知的障害のある子どもとその家族が公園を利用しやすくするための保育者の役割とは

年度 2016
学科 こども福祉科 (現:保育士科)

1.はじめに

公園は、体力を付けたり友だちとも過ごせ、他の家族との関わりも作れる交流の場であり、日常的に必要な空間である。しかし、障害のある子どもが公園で遊ぶ姿を見ることは少ない。私たちは障害のある子どもやその家族にとっても、公園は日常的に使うことのできる場なのではないかと考えた。そこで、公園の必要性を深く知るため研究をしたいと考えた。

2. 現状把握

実際に障害のある子どもは公園に行くことが少ないのかを知るために調査を行った。
学内の子育て支援活動に参加する障害のない子どもの保護者 10 人に、どのくらいの頻度で公園に行くのかアンケートを行ったところ、週に1回以上という回答が 70%と多かった。
次に障害児施設に通う障害のある子どもの保護者19人に同様のアンケートを行ったところ、週に1回以上の子どもは 42%と、障害のない子どもに比べて公園に行く回数が少ないことがわかった。
以下が障害のある子どもの保護者の公園に行かない理由として挙げられたものである。「多動で追いつけないから」「多動の子どもを追いかけることが疲れるから」「母親が体力的に大変だから(父親が休みのみ連れて行く)」「障害のない子どもに変な目で見られて嫌だから(人が少ないときは行く)」「 連れて行く 気力がないから」「気持ちの切り替えが難しく連れ帰ることが大変だから」「病気で汗がかけず体温調節が難しいから」「他の子どもを嫌がるから」「公園の遊具に興味を示さないから」「他の子どもに怪我をさせるから」「大声を出すから」「慣れない場所を楽しめないから」「他の障害のない子どもとトラブルを起こすから」「公園に行きたがらないから」
このアンケートの結果から、障害のある子どもの保護者の体力や気力が問題となっていることがわかった。

3. 仮説

保護者の気力や体力の問題を軽減した状態で親子で公園に行くことで、保護者と子どもが公園に行くことの意味に気がついてもらえるのではないか。

4.研究方法

(1)研究対象
放課後児童デイサービスに通う障害のある子ども3名と各子どもの保護者(母親)3名
・Aちゃん(小学校6年生の女子)
・Bちゃん(小学校3年生の女子)
・C君(小学校1年生の男子)
(2)研究期間
平成28年10月15日(土) (3)研究内容
放課後児童デイサービスの近くの公園にその施設に通う子どもとその保護者と行き、体力を使わない遊び(シャボン玉・的当て)をする。そして、その時の様子を観察するとともに、保護者に話を聞き取る。
(4)手順
1.保護者に公園の利用についてのアンケート(利用頻度等)を取る。
2.保護者と子どもと一緒に公園に行き、シャボン玉・的当てを中心とした遊びをする。
3.保護者に本日の感想のアンケート(公園に行きたい気持ちが増したか等)を取る。

5.研究結果

(1)フィールドワーク後のアンケート結果
・Aちゃん(小学校6年生の女子)の場合
今日の感想→とても楽しかった
・Bちゃん(小学校3年生の女子)の場合
今日の感想→家族だけで行った時とは違う子どもの姿を見られて、話も聞けて、いろいろ子どもなりに適応していることもわか ってよかった。やっぱり外で季節の空気を吸いながら動き回るシンプルな遊びは楽しいと思い出した。
・C君(小学校1年生の男子)の場合
いつもと違う形のシャボン玉が体験できたのは楽しかった。的当ても家の中での遊びに利用できそうなのでやってみたいと思う。
(2)フィールドワーク中の様子
・保護者は施設の職員や学生、他の保護者と、自分の子どものこと(障害のこと等)などを積極的に話していた。
・職員が保護者に普段の子どもの様子を伝えていた。
・子ども同士で関わり合って遊んでいた。
・年長者であるAちゃんが、他の子どもの面倒を見ていた。
・「子どもの話をできる場所が少ないので、他の保護者や職員、学生と話ができてよかった」という意見があった。
・「過去に公園でトラブルがあったが、子どもが成長したのでまた行くようになった」という話を聞けた。

6.考察

事前アンケートとフィールドワークの結果から、地域の公園は子どもにとって体力や社会性の向上ができ、保護者にとっては他の保護者と繋がりを持つことができる場であると言える。
フィールドワーク中には「普段は見られない子ども同士の関わりを見られることが良かった」という意見や、「自然の中で遊んでリフレッシュできた」という意見もあった。
また、「子どもの成長により公園を利用するようになった」という意見から、実際に保護者も公園の必要性を感じていると言える。
これらのことから知的障害のある子どもやその保護者にとっても公園の必要性はあると言える結果だった。

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