保育者の目指す姿と保護者の求める保育者の姿

年度 2015
学科 こども福祉科 (現:保育士科)

1.はじめに

保育士、幼稚園教諭は専門的知識を身につけ現場に出ています。しかし、幼稚園、保育園では絶えず保育者と保護者間でのトラブルが起きています。それらのトラブルには様々な理由がある事がわかりました。
そこで、保育者と保護者がそれぞれどのような考えがあるのかと思い、研究を進めることにした。

2.現状把握

保護者からの要望は、どの幼稚園や保育園でもある。しかし、保育者の考え方や要望に対しての対応は保育者により様々です。その要望はどのようなものがあるか、また対応はどのようにしたか、園や保育士、幼稚園教諭同士情報交換が行われてないために、似たような要望がどの園にも起きてしまっている

3.仮説

「保育者が目指す姿」と「保護者の求めている保育者の姿」にはズレがあるのではないか

4.研究方法

・アンケート(保育者、保護者)
 -保育者 保護者からの要望はどのような内容で、どのように対応を行ったか。
  1.性別・年齢・役職・何年目 ※個人情報の為、氏名は無記入
  2.過去に保護者から保育者の態度・行動について意見があるかないか
  3.あると答えた方は具体的な内容と対応について
  4.ないと答えた方は今後その様な場面に遭遇したときの対応策について
  5.保護者との関わりの中で普段気をつけていること
  6.個人の保育方針について
 -保護者 保育者の良かったと思う対応、行動、改善してほしい点
  1.お子様の人数・通っている園の種別・お子様の年齢と性別
   ※個人情報の為、氏名は無記入
  2.保育者の態度・行動・対応について良かったと思う点(具体的に)
  3.保育者の態度・行動・対応について改善した方が良い点(具体的に)
  4.改善した方が良かったと思う点でどのようにしてほしかったのか

5.研究結果

保護者へのアンケートを 31 名にお願いしました。
主な結果
<保育者の態度・行動・対応について改善して欲しいところ>
・発達の段階に応じた対応やしつけ(挨拶など)をして欲しい。
・子ども一人ひとりに寄り添いきちんと話を聞いて欲しい。
・保育者に笑顔が見られない。
・子どもが感情的になることに対し言葉遣いや伝え方・否定的な意見をする(言葉の暴力や感情的に怒る)
・怪我や喧嘩などの報告をして欲しい(連絡不足)
・接し方に差がある(男女の扱いの差など)
・保護者の見えるところで他の職員に注意をしないで欲しい(見たくない)
・不審者だと思われた(保護者の顔を覚えて欲しい、外見だけで判断しないで欲しい)

<良いところ>
・内気な子どもほど暖かく見守り褒めて伸ばす。
・人格形成の大切さを知った上でその子に合った対応をする誠実な態度。
・どんなときでも視野を広く持ち社会性を学ばせ安心できる環境作りなど愛情を感じる。
・子どもの目線で話し抱きしめてくれたりスキンシップなど、目に見える愛情表現。
・連絡帳に子どもの様子やアドバイス・悩み相談など保護者と共有し信頼関係を築く取り組み。

<過去に保護者から聞いた意見とその対応>
・挨拶をしてくれない先生がいる
 →謝罪し受け止める。職員会議で話し合う。笑顔で挨拶するように心がけた。
・子どもが怪我をした場合の対応が不十分、子どもの様子を把握していない
 →謝罪。保育者相互で共通理解を図る。
・オムツのテープがきつい
 →保育者相互で共通理解をはかる。
・保育者同士と、保護者の前だと態度が違う
 →自分では判断せず夕令などで話し、意見を出し指導をする。
・子どもをモノ扱いした言葉遣い
 →受け止めて謝罪し今後気をつけると直接話した。
・プライベートでの行動を指摘された、身なりが派手(茶髪)
 →華美な服装や髪色など自分の行動を改める。
・子どもが担任に叩かれた、マッサージをしていたのに耳を引っ張ったと言われた
 →叩いたのではないことを園長と共に保護者に説明する。
 →話し合いを持ち、実際の様子を伝えた。
・傷をつけた子を教えてもらえない、話をしても伝わらない先生がいる
 →園でおきたことは園の責任であるからと話した。
 →他のクラスの先生が話を聞き担任に伝え信頼回復に努めた。
・スカート禁止の保育園でキュロットを履いて行ったら注意された
 →保育者の意図を説明し母親の約束を守っているという気持ちも汲んで対応を決めた。
・「暗い色のジャージを履いている事が多い。もっとカラフルにしたらどうか?」
 →ジャージは落ち着いた色が多く売られている事と、「カラフルなジャージもステキですね!」と伝えた。

6.考察

私たちは、今回の研究で「保育者が目指す姿」と「保護者の求めている保育者の姿」にはズレがあるのではないか、という仮説をもとにアンケートを実施した。その中で、保育を行いつつ状況に応じて保護者への説明を交えて対応するのが大切。そしてよりよい保育を目指している。
保護者が求めていることは、格好・姿勢・接し方等と言った表面的な指摘が多くある。保育 者は、保育方針・理念・ねらい等を意識しているが保護者は、あまりそのことを重視していない人もいる。保護者が求めている表面的なことに関しては、いつも笑顔で子どもの目線で話し気持ちを受け止めて、スキンシップなど目に見える愛情表現をしてくれる保育者であること。また、日々の子どもの成長・行動に関しての連絡なども“見てくれている”という安心感があり重視される。
一方、保育者は、保育方針や理念・ねらいを大切にして、子どもの表面的な成長とともに内面の成長も見据えて保育を行っている。そのねらいが保護者に伝わない機会が多くなってしまっているため、気持ちが行き違ってしまう。その結果、「保育者が目指す姿」と「保護者の求めている保育者の姿」にはズレが生じるのではないかと言える。

7.まとめ

保護者の意見・要望には、解決するのに時間がかかることと、その場で解決できることがある。解決するために、保育者としては、保護者の意見に耳を傾けてはいるが、保育方針や理念・ねら いと照らし合わせて譲歩できない部分もある。また、保護者の保育者に対する指摘は表面的なものが多いため保育者は意識すれば改善できる部分も多い。
譲歩出来ない部分に対しては、保護者は保育者の表面的な様子が気になるため、保育者の意図が見えてこないと思われる。これは、保育者の説明が不足しており、保護者は理解が不十分となり保育者の真の狙いが伝わっていないと考えられる。これらを改善するためには、意見を交換するなどが必要である。
これらのことから私たちは、誰から見ても保育者として相応しい行動・身なりをする等の意識を高め、保護者との意見を交換することを通して信頼関係を築き、問題の軽減に努力をしていきたい。

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