実習における不安について不安との向き合い方

年度 2016
学科 こども福祉科II部

1.はじめに

保育教育実習とは大学またはこれに準じる教育機関において、教育職員免許法、同法施行規則に基づく教育課程を履修する者に必須とされている教職活動の実施活動の実施学習であり、単位・資格修得において重要な活動である。私たちは実習に対して「漠然とした不安がある」そのため、「不安」について研究をはじめた。厚生労働省の発表では、保育養成施設で資格を取得しても、保育所に就職する人数は約半数の 57.1%であり、幼稚園などの保育所以外の施設が 31.5%。その他が16.8%となっている(H24 年度末厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課調べ)。保育サイト「ほいくらいふ」によると、保育所や幼稚園などの保育所以外の施設ではなく、一般企業に就職する理由として最も大きい理由は実習を通し、職業としての向き不向きを考える機会があることや、その他にも保育士を目指そうとやりがいや期待、自信をなくしたり不安を感じたりすることもあげられる。

2.現状把握

私たちは、学生が抱く保育実習・幼稚園実習での不安について着目した。先行研究、林(2012)「初めての保育所実習におけるストレスについての考察」では保育士との人間関係や実習中の拘束時間の長さ、日誌や日々の緊張、気疲れからストレスを感じている事が述べられており、この事から実習生は様々な不安を感じている事が分かった。実習生が感じやすい不安とは一体どんな事なのかを把握するため、埼玉福祉専門学校こども福祉科全学年を対象に、実習で発生する不安の意識調査を行った。

アンケートの結果から、実習の不安は、ピアノや日誌のような「技術的な分野」と、人との関わりのような「コミュニケーションの分野」に分けることができ、161 人の学生が実習に対し安を感じており、「職員との関わり方」に対して一番不安に感じている事が分かった。
また、不安の解消・改善には何が必要かグループで話し合った結果、実習園・保育者養成校・学生の視点があると気付いた。そのため、実習先の職員から実習生に対して、どのような関りを行い考えているか、保育者養成校側からは学生に対してどのような促しを行っているのかを知るため、保育園・幼稚園・施設の現場で実習生に指導経験がある講師の方・埼玉福祉専門学校の先生の計8 名に、「実習生について」インタビュー調査を行った。
現場で実習生に指導経験がある講師の方のインタビューでは多くの方が、実習生が良い経験をで きるよう意識している、そして実習生は不安や知識不足から能力を生かせていない事を理解したう えで相談・指導などが必要であれば、時間は惜しまないと考えていた。また、実習生を受け入れる 際に「マニュアル」を作成し、職員全体の共通理解を図り、実習生に指導を行っている実習先もあ ると分かった。学校では将来保育者として、現場に出たとき困らないよう礼儀・挨拶などのマナー を普段の授業から徹底することや、個別対応が必要な学生には時間をとり、密な指導を行っていた。また実習中の学生の様子を見に行く巡回指導も行っている。学生は人間関係に不安を感じえいるが、実習園はマナーなどを重視しており、学校は「技術的な分野」と「コミュニケーションの分野」の 両面をサポートしている。
以上の事から、実習生と職員との間にはギャップが生じており、実習生に必要な能力はマナーと自分の気持ちを正確に伝える技術が必要だと分かった。

3.仮説

私達は「実習」についてグループで話し合い、実習には実習前、実習中、実習後の不安が存在することがわかった。(ピアノ、日誌、評価等)そのため、私達は埼玉福祉専門学校こども福祉科全学年に不安調査のアンケートを実施、集計し、その中でも特に人間関係(職員との関わり)が実習中の不安に繋がる事がわかった。その不安を、専門知識を持った先生による「事前指導」で解決できるのではないかと思い、埼玉福祉専門学校こども福祉科Ⅱ部 2 年に「事前指導が実習にあたえる効果」をアンケートした。その結果、「とても役に立った」・「役にたった」・「ふつう」と感じる学生が 31 人中 27 人いたが、どの部分が役に立ちましたかという問いに答えたのは 13 人と、具体的な内容をあげた学生は半数を下回っていた。理由として、事前指導は受けて良かったと思う学生は多いが、実習になると授業内容を生かす機会が少なかった、生かそうとしてもできなかったなどがある。このことから実習への不安が、事前指導で実習にあたえる効果を抑えている要因でないかと考えた。実習生は自分自身と向き合い、実習への不安を明確にし、実習への姿勢を整えることで意欲が増す、また学校側も不安に対し事前指導や個人相談でサポートすることができると結論に達した。
「実習をより有意義するため、事前指導などで実習生自身が不安と向き合う事で向上心などプラスの気持ちに変える事が出来るのではないか」、と仮説を立て、実習生が実習への不安な思いを書き出す「ワークシート」を使い検証を行った。

4.研究方法

(1) 事前調査:「実習の不安に対する意識調査」
対 象 :こども福祉科Ⅰ部・Ⅱ部 1、2、3 年生 6月に実施
(2) 本 調 査 :「実習への不安、不安との向き合い方」
対 象 :こども福祉科Ⅱ部 2 年生
・事前アンケート:実習での事前指導の効果・実習の不安調査 9月に実施
・ワークシート:幼稚園教育実習へ行くにあたり感じている不安を書き、調査者がアドバイスをする。10月に実施
・事後アンケート:ワークシートの効果調査 11月に実施

5.研究結果

「幼稚園実習を終えて、ワークシートが役に立ったか」の問いに、とても役に立った、役に立ったと感じる学生が全体の55%で、「ワークシートで行った先輩からの回答は役に立ったか」の問いでは、とても役にたった、役にたった感じた学生も多く見られた。その一方で「ワークシートを記入する事で、自分なりに不安に対して準備を行ったか」の問いでは、準備したという回答より準備していなかったという回答の方が上回った。
しかし、「今回の実習を終えて、自分にとって新たな課題が見つかったか」の問いでは準備有無に関わらず、93%の学生が見つかったと回答した。その多くがピアノ、手遊び等の技術面、職員、子どもとのコミュニケーションである。

6.考察

今回の検証で、ワークシートを使い不安を書き出すことにより、「漠然とした不安」が明確になり、前向きにとらえることができた学生が多かった。不安を書くことで、客観的に自分と向き合い実習の気持ちに見通しをつけることができたからだと思われる。「役に立たなかった」と考える学生は、「状況に対しどう対応するかをあらかじめ想定しておく」などが推察できる。事前アンケートで「先輩からアドバイスを聞きたいか」という質問に対し、聞きたいと答えた学生が8割程度おり、ワークシートでも役に立ったと答える学生が半数いた。多くの学生が、「先輩が経験したことは参考になる」、「自分も同じ体験が起こるのではないか」など仮想し、アドバイスを聞くことにより実習に対しイメージトレーニングができ、実習に挑むことができると考えている。
学生の実習への姿勢が整うことで事前指導への意欲が高まり、より有意義な実習なる。「実習をより有意義するため、事前指導などで実習生自身が不安と向き合う事で向上心などプラスの気持ちに変える事が出来るのではないか」の仮設は検証できた。様々な不安と向き合い、自分の今後の課題、新たな目標の発見、継続的な準備の必要性を感じた。

7.まとめ

不安は経験を重ねることで自分なりの対処法を見つけていく。年齢が若ければ、当たり前だが先輩の保育者よりも現場の経験は少なく、保育学生にとって実習が始めての経験になる。実習に対して不安を抱えることは当然のことである。さまざまなことを学校で学び、実践したいという思いをもって実習に望むが、現場に出ると、思うように体が動かず焦り、技術面ばかりを追ってしまいがちだが、実習園が求めていることは、挨拶・マナーなど基本的なことである。このギャップを埋め、実習を通しキャリアビジョンを獲得することが、理想の実習だと言える。
研究を通し、実習生が実習に不安を抱えており、実習を繰り返し行っても消えるものではなかった。新たな課題を発見し、問題に取り組み模索するからだ。解決方法が見つからず、漠然とした不安が残ってしまう。しかし、ワークシートで具体的にすることで適応的認知に変わり、実習への気持ちが前向きになった。今回の研究では、1回のみの検証であったが繰り返し不安と向き合うことで、将来現場に出でたとき自分で解決できる力がつくのではないかと思う。
研究を通し今後の課題として、実習生と実習園のギャップを埋めることである。私たちは、これから保育者として実習生をサポートしていく立場で解決を図っていきたい。

参考文献
淑徳短期大学研究紀要第 46 号(2007.2) 長谷部比呂美
保育実習に関する学生の意識についてー実習不安を中心としてー保育者養成における実習指導についての一考察 37 戸川俊
保育者養成における実習指導についての一考察 ―実習受入現場でのアンケート調査からー 園田学園女子大学論文集 林富公子 初めての保育所実習におけるストレスについての考察 保育の友 第 64 巻 第 5 号 みんなで応援!未来の保育士!
H24 年度末厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課
株式会社 ウェルクス HP「ほいくらいふ」https://hoiku-me.com/company/

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