トップ > 学校紹介 > 教育システムの紹介 > 講師紹介 > 社会福祉士科 宮本先生


とにかく彼の話しを聞かなくてはと自宅を訪問しました。髪と髭は伸び、爪は数センチに巻いて伸び、まるで仙人がホームレスになった様な出で立ちに、しばし 呆然としました。「この爪では買い物ひとつ不便でないでしょうか、切って差し上げましょうか?」の言葉にうなずき、彼の爪を切りながら「私にできることな ら、やらせて頂きたいのですが?」と言葉をかけ、彼の顔を見上げると、そこには、安心したかの表情と凛とした瞳から、彼ならもう一度、自分を蘇らせること ができると感じさせてくれました。それから、彼の生い立ちと人生をじっくり聴かせてもらうことができました。離別した妻や子供達のこと、なくなった母親の こと、一流の技術者でありながら、会社が倒産し、失業したことなど。

彼自身のどうにかしたいという気持ちに添うようにと考え、周囲の人々とコミュニケーションがとれるには、ごく普通の出で立ちが必要とAさんに提案。了解を 得て、何年ぶりの入浴、髭剃り、そして健康状態のチェックのための検査入院。彼の背中を流しながら「何年ぶりのこの垢が落ち、すっきりしたら、どうしたい ですか」と尋ねると、しばしの沈黙の後、「今までに、迷惑をかけ、お世話になった人達に感謝の気持ちを込めて御礼がしたいです。」と語った。この言葉通 り、この後、借家の家主への謝罪、行政への手続きと関係者への御礼と、1ヶ月あまりで、今までの数年に渡る人生の空白を埋めるように、そして自然に振る舞 うまでになりました。スーツをきちんと着こなす初老の紳士に、かつての彼の姿を重ねる人はいません。
Aさんはその後、有料の老人ホームへ入所し、商品管理のアルバイトと年金で生活し、会うことのない息子へと僅かな給料から、毎月貯金を始めました。そんなAさんの姿勢に、深い感動を覚えたことが、今でも昨日のことのように思い出されます。