障がい児に対する効果的な支援方法とは ~受け入れ向上へ繋げるために~

年度 2015
学科 こども福祉科 (現:保育士科)

はじめに

保育実習,幼稚園実習に参加した際に障がい児を受け入れていない園が多かった。その要因に障がいへの理解が少ないこと、また1人ひとりの保育者の障がいに対する知識が希薄であることが挙げられるのではないかと考えた。
調査研究を通して障がい児に効果的な保育者の関わり,園の取り組みを明らかにし、障がい児のさらなる受け入れの向上へ繋げていきたいと考える。

現状把握

厚生労働省の平成 27 年度子ども・子育て支援推進調査研究事業では、障がい児等の受け入れ実態や受け入れに対して障壁となっている、障がい児保育の要件や障がい児の認定方法など様々な運用がなされている。現状としては、最近障がい児が増加しているともいわれており、受け入れ側である保育所等が障がい児の受け入れを戸惑っている。また障壁となっている点やその支援方法について、研究や実際の事例なども踏まえて明らかにしようという取り組みがなされている。

課題・目的

アンケートによって得た結果を元に以下の2点を明らかにしていく。

・障がい児に対する効果的な関わり(保護者支援、障がい児保育)
・実際に行っている園全体の取り組み

仮説

障がいを持つ1人ひとりの子どもにあった支援や関わりを行うためにも、保育者が障がいに対する理解と知識を持つことが必要であると考えた。
そこで障がい児の受け入れを実施している園へ調査(アンケート)をし、集計結果で最も多かった取り組みを保育を勉強している学生に対し実施することにした。その実施の様子と学生に対するアンケートによって取り組みが効果的であることを立証し、情報を発信することで僅かながらも障がい児の保育所等での受け入れの向上,発展に繋がっていくのではないかと考える。

研究方法

(1)事前アンケート調査
概 要 :幼稚園・保育所へアンケート調査

(2)フィールドワークの実施
日 時 :平成 27 年 11 月4日(水)場 所 :埼玉福祉専門学校
実施対象:保育を学んでいる学生 30 名
実施内容:幼稚園・保育園へ実施したアンケートで最も多かった取り組みを学生に対し実施する。実施後にアンケートで意見・感想を伺う。

研究結果

(1)幼稚園・保育園への事前アンケートの結果
アンケート結果(幼・保 10 件からの回答)

1. 障がい児の受け入れを実施している園(幼1件・保5件)
*障がい児と他の園児に対して、行っている支援方法・関わり方
*園独自の取り組み
 (外部研修,専門職と連携を取る,全職員での話し合い…)
*これから受け入れを実施する園への助言
 (視覚支援を取り入れること、保護者と細かな情報交換、先生 1 人に抱え込ませない…)
*保護者に対するアドバイス・心がけていること
 (成長の様子を日頃から伝え合うこと、将来のイメージ像を持つこと…)

2.障がい児の受け入れを実施していない園(保 1 件・幼3件)
*障がい児の受け入れについて
 ・受け入れる予定がある 0件
 ・ 受 け 入 れ て い た 1 件
 ・受け入れる予定がない 3件

(2)フィールドワークの結果
園への事前アンケート(支援方法・関わり方)で最も多かった回答は園全体での話し合 いであった。しかし、フィールドワークでこの取り組みを実施するのは難しいため、次に回答数の多かった視覚支援(目からの情報で相手に分かりやすく伝えること)を折り紙に置き換え、視覚支援が効果的であるか調査した。

実施方法

1.何も無い状態でやっこさんを折るようお願いする。(相談等はしないよう伝えておく) 2.順不同の折り方を掲示してある模造紙①を見せ、折ってもらう。 3.正しい順番,カラーで掲示してある模造紙②と完成した物を見せ、折ってもらう。  (段階を追うごとに変化があるか観察する) 4.視覚支援(視覚的構造化)の説明をする。 5.アンケートを実施する。

結果

1.何もない状態では5名
2.順不同の見本では1名
3.正しい順番の見本では 23 名 の学生がやっこさんを完成させることが出来た。

結果的に視覚支援の方法を実施し、30 名中29 名が完成させることが出来たことが分かる。

実施後のアンケート

*視覚の構造化を実際に現場に出た際に活用したいと思ったか

意見

・説明がない段階では、折ることが出来なかったが、段階を追うごとに分かりやすくなった。
・視覚での支援の大切さが分かった。
・折り方の手順は、大きい折り紙を貼って立体的にした方が分かりやすいと思う。

考察

今回の調査では、障がい児の受け入れを実施している園で実際に行われている支援・関わりを明らかとすることが出来た。
またその後のフィールドワークでは、段階を追うごとに折り紙を完成出来るようになっていく様子を見ることが出来、実施後のアンケートでは 97%の学生が実際に現場に出た際に視覚の構造化を活用したいと答える結果となった。これにより視覚の構造化が重要であることが分かり、仮設を検証することが出来た。
またフィールドワークではいくつかの課題が残ることとなったが、視覚的構造化の重要性を知って頂くことで、障がいへ興味を持ち、理解を深めていくためのきっかけを与える場を作ることが出来たのではないかと考える。
さらにアンケートでは、折り紙の手順について実際に大きい折り紙を貼り、立体的にするとより分かりやすかったのではないかという意見を頂いた。このことから現状に満足せず、より分かりやすくするためにどうすればよいのか常に追求していくことが必要であると考えた。

まとめ

今回の研究を通して行った取り組みは、結果として効果的であることが証明出来た。
また、障がい児の受け入れを戸惑っている園を減少させていくには、これらの知識を持っている方が保育現場に増えていくことが必要であると改めて感じさせられた。
そして、私達が保育者として現場で働く際にはこの研究を活かし、今回明らかとなった視覚的構造化以外の支援方法や取り組みを広めていきたい。結果的に5年後、10 年後、さらに障がい児の受け入れを増加させることが出来るよう僅かながらも尽力し、周囲に働きかけていきたい。

参考文献 厚生労働省 平成27年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業

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