手遊びは親子のふれあいを増やすきっかけになるか
年度 | 2016 |
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1.はじめに
私たちは幼稚園・保育園ゼミを履修している。ゼミの活動として、学内子育て支援ひろばエンゼルキッズを運営している。そこでは主に 0 歳から 3 歳までの未修園児が親子で遊びに来る場所であり、自由遊びや季節に応じた活動を行っている。その中で、子どもとの関わり方に悩んでいる母親の姿や、親子のコミュニケーション不足といった問題点を見つけた。過去のこども福祉科の卒業研究では、子どもの発達の調査のための手遊びの研究はあったが、保護者と子どもが関わる手段としての手遊びの研究がされていなかったため、私たちはこのテーマで研究を行うことにした。
2.現状把握
厚生労働省のホームページを見ると、核家族や共働きの家庭が増えているため子どもとふれあう時間が減ることにより、子どもへの関わり方がわからなく虐待や死亡事故、育児放棄につながっていることがわかる。
幼稚園や保育園で手遊びが使用されていることから、私たちは手遊びがふれあいの手段として有効だと考えた。エンゼルキッズでは子どものみを対象とした手遊びを行っていたが、保護者とふれあいながら行うことが出来る手遊びは行っていなかった。エンゼルキッズの中で手遊びの様子を計7 回観察し、積極的に参加している子どもの数を集計した結果、3 歳以上の子どもは大半が最初から最後まで参加していたが、3 歳未満の子どもは半数以上が参加していないことがわかった。
3 歳未満の子どもの手遊びの参加率が悪い理由として『見たものを同じように真似をすることができない』『学生がたくさんいるため誰を真似したら良いかわからない』『手遊びよりも玩具に興味を持ってしまう』ということが考えられる。
3 歳以上の子どもたちは積極的に参加している子が多いため、エンゼルキッズだけではなく家庭でも保護者と手遊びを行っていると考えられる。しかし、3 歳未満の子どもたちは興味を示さない子が多いため、家庭において保護者と手遊びを行っていないのではないかと考えた。
3.仮説
保護者と子どもで向かい合い表情を確認しながらふれあうことができる手遊びを保育に取り入れることで、家庭でも実践し親子のふれあいを増やすきっかけ作りになるのではないか。
4.研究方法
(1)研究対象
エンゼルキッズに訪れた親子
(2)研究期間
平成 28 年 7 月 8 日~11 月 25 日
(3)研究内容
保護者と子どもがお互いの表情を確認しながらふれあうことができる手段として、どのような手遊びが良いかを考える。馴染みのあるメロディーであり、スキンシップをとることができるようなアレンジが可能という理由で「あたま・かた・ひざ・ポン」の手遊びを選び、実践する。
(4)手順
1.「あたま・かた・ひざ・ポン」のリズムやメロディーを覚えてもらうために、エンゼルキッズで毎回同じ時間に学生が前に立ち手遊びを行う。
2.3 歳未満の子どもであっても楽しむことができる手遊びとして、親子で向かい合いお互いに表情を見ながらスキンシップがとれるよう実践する。
3.家庭でふれあう手段として「あたま・かた・ひざ・ポン」の手遊びを利用したかどうか、エンゼルキッズを訪れた保護者にアンケートを取る。
5.研究結果
(1)エンゼルキッズでの手遊び中の様子
エンゼルキッズの中で、アレンジをした『あたま・かた・ひざ・ポン』の手遊びを計 7 回行い、積極的に参加している 3 歳未満の子どもの数を集計したところ、最初から最後まで参加していた子どもの数が 25%から 76%まで増えた。また、3 歳以上の子どもたちにおいては参加していなかった20%の子どもたちが、次第に興味を示し途中から参加するという結果になった。
手遊びを行っている時の様子は以下の通りだ。
・親子それぞれがお互いの触る場所を確認しながら自然にスキンシップを取ることができていた。
・親の膝の上に座ることでリラックスしている様子だった。
・1 度やり始めると最後まで手遊びをする子どもが多かった。
・膝の上で子どもを仰向けに寝かせて行っている親子がいた。
・親子共にとても笑顔が多く楽しそうだった。
(2)アンケートの結果(7 名)
フィールドワークとアンケートの結果から、親子で向かい合いふれあうことができる手遊びをすることでエンゼルキッズと家庭の両方で親子のふれあいが増えるという効果が見られた。
考察
3歳児は最も多くの言葉を覚える時期であり覚えた言葉を上手く模倣し、言葉でコミュニケーションを取ることができるようになる。また、自立性が育まれしっかりとした意志を持つようになると、自ら考え行動する積極性がうまれるため、手遊びの歌詞や動きをより理解し達成することで喜びや楽しさが増し、手遊びを積極的に行ったと考える。さらに、膝の上に座らず一人で手遊びをする子どもも膝の上に座り手遊びをする子どもも笑顔で楽しく手遊びを行うことが出来たのは、親子で一緒に手遊びをすることでお互いの表情を確認し情緒的に安定したためだと考える。
エンゼルキッズでの保護者との会話で、「入浴中に手遊びを行うと部屋で行うよりも子どもが喜んでいた」と聞いた。子どもは、保護者から見守ってもらえることやスキンシップを取ることで安心感を得て信頼関係を築く。そのため、家庭で入浴中に素肌でふれあいながら手遊びを行うことで子どもの幸福感や満足感に繫がったのではないかと考える。
6.まとめ
私たちは、エンゼルキッズを通して『手遊びは親子のふれあいを増やすきっかけになるか』をテーマに研究をした結果、保護者と子どもが向かい合い表情を確認しながら手遊びを行うことで、親子共に楽しく満足感を覚えることがアンケートからわかった。また子どもとふれあうことで保護者にとっても楽しいものであり、手遊びはふれあいを増やすきっかけになったと言える。子どもの気分や環境的要因により手遊びに興味を示さないこともあるが、保護者が楽しそうに手遊びを行う姿を見ることで参加するようになることがわかった。
アンケートの中で入浴中、体を洗いながら「あたま・かた・ひざ・ポン」を行うという具体例があった。このように、親子が生活の中で自然と手遊びで遊び、親子でふれあうきっかけが増えるような方法を模索していきたい。
参考文献
厚生労働省 HP http://www.mhlw.go.jp/