選択した 3 人も全員が金銭面への不安を抱えているという結果がでた。

仮説

児童養護施設に入所している高校生の子どもたちとの面談で、その子どもたちに合った制度・学校などについて知識や情報を伝えることにより、進学して夢をかなえるという選択がしやすくなるのではないか。

研究方法

(1)目的・狙い
児童養護施設の子どもたちが望む学校の情報や、必要となる知識を個別の面談で伝達することにより子どもたちの持つ不安を減少させ進学を選択しやすくする。

(2)研究期間・実施内容
7 月上旬~11 月下旬
事前アンケートをもとに子どもたちが持つ将来への不安を把握した上で、個別面談を行う。同時に対象児童の意識調査と個々の問題点やその考えに合わせた制度・学校についての情報を提供し、その後の変化を比較する。

(3)対象者
A ちゃん 高校 1 年生 女子
B ちゃん 高校 2 年生 女子
C くん 高校 1 年生 男子

研究結果

<A ちゃん>
高校 1 年生 将来の夢はソーシャルワーカー
福祉系の 4 年制大学に進学希望 自主的に専門学校や大学の見学、制度の確認などを行っていた
○フィールドワーク後
もともと進学希望で 4 年制大学を志望していたものの、金銭面への不安があったため専門学校や短期大学に行こうと考えていた。しかし、フィールドワークを行ううちに制度への理解が深まり「やはり4年制大学に行きたい」という初期の目標を再度目指すようになった。
利用予定の制度は給付型の奨学金であり、受給には作文とスピーチが必要となるため、ためらっていたものの団体から取り寄せた漫画など資料を読むうちに前向きに考えるようになり、現在では4年制大学進学に向けて奨学金取得の準備を進めている。

<B ちゃん>
高校 2 年生 将来の夢は動物の飼育員
動物系の学校に進学希望 金銭面に大きな不安 制度の知識に乏しかった
○フィールドワーク後
A ちゃんと同じく金銭面への不安から就職と進学の間で気持ちが揺らいでいた。フィールドワークで奨学金などの制度について説明をするも、奨学金は結局借金であり返済という不安を抱えたくないからという理由で消極的な姿勢を見せていた。
フィールドワーク後半では進学への意欲が出てきた。しかし、アルバイトが長く続かず、現在も行っていないことから貯蓄ができず、制度を最大限利用しても希望校の学費には届かないのではないかと考え、一度就職して学費を貯めてから進学することに意向が変わりつつある。

<C くん>
高校 1 年生 将来の夢は大手ホテルマン
軽度の知的障がい 障害者手帳は所持していない 進学については考えていなかった
○フィールドワーク後
当初は進学について考えておらず、職員から就職を勧められており本人も高校卒業後に就職をしたいと考えていた。しかし、C 君が希望しているホテル会社は 24 歳以上からの募集であることと、大手であるため英語を話せたほうが良いということを伝えると進学への興味を持ち始め、今からできることを進めていこうという意欲が見られた。

考察

Aちゃんは制度について具体的な理解を示し、本人が望む進学の形がはっきりし、BちゃんはAちゃんと同じく制度への理解を深めたことにより、自分の現状を客観視することが出来たため就職からの進学という現実的な進路を選択することができるようになった。Cくんについては最終的に進学を意識したことにより金銭面での不安という課題が現れたものの、進学に対して前向きな考えを持つことができた。
このことから、児童養護施設の子どもたちが夢を実現していくためには、より多くの知識・情報を子どもたちが知ることが大切なのではないかと考える。

まとめ

今回の研究によって分かったことは児童養護施設の子どもたちは夢を持っているが、それを諦めてしまうことが多いということである。施設の子ども達が進学して夢を実現するためには支援者側の意識も変わっていかなければならないのではないかとも考える。夢を追うことが難しいという現実はあるものの、例えば C くんのように障がいがあるから進学は厳しいという考え方から一歩抜け出し、自分の夢を実現していくために必要ならば進学についても選択肢に加えていくことも求められているように思う。
子どもの可能性の幅を広げる上で進学はとても大きな意味があるものなので、私達が支援者となった際には、子どもたちが望む進路について面談を継続的に行い知識・情報を伝えて行こうと考えている。

参考文献
ハーネット TV 生き生きと高らかに ―児童養護施設の若者たち―
厚生労働省 社会的養護の現状について(参考資料)

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