安心ノート ~車イス利用者による駅利用を改善するために~

年度 2016
学科 社会福祉士科

1.はじめに

私たちは一年生のときに脊髄損傷のKさんの授業で車イスでの生活状況について学んだ。また、実際に大宮駅周辺を車イスで移動する体験をした際「段差で車イスから落ちた」「目線が人よりも低く、恐怖を感じた」など、普段利用する大宮駅が初めて来た駅のように感じ戸惑った。
それらの体験を各グループがKさんに報告したところ、「車イスでの外出中は不便なことが多々あるが、快適に過ごしたい」と話してくれた。その言葉が印象に残り、車イスの人たちが普段どのように外出しているのか、また車イスの人たちが安全かつ快適に外出をするために私たちにできることはないかと疑問に思い、研究テーマとした。

2.現状把握

私たちは、車イス利用者が実際に外出について不便と感じているのか現状を知るために、車イス利用者に話を聞くことにした。
期間:2016年1月-11月
協力団体:障害者ヘルパーステーション職員1名・NPO 法人2名・地域包括支援センター3名。
4団体6名
まず私たちは、「車イスでの外出時、不便と感じるときはあるか」と問いかけたところ全ての人が「ある」と回答した。
次に「どんなときに不便と感じるのか」と聞いたところいくつかの回答を頂いた。その回答が以下の内容である

●少しの段差でも電動車イスじゃないと通れないことがある
●車イスは人とぶつかると怪我をさせてしまうので、常に周りを気にする
●道が狭く通れないところがあり遠回りをして仕事に行った
●外出中に車にぶつかりそうになった
●遊びに行く際、駅のトイレが分からず遠回りして時間がかかってしまった
●駅にはエレベーターが沢山あるのは知っているが、場所がよくわからない

駅を利用する頻度が高い理由として外出するときの移動手段や待ち合わせで利用するなどがあり、駅利用について詳しい話を聞くと「エレベーターやトイレの場所が既存のマップではわかりづらい」
「混雑時は、場所を聞くのが申し訳なく出来ない」「人に聞かず自分で行動したいが地図が分からない」など多数の駅利用について意見を頂いた。

3.問題提起

車イス利用者が駅を利用する際に、不便だと感じる点が快適に外出をすることへの妨げになっているひとつの要因ではないかと考えた。

4.研究方法

私たちは実際に学校から車イスを借り、協力頂いた方々が共通で利用する「大宮駅」に焦点を当て、駅内のエレベーターやトイレを利用し駅に関するマップや細かな情報を入れたノートを作成した。そのノートを車イス利用者に外出時使用していただく。その後、車イス利用者に駅を利用した際の外出に対する意識の変化はあったか、不便な点は解消されたかといったことやノートの必要性に関する評価などを頂く。

5.研究結果

ノートを作成する過程でJR・区役所に協力を依頼した。駅の構内図に関してはJR、ノートの内容全体に関しては区役所にアドバイスをいただきながらノートを改良していった。

JRからのアドバイス
●エレベーターや多目的トイレの位置を正確にした方がいい。
●通路を分かりやすく表示するのがよい。
●写真を沢山使うことで実際の場所がわかりやすくなる。
●案内表示を各ページ統一して記載した方がいい。

区役所からのアドバイス
●複数の学生でひとつのノートを作成すると文章や地図に統一性がなくなる。
●大宮駅外から利用する方のために西口・東口を明確に記載してほしい。
●地図の目印となる商業施設の場所を皆が知っているわけではない。 等

頂いたアドバイスや、車イス利用者から聞いた意見を取り入れ、計3回改良しノートを完成させた。その後、完成したノートを協力頂いた6名に見てもらい評価を頂いた。

上記の通り、良い点と改善点の評価をもらい、その内容を踏まえた4度目のノートを作成し実際に協力して頂いた1名に使ってもらうこととした。
その結果、「ノートの案内を見ながら楽しく外出ができた。」「地図が分かりやすく便利」「持ち運びがしやすく、気軽にノートを開いて見ることができる」という評価を頂いた。また、「ノートを利用し学生と楽しく外出ができた。今後は積極的に駅を利用し外出をしていきたい。」という言葉を頂き、ノートを利用し外出したことで車イス利用者に小さな意識の変化があったことがわかった。

6.考察

今回の研究でノートを作成し、車イス利用者が外出時不便だと感じることの中に、駅利用に関する点は多々含まれているということがわかった。実際にノートを車イス利用者に見ていただいた・または利用していただいたことで少なからず外出に対する不安が解消されたと考えられる。外出中不便だと感じる全要因の中のひとつである、外出時の駅利用で不便だと感じる点などノートを利用し解消していくことで、車イスの外出に対する意識の変化が見られるようになり、今まで以上に安全かつ快適に過ごせるようになったのではないかと考えられる。

7.まとめ

この研究を始めるきっかけとなったKさんの「車イスでの外出中は不便なことが多々あるが、快適に過ごしたい」という言葉は、話を聞いた車イス利用者6名全員の共通の思いであることはもちろん、純粋に「安全で快適に外出したい」という気持ちは、車イスを利用していない私たちにとっても同じことが言える。
この「安心ノート」は、これからも車イス利用者にとって外出は楽しいと思ってもらえるひとつの切り口になってくれたらと私たちは考える。

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