介護福祉士養成校を卒業する学生の就職への不安要因とその軽減に向けて

年度 2016
学科 介護福祉士科

1.はじめに

私たちは介護福祉士科在学中に 3 回の現場実習を行った。実習で現場を知り就職に対するイメージを持てている一方で、就職して働き続けられるのか、人間関係はうまく築けるのかなどの不安を多く持っている。就職を目前にして増えてくるこれらの不安にどのように対応、解決していけばいいのかと思い、この研究に至った。

2.現状把握

今後、養成校出身の介護福祉士が施設等に就職した際に介護現場の不安はどのような事なのか、自分達が直面するかも知れない問題を事前に調査した。

2-1 介護福祉士養成校在校生に対するアンケート
まずは、埼玉福祉専門学校介護福祉科 2 年生 41 名に対し就職の不安に対してアンケートを行い、34 名の調査対象者から回答が得られ回答率は 83%だった。

以上の図 1、2 の結果から 9 割以上の学生が就職へ何らかの不安を抱えており、そのうち 5 割の人が人間関係における不安であることがわかった。

2-2 介護福祉士養成校卒業生に対するアンケート調査
次に、介護福祉士養成校の卒業した介護福祉士 62 名を対象に就職時の不安について google フォームを用いてアンケートを行った。

以上の図 3,4 の結果から、養成校卒業生の 7 割の人が就職への不安を抱えており、そのうち約 5 割が人間関係での不安を抱えたまま就職していることがわかった。
すなわち、在校生、卒業生ともども不安の多数が「人間関係」という結果が出た。
そこでその不安を軽減するためには、同じ養成校出身の職員が卒業後、実際どのような問題に直面していたのか、そしてその問題への対応や乗り越え方を知ることで、就職への不安の軽減に繋げられるのではないかと考えた。

3.仮説

養成校の卒業生に学校に来てもらい、経験談を話して頂き、就職に対してどのような不安を抱いていたのか、その不安にどう対応していたのかアドバイスをいたくことで、不安軽減につながるのではないか。また、卒業生の実体験を知ることで就職後の自分たちの働く姿を想像する事ができ、少しでも不安を軽減できるのではないか。

4.研究方法

埼玉福祉専門学校の卒業生を養成校に招き、卒業後の不安をどう解決しているかについて、インタビューに答えていただく形式の講義を行う授業を企画した。

日時 2016 年 11 月 14 日 AM11:00~11:40
場所 埼玉福祉専門学校教室
卒業生 O さん(埼玉福祉専門学校卒業 埼玉県内介護老人保健施設勤務 入職 4 年目 男性)

5.研究結果・考察

5-1 卒業生による不安軽減についての授業内容
学生からの質問に答える形で、以下のような話をしていただいた。

●人間関係を円滑に行うためには一番大切なのは挨拶。
●自分の苦手なことを理解してもらいつつ、それに対して自分も努力する姿勢が必要。
●先輩と積極的に食事行くことで、職場では話しづらい相談などができる。
●歳の近い先輩との共通の趣味を持つことで会話の内容が広がることもある。
●わからないことは遠慮せずに他の職員に尋ねる。
●多くの先輩は、親身に教えてくれる。
●先輩の立場からも相談は積極的にしてほしいと思う。
●介護を楽しいと思うことが何より大切、自分が介護を楽しむことで利用者も楽しくなる。

5-2 授業後の在校生に対するアンケート結果
授業を受けた介護福祉士科 2 年にアンケート結果を行ったところ、以下のような結果を得た。

マイナス意見に対しては、体験談を語ってくれた介護職員の性格が自分の性格に近ければ、プラスの意見に好転する可能性があると考えられる。このことからより多くの現役介護職員に体験談を語ってもらい、自分に似た性格の人の不安への対処法を見つけることが出来れば、不安の軽減に繋げられるのではないかと考えられる。

今回の研究では体験談を聴くことで就職への不安軽減に繋がる可能性があることがわかった。多くの養成校卒業の現役介護職員に体験談を語ってもらうことで、自分に似た性格の人、似てない人の対処法などが知れ、視野が広がりさまざまな考えを学ぶことが出来ると考えた。

6.まとめ

今回研究をまとめていく過程で、2016 年 11 月 11 日の介護の日に、さいたま市主催の「介護の日フォーラム」に参加した際、「現役介護福祉士が語る介護の魅力と本音~さいたま市で介護の仕事今も未来もともにつなが竜(ヌゥ)~」のパネルディスカッションを聞く機会があった。養成校卒業のさまざまな年齢の現役介護職員 5 人の体験・経験からくる話を聞くことで、不安要因を取り除いていくことを考えるだけではなく、将来へのキャリアプランをイメージすることも大切であるということに気づいた。
今後私たちが就職をした際には、後輩たちの不安や疑問に積極的に関わり、相談しやすい雰囲気づくりとそれを支える姿勢とともに、自分たちがイキイキと働いていくことで、後輩たちへ良い影響を及ぼしていきたい。また、自分たちと同じく養成校に通って介護福祉士になった現役の職員が多くない職場もあるので、養成校には在学中や同窓会などに養成校出身の先輩たちと関わりが持てる機会を増やしていただきたい。

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